「どこまででって、例の部屋の話と現実だな」
「なるほど? 仕掛けたな、エルヴィン」
「撒き餌は必要だろ?」
「そうだな」
兵団トップ2の二人が話す会話には入って行かない。
もちろん話を振られたら別だが……
「。作戦立案に付き合ってくれ」
「了解です」
ここから作戦立案書の作成作業が始まった。
Attack on Titan
16.長距離索敵陣形
「う~~~」「喚くな、」
「だってぇ……発表しちゃえば、これで行くわけでしょう?……うぅぅやだなぁ……」
人間を纏った巨人がいつ現れるかもわからない。どんな力を持ってるかもわからない、無い無いづくしでやるしかないのだ。
手探りはいつものことだが、今回は手探りが過ぎる。
それを新兵に一か月で叩き込むのだ。
頭を搔きながら、作戦立案書には目を通した。
「班ごとに居場所をかく乱して……あとは、どこから来るか……ですねぇ」
出たとこ勝負だ……右に配置された班は壊滅するだろうな……
そんなことを考えながら、は、胃が痛くなるのを感じていた。
始まってしまえば、流れに任せるしかない。
新兵への長距離索敵陣形の説明などは任せるとして、は自分のやるべきことをやるだけだった。
ただ、そうじゃないこともあったが。
「グンタ」
「ん? なんだ」
「今回の長距離索敵陣形の概要図、配りに来た」
「あ、あぁ。ありがとう」
「訓練は順調?」
「あぁ。なんとかな」
長距離索敵陣形の用紙をリヴァイ班に持って行き、グンタに渡す。
それを見て訓練するのだ。
だが今回、この長距離索敵陣形の用紙に次の壁外調査の『仕掛け』が隠されている。
そしてそれを知っているのはリヴァイや、ハンジ分隊長以下、熟練の兵士たちだけだ。
――すまん、グンタ……
固く口留めされているため、話すことは許されない。
だからは、渡した後そっとその場を離れ馬の方に足を向けた。
そんなことを知らず、グンタはそれを広げてエレンに見せる。
「俺達特別作戦班はここだ。五列中央・待機」
「随分後ろなんですね」
「この布陣の中で最も安全な配置だろうな。補給物資を運ぶ荷馬車よりも手厚い待遇だ」
そう言ったグンタがエレンの方を見て
「この壁外遠征が極めて短距離なのも、お前をシガンシナ区内に送るための試運転だからだ。今回はとりあえず「行って帰ってくる」ことが目標だ」
「……」
「……あの」
ギュッと手を胸の辺りに持って行き、じっと見つめながらエレンが告げる。
「オレには……この力をどうしたらいいかもまだわからないままなんですが……事をこんなに進めてしまって大丈夫でしょうか……」
「お前、あの時の団長の質問の意味がわかったか?」
「……え?」
あの時の団長の質問とは、捕らえた巨人が殺されたときのものだ。
「先輩方にはわかったんですか?」
「さぁな」
「いいや」
「いいえ」
「俺にもさっぱりわかんなかったぜ。だが、さんなら分かってるのかもな」
「さんなら……」
少し離れて馬の世話をするにエレンが視線を向ける。
不思議な人だ。
この特別班の副長らしいが、それを感じさせない。
シルバーブロンドの髪にディープブルーの瞳を持つ人。
軽薄な空気を持つ、副長と呼ばれることを恐らく嫌ってる、不思議な人だ。
接したことも話したこともあまりないが、それでも居心地の良さを感じる人だ。
「もしかしたらこの作戦には「行って帰ってくる」以外の目的があるのかもしれん。そうだとしたら団長はそれを兵に説明するべきではないと判断した。ならば俺達は「行って帰ってくる」ことに終始すべきなのさ。団長を信じろ」
「……はい」
「では今日の訓練はここまで。さぁ、俺達の城に帰るとすっか」
「」
馬を世話していたに、兵長が声を掛けてきた。
「あれ? いいんですか? 兵長。エレン見てなくて」
率直な疑問をぶつけただけだったが、リヴァイが機嫌を悪くしたのは何となく分かった。
「てめぇが誰の部下だったか思い出させてやろうか?」
「兵長の部下ですよぉ」
ニヘラと笑うに対し、リヴァイが告げる。
「今から部屋に来い。話がある」
「? 了解です」
「……」
話を聞いたは少し不服そうな表情をする。
「だから、貴様は援護班に回れ」
「それって……」
「いいか、これは決定だ」
「一応、俺の位置、右の伝令にしたんですけど……」
「ヤツと協議した結果だ。黙って従え」
兵長のいう『ヤツ』とは団長を指す。
――直談判したな? この人……
そうは思うが、口には出さない。
「……団長と……」
「今回、不測の事態が多すぎるからな。テメェを失う訳にはいかない。俺もヤツも、そういう判断だ」
「……了解です」
「援護班のヤツらを殺すなよ。それがお前の役目だ」
「……がんばりますよ」
「不服か?」
「いいえー。とりあえず、兵長」
「なんだ」
「生きて帰ってきてくださいね?」
兵長がに毎回言ってる言葉をかけてみた。
「誰に言ってる?」
「兵長ですよ?」
「テメェ……」
ニヤリと笑ったに仕掛けたのはリヴァイだった。
「……んっ!」
「援護班、=。降ります!!」
壁の上から身を翻し、その勢いで壁に張り付いていた二体、一気に片付ける。
リヴァイ班、不動の二番手。
その実力を間近で見て、誰かが感嘆の声を上げる。
「すげぇ……」
「援護班、続け!!」
「はい!!」
壁の上の兵士が告げる。
「団長!! 間もなくです!」
「付近の巨人はあらかた遠ざけた!! 開門30秒前!!」
その声に呼応するように、地上からも声が上がる。
「いよいよだ!! これより人類はまた一歩前進する!! お前達の訓練の成果を見せてくれ!!」
――死ぬなよ……みんな!
あっという間に五体をヤッては思う。
「開門始め!!」
「第五十七回壁外調査を開始する!! 前進せよ!!」
馬が走る。
だが、巨人も襲ってくる。
「隊列左!! 前方!!」
――クソ! 手が回らん!!
巨人の項を削ぎながら指示を出すが、十メートル級が隊列に迫る。
「左前方十メートル級接近!!」
「クソッ! 取りこぼした!!」
「隊列を死守しろ!!」
「ひッ!!」
「怯むな!! 援護班に任せて前進しろ!!」
そして団長が声を出す。
「進めぇ!! 進めええぇぇぇ!!!」