フワフワしててよ、そんでもって弱っちそうで。
体つきは華奢で、一体死神の癖に何食ってるんだ?って言いたくなっちまう位細かった。
その名の意味を…
「なんだってお前みたいなヒョロッちい野郎が死神なんだよ。」隣にいるその死神に毒づいてみる。
なんだってこんな・・・あり得ねぇだろうがよ。
背は俺より小さいのは、まぁ・・・仕方ねぇにしてもだ。
細すぎるだろうが、いくらなんでもよぉ。
「聞こえてますよ。それよりも虚が出てところって、確かに此処なんですね?」
そう言って振り返る。
ったく、仕方ねぇから頷いてやるよ。
って言っても、俺が現場見た訳じゃねぇからな。
俺だってサッサとここから去って、何時もの・・・俺の『日常』やってることをしたい・・・んだよ。
だから死神さんよぉ、頼むから急いでくれ。な?
俺のそんな思いとは裏腹に、ドカッとそこに胡坐をかいて、そっぽ向いて「もういい加減帰らせてくれ」っていう空気が満載の俺に対して
「あ、ちょっと待ってくださいね。」
と、そんなことをぬかしやがる。
「あ”ぁ・・・何か言ったか?俺サッサと帰りてぇんだけどよぉ・・・」
その言葉は、もう既にその死神には聞いてもらえなかった。
手をその場にかざして、自分の霊圧を広げてやがる。
ハッ、大して強くもない霊圧なんか広げたって、何の役に立つんだか。
それよりも、さっさと帰って俺は寝たい。
「縛道の五十八 掴趾追雀」
何?!
今・・・アイツ・・・詠唱したのか?
俺の動きが止まる。
そして、その言葉が頭を巡る。
しなかった・・・のか?
・・・
まぁ、ンなこたぁどうだっていいか。
漂ってきた腐臭と、その中に混じる僅かな血の臭いに誘われてここにたどり着いたとき、目の前に広がる凄惨な光景に思わず息を飲んだ。
死体の山だ。
まぁ、んな光景、ここ更木じゃ日常つうか、なんつうかな事だけどよ、でもコレは・・・
ちょっとばかし酷すぎだ。
だからと言ってこんな地区に死神なんか来るわけがねぇ。
現に死体の半分以上は物の見事に腐ってやがった。
俺だって好きで来た訳じゃねぇんだ、サッサと立ち去って、このことは忘れる。
それが一番いい。
だから足を、来た方向に向けて去ろうとしたときだった。
「う~ん・・・更木ともなると、やはり僕たちの目が届き難いんですかねぇ・・・」
と、しみじみ語る黒い着物の・・・銀髪ヤロウ。
そいつは、俺に向き直ると
「君が、一番最初に見つけた人?」
そう聞いてきた。
仕方ネェから
「多分な」
って答えてやった。
それが、俺の運を逃したっていえばそうだろう。
ボリボリと退屈そうに頭を掻いて考えてみた。
あの野郎、もしかしたら意外に強ぇのかも知れねぇなってな。
なんでそんなこと思ったのか、自分でも分からん。
分からんが、なんとなくそう思っちまったんだ。
アイツ、案外面白れぇかもなぁ。
「う~ん・・・なるほど。虚圏へ帰ってしまったようですね。これじゃぁ追えませんね」
と、なんともノンビリとした口調でそう言って
「君、もういいですよ。後は、僕がやりますか・・・ら」
そう言って、俺が持ってる刀に視線が止まる。
「その・・・刀は?」
何故俺が持ってるのか、っていう面して聞いてきた。
まぁ、当然っちゃ当然か。
流魂街のヤツが刀持ってるなんて、死神にとっちゃ信じられないだろうからな。
「あぁ"?あぁ・・・コレか。さぁな。いつの間にか持ってたんだよ。」
そう。
なんで持ってるのか。んなこと、俺に聞かれたって困る。
気がついたら刀があった。
それだけだ。
「へぇ、君、刀と話してないんだ。でも・・・君は強いよね」
な・・・何言ってんだ、コイツ。それに、ちょっと論点ズレてねぇか?
「何キョトンとしてるんですか、可笑しな方ですね。」
そう言ってフワリと笑う。
可笑しいのはテメェの方だ!
そう言おうとしたけど、その笑顔に圧倒された。
なんで・・・そんな純粋に笑うんだよ・・・
んな顔で笑われたら、何も言えねぇじゃねぇか・・・
ッチ
クダラネェ
「君、名前は?」
なんてこと聞いてきたから、「ネェよ」って答えた。
そう。
俺には名前がねぇ。
他人にあって、俺にはないもの。
それが、名前つぅモンで・・・
思いつきもしねぇから、別にどうでもいいんだが・・・
「う~ん、でも名前がなくちゃ色々と不便ですよね。いつまでも『君』っていうのも何ですし・・・」
と、この銀髪の死神はンナどうでもいいことを真剣に考え始めやがったんだ。
そしてポンッと手を叩いて
「剣八・・・っていうのは、どうですか?」
笑顔になってそう聞いた。
けん・・・ぱち?
な・・・んだ?ソレ
それ、名前か?
「剣八。最も強い死神が名乗れる名前ですよ。君は、恐らく誰よりも強くなる。そう思うので。ただし、この名前も、君に上げましょう。『八千流(やちる)』
。君がもし、この八千流という名前を誰かに与えられたら、剣八は君が名乗ればいい。ね?」
そう言って、フワリと笑った。
その時だった。
圧倒的な圧力で、周りに霊圧が来たのは。
「虚・・・ですね。誘われたかな」
そうポツリと言って、銀髪の死神が生えてる木の上に飛び上がる。
「お・・・オイ!」
霊圧を探る能力があまり無ぇ俺にだってハッキリとわかる。
この虚・・・強ぇぇ
しかも死神の方はあんな、ヒョロッチィ野郎ときてる。
クソッ
なんで、俺がアイツを助けなきゃダメなんだよ。
んなこと、しなくたってアイツは死神だろ?
放っておけッつうんだよ。
虚閃が死神に迫る。
クソッタレ!
「全く。いくら強くても、素人が飛び込んできたら、ちょっと困るんですが・・・」
と、いつのまに目の前に立っていたのか、銀髪の死神が呆れ声でそう言った。
俺はというと、その死神に守られる形で、枝にいる。
死神はというと、空(くう)に浮いてる。
「先程も言いましたが、もし、君が『八千流』という名前を誰かに与えられたら、自分が『剣八』を名乗ればいい。ですが、その名を名乗るということは、そこ
に含まれる意味を考えてくださいね。」
「な・・・んだよ。俺にその名前、くれるのか?」
その名前・・・『剣八』を
「えぇ。ですが、もう一つの名前『八千流』を誰かに与えることが条件です。ね?」
そう言って、振り返った死神の笑顔を見た瞬間、そこから後の記憶が、ねぇ。
「さて。剣八さんも眠りましたし。行きますか。」
そう言って、刀を抜く。
『お前・・・もしかして・・・ワザト誘ったな!』
虚が、虚閃を片手で受け止め相殺した死神に対して口を開く。
「さぁ、どうでしょう。
さて、始解の言葉を彼に上げてしまったので、最後の始解の言葉と為りましたが。
八千代に流せ 森羅」
くだらねぇ地区だ。
闇だ闇。
その中で、ガキが、一人・・・
チッ見なきゃ良かったぜ。
「お前、名前は?」
そう問うても、無反応。
「ネェのか・・・俺もだ」
『八千流を与えることが、条件ですよ』
遠い、誰かの声が響く。
「・・・『八千流』お前にやる。俺も剣八を名乗る。」
記憶の片隅に残る、あの光の中の死神を目指すなら。
きっと、彼がいるところに近づけるだろう。
瀞霊廷に行けば、もっと近づける・・・だろうな。
だが、今はまだいい。
それからしばらくして、十一番隊の隊長が、流魂街から新たにやってきた死神に殺される。
その者の名は『更木 剣八』
連れ者の名は・・・『草鹿 八千流』
そして、その名が書かれた書類を見て、微笑んだ銀髪の死神が・・・一人・・・