「!」
エレンの顔に緊張が走る。
「現状ではエレンの引き渡しは避けられない。そうなってしまえば壁の破壊を企む連中をおびき出すのが困難になる。ひいては人類滅亡の色が濃厚になっていく。これらすべての危機を打開するべくして作戦は立てられた。これにすべてを賭ける。次は……無いだろう」
も、エレンもミカサもアルミンも黙って聞いている。
リヴァイだけが、渡された紙を読んでいた。
「大まかに説明すれば、我々が憲兵団に護送される際にストヘス区中でエレンが抜け出し、目標をおびき寄せて可能なら地下で巨人化させることなく捕獲するのが目的だ。エレンを囮にして、壁を壊す巨人の輩が捕らえられるのであれば、当然召集の話は無くなる。王都の意識も壁の防衛に傾くはずだ」
――囮……か……今回の遠征で囮にした……ことは言わないんだな……そりゃそうか……。それにしても、なんだか団長らしくない作戦だが、もしかして、この作戦の立案はアルミンか?
そう思ったそう思うのと同時に、エレンがボソッとアルミンたちに告げる。
「やったな」
と。
だが、アルミンとミカサの反応で疑問に思ったのだろうが、団長の話は続けられた。
Attack on Titan
18.女型の巨人
「女型の正体だが……それを割り出したのはアルミンだ。この作戦を立案したのも彼で、私がそれを採用した」――やっぱりな……話したのは、さっきか。
とは思う。
「女型と接触したアルミンの推察によるところでは、いわく女型は君達104期訓練兵団である可能性があり、生け捕りにした二体の巨人を殺した犯人とも思われる」
――思われる……証拠はないのか……ま、確証なしで今回の壁外調査を立案した俺も俺だけどさ
いくつかの予想が当たっていたことを確信して、は話を聞く。
「彼女の名は、アニ・レオンハート」
「アニが……? 女型の巨人? なんで……そう思うんだよ……アルミン」
エレンの問いに、アルミンが答える。
「女型の巨人は、エレンの顔を知ってるばかりか、同期でしか知りえないエレンのあだ名『死に急ぎ野郎』に反応を見せた。何より大きいのは二体の巨人を殺したと思われるのがアニだからだ……」
――ふむ……
も黙ってアルミンの言葉を聞く。
「あの二体の殺害には高度な技術が必要だから、使い慣れた自分の立体機動装置を使って……検査時にはマルコの物を提示して追及の逃れたと思われる」
「は……? どうして……マルコ……が出てくる?」
――ふむ……こりゃ、どさくさに紛れて殺人もやったかもな……
「……」
アルミンが意味深な視線でエレンを見る。
「わからない……僕の見間違いかもしれない……」
「……は?」
訳が分からないといった声で疑問を呈すエレンを遮るようにして、ここで初めて兵長が口を開いた。
「オイ、ガキ。さっきから女型と『思われる』だとか言ってるが、他に根拠はないのか?」
「はい……」
答えたアルミンに対し、ミカサがさらに言葉を募る。
「アニは……女型と顔が似ていると私は思いました」
「……」
――根拠確証がないのはいつもの事。手探り状態なのも変わらない。それが、壁を壊す連中なら尚のこと…… 「は!? 何言ってんだ! そんな根拠で――」
立ち上がったエレンを丸ッと無視して兵長が告げる。
「つまり……証拠はねぇがやるんだな……」
「証拠が無い……? 何だそれ……何でやるんだ?」
――それでもやるのが調査兵団っていう。そもそも、内側から壊されたら元も子もないからね……
「どうするんだよ……アニじゃなかったから」
答えたのはミカサだ。
「アニじゃなかったら……アニの疑いが晴れるだけ」
「そうなったらアニには悪いとは思うよ……でも、だからって何もしなければ、エレンが中央のヤツの生贄になるだけだ」
それでも信じられないのか、エレンは反対している。
――まぁ、分からんでもないが……
「アニを……疑うなんてどうかしてる……」
「エレン。アニと聞いた今、思い当たることはないの? 女型の巨人と格闘戦を交えたのなら、アニ独特の技術を目にしたりはしなかったの?」
――あぁ。これ思い当たる節あるんだな……
何故かは確信する。
今回ほど、現場に出ていなかったことを後悔することはない。
隊員を死なせ、班員を死なせ、それでも区切った。
あげく女型と戦った人類最強は怪我をした。
「団長」
「なんだ? 」
「彼女の同郷を調べますので編成してください。それと104期調査兵団の隔離と監視もお願いします」
「分かった」
「?!」
アルミンが驚いた様子でこっちを見る。
「?」
疑問に思ったが、再度口を開く。
「あと、恐らく、そのマルコ……だっけ? は巨人に殺されてないと思う」
「……!?」
「……さん?」
エレンが不思議そうにを見る。
「何となくさ。提出された立体機動装置がそのマルコの物だとして、なんで奪えたと思う? あの場にはエレン以外、知性ある巨人はいなかったのにね」
「……」
「アニが……マルコを殺した?」
「さぁね。俺が見たわけじゃないから、これも推論だけどね」
――アニ達……だ。多分な……
「副長って、すごいね」
「何が……」
「あの人さ、今回。援護班だったんだよね?」
「みたいだな」
「……現場に居なかったのに、僅かな報告書とか手掛かりだけで、僕なんかより数手先を読んでる」
「そう? 私には……いや、なんでもない」
「ミカサ?」
「不思議な人なんだよなぁ。さんて。役職で呼ばれるの嫌いみたいだし」
初対面からして、おかしな人だった。
「副長のくせに、自分のこと、ただの・って紹介したり、副長って言われればイヤな顔したりさ……」
「それって……」
「あぁ。まぁ、悪い人じゃねぇよ。多分な……」
「じゃ、エレン。二日後に」
「あぁ」