「一体……どうすれば」
アルミンが一人呟く。
「いきなりローゼが突破されるなんて……我々に……何か……手が残されているのでしょうか……」
――手はたぶん、残されてる。女型の巨人の硬化能力をエレンが使えれば……だけど……それにしても、知性ある巨人は、もしかしたら何かしら能力が違うのかもしれないなぁ……
と、は考える。
――それにしても、熟練度とかもあるんだろうな……でなければ、巨人化して、また再度巨人化するなんて考えられない
「これからエレンを現場に向かわせたとしても……とてもうまくいくとは思えない……それに……」
ここでアルミンは言葉を切った。
「なぜ……ウォール教の司祭まで一緒に」
「あぁ……ニックとは友達なんだよ。ねー?」
――絶対嘘だ!!! その証拠に三人とも信じてないじゃないですか! 分隊長!
「……」
「彼は壁の中に巨人がいることを知っていた。でもそれを今までずっと黙っていた」
――なんだかなぁ……
「なぜかは知らないが、自分が死んでもその他の秘密を言えないというのは本当らしい……彼ら教団は何かしら壁の秘密を知っている」
「はぁ!? なんだそりゃ!!」
エレンが掴みかかろうとするが、すぐに倒れこむ。
「う?!」
「おとなしくして……まだ巨人化の後遺症が……」
――あぁ。巨人化したんだ……対女型の巨人で戦ったんだな……
が、想像を巡らせる。
「他の教徒に聞いてもよかったんだけど……彼は自ら同行するこを選んだ。状況が変わったからね……現状を見てもなお原則に従って口を閉ざし続けるのか、自分の目で見て……自分に問うらしい……」
Attack on Titan
20.馬車の上にて
「イヤイヤイヤイヤ……それは……おかしいでしょ」エレンが口を開く。
「何か知ってることがあったら話してくださいよ……人類の全滅を防ぐ以上に重要なことなんて無いでしょう」
――エレン、それは……違うかも知れないんだ……
そうは思えども、は口を閉ざす。
「どうだろう……私には司祭は真っ当な判断力を持った人間に見えるんだ……もしかしたらだけど……人類滅亡より重要な理由があるのかもしれない……」
「まぁ……こいつには少し根性があるらしいが、他の信仰野郎共はどうだろうな……全員がまったく同じ志とは思えんが……まぁ」
そこでカチャリと銃をチラリと見せて
「質問の仕方は色々ある……」
恐らく銃をニック司祭に突き付けながら、話してるのだろうことを想像して、はそのままリヴァイの話を聞く。
「俺は今……役立たずかもしれんが……こいつ一人を見張ることぐらいできる。くれぐれも……うっかり体に穴が空いちまうことが無いようにしたいな……お互い」
――その兵長の護衛なんですけどね、俺……
「それはさておきだ……ハンジ」
「?」
「お前は、ただの石ころで遊ぶ暗い趣味なんてあったか?」
「あぁ……そうだよ。これは、ただの石じゃない……女型の巨人が残した硬い皮膚の破片だ」
「……」
「え……え?!」
――やっぱり、なるほど……って、そりゃ壁の中に巨人が居て、その能力で壁が出来てるなら、消えてないのも納得だけど
事実として、壁の中に巨人がぎっしりなのかも知れないのだ。
いつか壁が消えて、歩き出すかもしれないなぁとは思った。
そうなったら、壁の外の『世界』は……きっと滅ぶだろうね……
『外』がどれくらい広いのか想像がつかないが、それでも……
「消えてない?!」
「そう!」
「アニが巨人化を解いて体から切り離されてもこの通り! 蒸発もしない……消えてないんだ」
――なるほどね。巨人化を解いた後にも消えてないってことは……
「もしかしたら……と思ってね。『壁』の破片と見比べたらその模様の配列や構造までよく似ていたんだ。つまりあの壁は大型巨人が主柱になっていて、その表層は硬化した皮膚で形成されていたんだ」
「本当に……アルミンも言ってた通り……」
と、ミカサが驚いた声を出す。
「じゃ……じゃぁ……」
「待った!」
「ぷ……!?」
「言わせてくれ、アルミン。そしても!」
アルミンが驚いてを見るが、何食わぬ顔で少し首を傾げては受け流す。
「このままじゃ破壊されたウォール・ローゼを塞ぐのは困難だろう……穴を塞ぐのに適した岩でもない限りはね……でも、もし……巨人化したエレンが硬化する巨人の能力で壁の穴を塞げるのだとしたら」
「……!!」
――やるしかないよねぇ…『穴があれば』だけど……そして、そうなったら少数で行くことも可能なわけで……なんせ護送対象がエレン一人だもんねぇ……
「オレで……穴を塞ぐ……!?」
「……」
リヴァイが黙ってエレンを見る。
「元の素材は同じはずなんだ……巨人化を解いた後も蒸発せずに石化した巨像を残せるのならあるいは……本当に……もしそんなことが可能ならだけど、さっきまでそう考えてたんだ」
「賭ける価値は大いにあると思います……同じやり方が可能なら……ウォール・マリアの奪還も明るいですよね。従来のやり方だと、大量の資材を運ぶ必要があったから、それを支える人員や兵站を考えると……壁外に補給地点を設けながら進むしかなかった……それにはおよそ20年掛かる計算だったけど、荷馬車を護送する必要もないとなると……シガンシナ区まで最速で向かうことも可能だと思います」
「なるほど……少数だけなら一気にウォール・マリアまで行けるかもしれないのか」
「夜間に壁外の作戦を決行するのはどうでしょうか?」
――あー! それはさすがに思いつかなかった! アルミン天才だな!!
「夜……に……?」
「はい! 巨人が動けない夜にです! 松明の明かりだけで馬を駆けさせることはできませんが……その速度でも……人員さえ絞れば夜明けまでにウォール・マリアへ行けるかもしれません」
「……」
分隊長が、石を持ってしみじみと語る。
「状況は絶望のどん底なのに……それでも希望はあるもんなんだね……」
――だいぶ希望は見えてきた……けれども……けれどもだ……
「えぇ……ただしすべてはエレンが穴を塞げるかどうかに懸っているんですが……」
――それ重要。てか最重要。なんとなく、できないような気はするが……
ガラガラガラガラ……
荷馬車は道を進み続ける。
そこに、静かな沈黙が落ちた。