Sky Lord
08.Other Side
夢を見た、気がする。あいつ等の声が聞こえたような……いや、詳細は分からない。
『隊長! あん……に、……な子……時代、俺達からの……り物』
『っすよ! 隊長!』
『アレックス、マイク! お前らか!!!』
子供の姿になった原因が、こいつ等だったとは!
ふざけんな!!!
そう思って殴りかかろうとするが、その影は遠くなっていく。
『俺達で……んですから……受け……ください』
『何を言ってる?!』
『……っすよ! 隊長!』
遠ざかる声に、思いっきり叫んだ。
『おい! ちょっと待て!! 戻していけよ!! お前ら!!』
「!?」
「起きた? 」
「あ……おはよう、侑士」
今日は、日曜日だ。
子供の姿になって二日目の朝だ。
ひとまず、子供になった原因はなんとなく夢の中に答えがあった気がして、とりあえずシャワーを浴びようとベッドを降りる。
ついて来ようとする忍足と手塚を見上げて、さっき見た夢のことを伝えてみた。
「夢の中で、AIRLESSとMERCILESSの前任者たちに会った」
「前任者?」
「俺に名前を預けたヤツと、俺が殺したヤツだよ」
「彼らが夢で出てきたんですか?」
「あぁ。そいつらが俺をこうしたらしい」
「それって……」
「知らん。とりあえず、シャワー浴びてくる」
子供の姿になってから、は不機嫌が治らない。
言葉遣いが昔に戻り、性格が少し荒くなったまま戻らない。
だが、感覚を研ぎ澄ますと完全に『子供』になっているわけではないようだった。
要は『AIRLESS』の空気がない、を逆手に取った光の屈折でそう『見せている』だけ。
――年齢的な変化まで見せる光の屈折ってどうやってんだ?
とは思うが、忍足の名前の力はまだまだ謎なところが多い。
――しかし、まさかこんなことになるとは……
シャワーを浴びながら、頭で考えても仕方ないと、は考えることを少しやめた。
――日本から出るのは、俺一人でいい
そう決意して、は浴室を出た。
Tシャツとジャージに着替えて自分の部屋に戻り、二人に告げる。
「上がったよ」
「では、入ってきます」
そう言って先に浴室に向かうのは手塚だ。
「せやけど、可愛えぇなぁ」
手塚がドアの向こうに消えた後、忍足がタオルでの髪の毛を乾かしながら感慨深げにしみじみ告げる。
「侑士……俺はおもちゃじゃない」
「分かってる。せやけど、かわいいなぁって思って」
「……」
ここで否定するのは本当に子供っぽく感じられては押し黙る。
「今日はちゃんと帰れよ?」
「分かってるて」
「ならいい」
大人しくドライヤーで乾かされていると、
「上がりました」
と手塚がドアを開けた。
「ほな、交代」
そう告げて、今度は忍足がドライヤーを手塚に渡して浴室に足を向けた。
その後ろ姿を見送って、お腹が空いたが
「飯、作るか」
髪がある程度乾き、手塚の許可が下りるとそう告げて部屋を出ようとした。
その後ろから、手塚が声をかける。
「」
「何?」
「朝ごはんは、何がいいですか?」
「作るのか?」
「はい」
「じゃ、任せる。冷蔵庫のもの使っていいから」
「分かりました」
そう告げる手塚を見送って、はそのままベッドに沈む……ふりをした。
一人になったところでパソコンの電源をつけ、そのままメールを打つ。
『張大哥へ
今日向かいます』
そういった内容のことを英語で送り、送信履歴を消した後に電源を落としベッドに寝転がった。
「出来ましたよ」
呼びに来た手塚に応じてリビングに抜けると、すでに綺麗な洋食が並んでいた。
「美味しそう」
そう言って、席に着く。
すでに席についていた忍足をチラリと見て、
「いただきます」
と言って、朝食を食べた。
「では帰ります」
「あぁ。また明日な」
「、ありがとうな」
「どういたしまして」
昼の一時ころ、二人が帰って行く。
そこから後が大変だった。
ひとまず当分の服……などは現地調達だから良しとして。
住むところも……まぁこれも現地調達だと判断する。
とりあえず行ければいいので、急遽用意したパスポートと簡単な荷物でいいだろうと判断する。
そもそも正規での出国ではないのだからと思い、適当に部屋を片付ける。
そしては、静かに家を出た。
家を出たが選んだ手段は、通常のものではなかった。
そのまま空港とは別の方へと足を向けるの後ろを、忍足侑士と手塚国光の二人が追っていく。
「どこ行く気や」
「わからん。だが、空港とは別方向だ」
そして気づいたのは忍足だった。
「もしかしてのヤツ、軍の飛行機使う気ちゃうか?」
「まさか」
だがそれは正解だった。
厳重に警備された門の向こうへと消えていったからだ。
「行ってもうたな」
「あぁ」
途中まで後を追っていたが、入れない門の向こうに行ってしまったを追えずに、二人は諦めるしかなかった。