Sky Lord
02.They won't give in
帰ってきたは、玄関にあった靴の数で来客を知った。リビングに入って、そこに座る二人の少年たち、忍足と手塚を見て、小さくため息を吐いた。
「、お邪魔してる。せやけど、話しは終わったで」
帰ってきたに向かって忍足が話しかける。
「そうか。二人の結論は?」
いつかの時、忍足が手塚と話をするという話をしていたっけな、とは思い出す。
「お互い譲る気は無い。って事や」
「そうだな」
「……そうか」
少し疲れた様子で返事するに、忍足が告げる。
「ってことで。春から一緒に暮らそーや」
「って事でじゃない。お前はまず親の許可を取れ」
「説得する」
「そうしてくれ」
ひとまずは肩にかけているバッグを床に置いて、リビングに座る手塚と忍足の二人に尋ねることにした。
「二人はこの後どうするの? 帰るの?」
できることなら帰ってほしかっただが、その願いは空しく散る。
「帰らん」
「泊っていきます」
「だろうなぁ……」
勉強は?
という無粋なことは聞かないことにする。
オフのときまで『先生』面はしたくない。
だから現実的なことをは聞いた。
「飯は?」
「あー。一応買ってきてある。足らんと思うけど」
自分が買ってきたコンビニ弁当を見せて、忍足が答える。
「冷凍に肉入ってるから、すき焼きでも食うか?」
時計は20時を回っているから、そろそろ高校生二人のお腹も限界に近いだろろうなと見当をつける。
「いただきます」
「んじゃ、台所借りるで」
言うが早いか、忍足がイスからさっさと立ち上がるとそのまま台所に足を向けて、冷蔵庫から野菜と肉を取り出して準備し始める。
「あ、作るから国は座ってて。あとで片付けしてくれたらいいから」
立ち上がりかけた手塚に告げて、は忍足が取り出した野菜をまな板の上で切っていく。
そんな二人の様子を、手塚はジッと見つめていた。
「ごちそうさまでした」
そう言って箸を置いた手塚が、自分と二人の食器の片付けを始める。
食器を洗っている手塚の後ろ姿を、がイスに座りながら黙って見ている。
そんなを、忍足が見ていた。
「お互い譲る気はない、か」
小さく呟いたのはだが、二人の耳には届いていた。
それを理解している彼が、そのまま言葉を続ける。
「この際だから言っておくけど、俺はお前らの人生を妨げるつもりはないからな」
基本的に、この国で過ごす毎日は受け身だとは思う。
「それって……」
「夢を、未来を諦めてほしくないってことだ」
「それは、あなたを諦めろってことと同義ではないでしょう」
片付けが終わった手塚がテーブルに歩を進めながら反論する。
「同義じゃないよ。でも、手塚はプロを目指すんだろう?」
「はい」
「だったら、俺なんかに構ってる暇はないよね」
「わかっています」
の正面の椅子に座って、手塚が答える。
「侑士は医者になるんだろう?」
「せやなぁ」
「だったら、尚更だ」
「せやけど、人生は一回やからな」
の言葉に忍足は反論する。
「せやな。君たちの人生だから、好きにしていいとも思う」
「?」
「俺が黄昏を歩く人間だからさ。だから、お前らがすごく、眩しいんだ」
沈黙が下りる。
冷徹に、冷酷に、冷静に、なんの感慨も湧かせることなく人を殺してきたにとって、未来に、夢に向かって生きようとしている二人は、いや、生徒たちは眩しく映ってしまう。
それは、自分には許されないことだから。
契約の関係で、自分に自由は存在しない。
この国で持てないものを三つ持った関係上、できないことの方が多いのだ。
権利と義務、と言ってしまえばそれまでだが、それでも、不自由さは拭えない。
「せやけど俺、医者よりもっと知りたいこと出来たんやで」
「侑士?」
それが一体何なのか、が知る前に忍足が話を変えてしまう。
しかも、とんでもない方向に。
「なぁ」
「なに」
「抱いてえぇか?」
「……言っていい冗談と、悪い冗談があると思うぞ。侑士」
が2・3秒思いっきり固まって言葉が出なかったくらいには衝撃の言葉だった。
「冗談やなく。を抱きたい」
「今日じゃないだろ?」
まさかこの後じゃないだろ、そう期待を込めてが反論にならない言葉を告げるが、忍足に肯定されてしまう。
「今日やで」
「本気?」
「本気やで? なぁ手塚」
「あぁ」
「……マジ?」
「マジです」
――手塚のマジは、ほんとの本気……だよなぁ
の背中に、冷たい汗が流れ出た。