親父ったらマジすぎ。あ、だアレックスだ。
そう思ったら、席からすでに駆け出していた。
父の部下である彼は、よく遊び相手になってくれていた。
『少尉、やりすぎですよ。大体まだ五歳の子供じゃないですか。いくらシュミレーションでも』
シュミレーターのドアにもたれかけ、困った様子で寄ってきた子供の相手をしながら青年が上官に苦言を言う。
『俺はなぁスミス。こいつをパイロットにしたいんだよ。それにこいつにはあの能力がある。やっぱ、俺の子供だな』
そう言って男は座席から顔だけを部下であるアレックス・スミスに向けて言う。
だからと言って、俺の行き先を今から決めるな!
と、心の中だけで反抗しながら、遊びたい盛りの少年はアレックスという名の青年を見上げて
『アレックス、俺パイロットに本当になるの?』
と聞き、彼は笑って何かを答えた……ところで、これは夢だとその意識は確信する。
と同時に、耳元で何かうるさいものが鳴り響いた。
Sky Lord
01.First Cross
朝の時計が鳴り響いたのを確認して、手塚がその部屋へと入っていく。「」
眠っている彼の肩に手を置いて手塚が起こす。
「ん?」
と彼がその目蓋を開けると,光に反射した色が映っていた。
コンタクトを入れていない彼の瞳は,薄すぎる緑の色をしている。
よってが反射した物体の光を、物の見事に写しこんでしまう。
今の色は、布団のグレーのカバーの色を反射している。
七色に、いや、それ以上に変わる全色の瞳。
その瞳の色が変わるたびに思う。
彼は、綺麗だと
「昨日はどこに行っていたんですか?」
「朝一からそんな目で見るなよ国。なんか俺、悪いことしてるみたいじゃないか」
と少し顔をゆがめて、バフッと布団の音を鳴らせてが体ごと布団に顔を押し付ける。
そしてサイドテーブルにあった時計を見て「そろそろ起きるか」と言って、ゆっくりと体を起こした。
起きて部屋から出てきたが、椅子に座りながら「相変わらず料理上手いね」と言った。
そのついでとばかりに
「そうそう。今日転校生入るんだ。中間考査が終わったこの微妙な時期に、強引に転入手続きが終わってた生徒なんだけどね。ちょっと不思議だろ? 私学から私学って。前の学校は,七声学園っていうところなんだってさ」
そう告げるの声には何ら感情も込めれられていない。
恐らく興味がないのだろう。
「じゃ。手塚。また学校で」
そう言ってオレを送り出した後にが出る。
これは、関係がこうなってからずっと続いてることだ。
というよりも「やっぱり、ばれるとまずいからさ」というの言葉に手塚が折れ、以来手塚が先に出た後にが出るというのが習慣になってしまった。
エレベーターを降り、そのまま学校へ。青学の高等部へと足を向ける。
それにしてもこの時期に転校生とは。本当に珍しいな。
などと考えながら、いつもの部室のドアを開けた。
「おはよう手塚。今日も早いねぇ」
次にそう言って入ってきたのは不二だった。
不二は手塚の前に来て
「今日もあの人は綺麗だったかい?」
そう言って笑う。
不二は、手塚がの家に、たまに行くことを知っている。
「不二」
こういう話は、やはり苦手だ。
できることならやりたくないと手塚は思う。
「別にからかってる訳じゃないよ。いつものことだろう?」
嫌味ではないがそう聞こえる言い方をして、着替えたあとにグラウンドへと出て行った。
「えっと、君が君?」
その言葉に、椅子に座っているの前に立っている男子生徒が頷いた。
第一印象は、暗い。
不安げにゆれる視線、人に視線を合わせようとせず、ずっと俯いている。
前の学校から届いた資料によると、至って普通の高校生のように書かれていたけれど、なんだかそれも怪しいとは思う。
どちらかというと、内向的な印象を持つ。
――というより、高校三年生で耳ついてるってちょっと珍しいような気も……まぁ、そういうのは人それぞれだから干渉はしないし。ま、いいけけど。
と思いながらは書類を読んでいく。
「今日から俺のクラスね。えっと、委員長は手塚だから。後で色々頼むときに顔とか合わせるから、その時に顔を覚えてね。後は……」
と、必要事項を言った直後にチャイムが鳴る。
「とりあえず、教室行くか」
と言って職員室のドアを開けた。
ガラッ
とドアを開けると、教室に立っていた数名の生徒が急いで席に戻っていくのをの目は素早く捉える。
「今日は、昨日話した転校生を紹介する。おーい。入って来なさい」
と言ってドアに視線を向けるが、いつまで経っても入ってこようとしない。
いくらなんでも転校初日で人見知りはちょっと。なんだ? 緊張してるのかな? それとも慣れていないのか?
皆の視線が彼、に自然と集まる。
それでますます気まずくなる。
う~ん。どうしたものか。
「いいから。入ってきなさい」
うつむくの、の手を取って教室に入れてやる。
その途端、彼の体が微かに震えたような気がしたけれどは気にしなかった。
「とりあえず自己紹介しようか」
というと消え入りそうな声で
「です。よろしくお願いします」
と言ってまた俯いた。
微かに感じた手塚からの視線に目だけで頷くと
「じゃ。手塚の横。丁度空いてるから彼の隣に座って」
と言って
「あそこ」
と指で指す。
「は、い」
と、これまた消え入りそうな声での返事。
後は生徒同士で仲良くなってくれるといいんだがなぁ。
「じゃみんな。仲良くやれよ」
というよりも、あぁいう子って俺受け持つの初めてだな。そういえば。
いつもいつも元気者ばかりで、ワイワイやりながらの授業や高校生活だったから。
ここは教師経験が豊富な竜崎先生にでも相談するか。
「SHR終わり」
そう言って今日最初の授業の準備をするため、は職員室へと足を向けた。
といっても二限目からだから一限は時間があいている。
そうするとの足は自然屋上へと向いていた。
「今年は、やっぱ行かなきゃダメだろうなぁ。いくらなんでも」
と一人、誰も居ないのを確認して呟いている。
――まぁ、それが向うの制度なんだし、仕方ないと言えばそうだけど。それで夏休み潰れるっていうのはどうかと思うが。丸一ヶ月近く拘束されるし。
しかも帰ってきたら帰ってきたで、色々と元に戻せないところも出てくるし。当分の間は生徒や知り合い関係には会えないだろうなってくいう位に変わる。
しかし仕方が無い。
向うにもの役割というものがある。
それにしても、一番大変なのは自分自身だ。
ここに帰ってきたとき、戻れるかどうか。ちょっと自信ない。