双想歌
14.正反対の双方通行
「チビが割り込んでくるなんて、全然、考えてなかったんだ。あの一瞬を突いて、飛び出してくるなんて、全然考えてなかった。
チビが飛び出して来なくても、全くの余裕で避けれたはずだったのに・・・」
簡単に立てた墓の前で、そう呟くように言うのはサン。
その後ろ姿は、すごく憔悴しきってましてね。
ついつい引っ掻き回したくなったんです。
「ワタシも予想していませんでしたよ。元々そんな永く動くことも想定していませんでしたし。
せいぜい持って二ヵ月という・・・」
「喜助。そういうことは言うな。」
「どうしてですか。
アレを作ったのはワタシですよ。なら、アレの活動期間くらい把握してます。
実際、アレは長く動いた方だと、ワタシも驚いて・・・」
『いるんですから』の言葉は、言う事ができませんでした。
「黙れッ!」
いきなり振り返った彼に、グイッと胸倉を掴まれましたから。
でも、ワタシは言葉を止めることはなかったんです。
「あなたが責任を感じる必要はありませんよ、サン。
あなたは、アレを長く動かしてくれた。
わずかな感情しか与えなかったアレに、最後は『命を投げ出す』という選択までさせたんですからね。
大したモノですよ。あなたは」
「お前は・・・自分(テメェ)の作った奴に対して、冷たい言い方しかできねぇのか・・・ッ!」
ギリッと、服をつかむ手に力が入る。
それ以上に、本気で怒っているサンの表情に心がざわざわするのが止まらない。
「ワタシはあなたじゃないデスからね。
『モノ』に一々感情移入はできません」
一瞬、スキが生まれた。
本気で怒っている彼が、それを爆発させる前の、その一瞬のスキ。
「・・・っん!?」
頭の後ろに腕をやって、逃がさないようにしっかりと体を固定させる。
その間、顔を放そうとはするものの本気で逃げようとはしていないことはサン、動きで丸分かりですヨン。
「アナタが悔しがってるのは、アレが飛び込んできたことよりも、アレを死なせたことの方を後悔してるんデショ?」
その言葉で、彼の顔が変わる。
あぁ、そんな辛そうなカオ、しないで下さいよ。
図星だって、わかっちゃうじゃないですか。
でも、ここでダダを言うほどアナタは子供じゃないから。
「そうだよ。
俺は、アイツが死んだことより、アイツを死なせた自分に腹が立ってんだ」
「サン。
あなたは優しい」
その言葉に、頭を振って否定を示す。
「違う」
「何が違うんですか」
「俺は・・・全然、そんなんじゃない」
アララ。否定されてしまいましたねぇ・・・
さて、どうしまショ。
「何が違うんですか?
ワタシに比べたら、『モノ』に悲しめる分随分優しいと思いますけどね」
「そうじゃない」
「じゃ、何なのですか?」
「アイツに対して申し訳無いって思うより、アイツを殺した俺に対する怒りの方が強いから・・・
だから・・・全然優しくなんかねぇっていうこと・・・って、何笑ってやがるお前!」
サンの言葉の途中で、もう、オモシロくって思わず吹き出してしまいました。
ホント、気付いてないんですねぇ・・・
「ワタシなんかに比べたら、アナタは十分優しいですよ。
ワタシはそんな感情すら湧きませんから。
『モノが壊れた』
事実はソレだけです。
そんな『モノ』に、例え自分に対しての怒りとは言え、感情が湧く。
そんな感情すら湧かないワタシに比べたら、アナタは十分優しいですよサン」
そう言って、ニッコリ笑う。
「サン、顔、引きつってますよ?」
そう言うと、更に彼の顔が引きつっていく。
しばらくそうやって奇妙な沈黙が降りたあと
「・・・お前・・・結構冷血だろう・・・」
と、心底疲れた様子でサンが言うものですからね。
「アラ、今ごろ気付いたんですか?」
と、ニッコリと笑って返しました。
すると少し俯いて
「腕・・・どけろ。疲れた」
なんて言うものですから
「疲れたんですか?サン。
だめですよ?ちゃんと寝ないと」
そう言って、体をかがめると彼の膝の後ろに腕を伸ばして
「ちょ・・・おま・・・ッ!?
何すんだ!放せ喜助!!」
嫌がる彼を無理矢理お姫様抱っこ、なんてしちゃいましてねぇ・・・
もう、サン顔真っ赤で、そりゃもう・・・
やっぱり、ワタシの感情が動くのは、あなただけですよ。サン。
なので、今までの分、これからたっぷり・・・ね?