「私は調査兵団団長、エルヴィン・スミス。調査兵団の活動方針を王に託された立場にある」
堂々とした話し方で、団長が始めた。
「所属兵団を選択する本日、私が諸君らに話すのはやはり調査兵団の勧誘に他ならない。しかし今回の巨人の襲撃により諸君らは壁外調査並の経験を強いられた。かつて例が無いだろう。訓練兵でありながらこれ程犠牲を経験したことは」
報告書によれば、相当数が死んだとある。
その報告書の下調べをしたのは、他ならぬ訓練兵なのだ。
「既に巨人の恐怖も、己の力の限界も知ってしまったことだろう。しかしだ、今回の襲撃で失った物は大きいが、これまでに無いほど人類は勝利へと前進した」
話がどんどん進んでいく。
どこまで開示するつもりなのかを予想できているが、興味なさそうに壁に背中を預けて目を閉じる。
「それは周知の通り、エレン・イェーガーの存在だ。彼と諸君らの活躍で巨人の侵攻は阻止され、我々は巨人の正体に辿り着く術を獲得した。彼に関してはまだここで話せることは少ない。だが間違いなく我々の味方であり、命懸けの働きでそれを証明している」
――きた
が僅かに目を開けて、団長を見る。
「そして彼の生家があるシガンシナ区の地下室には、彼も知らない巨人の謎があるとされている。我々はその地下室に辿り着きさえすれば、この百年に亘る巨人の支配から脱却できる手掛かりを掴めるだろう」
Attack on Titan
15.新兵勧誘式
訓練兵たちがざわつき始める。だがは冷静だった。
勧誘における話の肝はこの先だからだ。
地下室の話は侵入者への撒き餌に過ぎない。
「地下室だと……」
「もうそんな段階まで来てるのか……」
「巨人の正体がわかればこの状況も……!!」
「何を見ようとしているんだ?」
「え?」
さらに話は続く。
「ただ……シガンシナ区内の一室をじっくり調べ上げるためには、ウォール・マリアの奪還が必須となる。つまり、目標はこれまで通りだが、トロスト区の扉が使えなくなった今、東のカラネス区から遠回りするしかなくなった。四年かけて作った大部隊の行路もすべてが無駄になったのだ」
そこで団長は一息つかず、一気に言い切った。
「その四年間で調査兵団の九割以上が死んだ。四年で九割だ。少なく見積もって我々が再びウォール・マリアに大部隊を送るには。その五倍の犠牲者と二十年の歳月が必要になる……現実的でない数字だ」
隠すことなく、団長が告げる。
衝撃だったのか、勧誘式にいる新兵に緊張が走るのが分かる。
「調査兵団は常に人材を求めている。毎回多数の死者が出ることによって慢性的に人員が不足している。隠したりはしない。今期の新兵調査兵も一月後の壁外調査に参加してもらう。早急に補給ルートが必要なのだ」
ここで一息やっとついて、さらに言葉を続ける団長に、が興味なさそうに欠伸をした。
「新兵が最初の壁外調査で死亡する確率は五割といった所か。それを超えた者が生存率の高い優秀な兵士へとなってゆく。この参考を知った上で自分の命を賭してもやるという者はこの場に残ってくれ」
調査兵団に入るには、それ相応の覚悟がいる。
だからこそ、は一人で決めた過去を思い出して、少し感慨深いものが胸中によぎる。
「もう一度言う……調査兵団に入るためにこの場に残る者は近々殆ど死ぬだろう。自分に聞いてみてくれ。人類のために心臓を捧げることができるのかを」
当時の仲間で残ってる者は、もうほとんど居なくなってしまったが。
いくら仲間の死亡率を下げても、が隊を離れるとすぐに死んでしまう者もいた。
それはそれで、そいつの実力だったのかもしれないが、それでも……自分の評価が相対的に上がるのは、どうにも納得がいかないである。
「以上だ。他の兵団の志願者は解散したまえ」
――ただ……
そこで思考を切ったの考えの先を、グンタが引き継いだ。
「団長。必要以上に脅しすぎではありませんか? 残る者はかなり絞られるはずです」
だが、これでいい。
今回の新兵勧誘式は、ただの勧誘式ではない。
こちからから、初めて仕掛けられる誘導も兼ねているのだ。これくらいは必要だろうなぁとは思う。
そして何より、その『壁外から来た巨人になれる人間』を炙り出し、捕らえるために……