「はい」
「お前も掃除していけ」
「……はい」
――その言い方……決定ですよねぇ……
「わかりました」
――まぁ、団長もそれ込みで予定組んで出たっぽいしなぁ……
 今日の予定は半ば諦め、と言うよりもこの伝言以外やることがないはそのまま掃除を手伝うことにした。
Attack on Titan
11.聞かない聞いてない聞きたくない
さん?」
 最初にに声をかけたのはペトラだった。
「手伝うよ」
「ありがとうございます」
「ペトラ……」
「あ……ありがとう……」
「うん」
 敬語を崩した途端、の空気が柔らかくなる。
 本気で『副長』という立場を捨てたいにとって、隊員に敬語を使われるのは勘弁願いたいのだ。
 その後、ペトラと思いっきり清掃をしてリヴァイに確認してもらって次の部屋を掃除する。
 が帰ろうとした頃には、部屋のほとんどが綺麗になっていた。
 そして、持ってきた荷物の中から今夜の食事の用意をするが、皆が皆やることを理解しているからか、その作業はテキパキとしていて無駄がない。
 その連携を、エレンは芋の皮をむきながら黙って見ていた。





「ふう……」
 思ったよりエレンが従順そうで良かったとは馬上で思った。
 夕闇の中、調査兵団本部に向かう途中で実験中の二体の巨人を見るともなしに見て、そのまま本部に足を向けたは、彼らの様子を団長に報告する。
「とりあえず、見た限りエレンはかなり従順に兵長に従ってるようです」
「そうか」
「団長」
「なんだ?」
「ひとまず、今度の遠征について兵長には内側の概要を伝えました。班員には、外側の概要しか伝えてません」
「……そうだな」
「団長」
「なんだ」
「秘匿性が高いとは言え、これは……」

「はい」
「それでも、必要なことだ」
「……はい」
――たとえ死ぬことになっても……ですよね、団長


「あれ? ?」
「げ……!」
 軽くご飯を食べたが家に帰ろうとしたところ、今一番会いたくない人に廊下でばったり会ってしまい、思わず本音がこぼれる。
「今からリヴァイ班のところに行こうと思うんだけど、、キミもどう?」
「……俺今、そのリヴァイ班のところに行ってきたところですが?」
「そうか! よし!! 行こう!」
「あのぉ……俺の言葉聞いてます?!」
「聞いてるよぉ?」
――絶対嘘だ!!
 そうは思えど、兵団内の序列はこの変人分隊長の方が上だ。
 黙って従うしかない。
 そうして、は今日二度目となる旧調査兵団本部へと向かうことになるのだった。


「それにしても、次の壁外調査……知ってるよね?」
「……はい。というか、立案したのは団長ですが、俺その場にいましたから」
「そうか……」
 松明を持って馬に乗ったは、再び旧調査兵団本部への道を今度はハンジと共に歩き出した。






「我々への待機命令はあと数日は続くだろうが、30日後には大規模な壁外遠征を考えてると聞いた。それも、今期卒業の新兵を早々に混じえると」
「エルド、そりゃ本当か?」
「ずいぶん急な話じゃないか。ただでさえ今回の巨人の襲撃は新兵には堪えただろうによ」
「ガキ共はすっかり腰を抜かしただろうな」
 リヴァイのマネで告げるのはオルオだ。
「本当ですか、兵長?」
 そう聞くのはペトラだ。
「作戦立案は俺の担当じゃない。ヤツのことだ……俺達よりずっと多くのことを考えてるだろう」
 その言葉に、リヴァイはから聞いた内密のことは伏せた。
「確かに……これまでとは状況が異なりますからね……多大な犠牲を払って進めてきたマリア奪還ルートが一瞬で白紙になったかと思えば、突然まったく別の希望が降って湧いた」
「……」
「未だに信じられないんだが……『巨人になる』っていうのは、どういうことなんだ、エレン?」
「……その時の記憶は定かはないんですが……とにかく無我夢中で……でもきっかけになるのは自傷行為です。こうやって手を……」
――あれ? そう言えばオレは何でこれだけは知ってるんだっけ?
「お前らも知ってるだろ……報告書以上の話は聞き出せねぇよ……」
 だが
「まぁ、あいつは黙ってないだろうが。ヘタにいじくり回されて死ぬかもな、お前……エレンよ」
「え……? あいつとは……?」
 エレンが聞き返したとき、その『あいつ』が入ってきた。
「こんばんはー、リヴァイ班の皆さん。お城の住み心地はどうかな?」
「あいつだ」
 そう言って、入ってきた『あいつ』をリヴァイが視線で示す。
「ハンジ分隊長」
 前置き無しで彼女は、イスに座りながら本題に入る。
 は、イスがなかったので立ったままになった。
「私は今、街で捕らえた二体の巨人の生体調査を担当しているんだけど、明日の実験にはエレンにも協力してもらいたい。その許可をもらいにきた」
「実験……ですか? オレが何を……?」
 一体何をするのか疑問に思い、エレンが尋ねる。
 だが彼女は内容を話さず、ただ興奮したように
「それはもう……最高に滾るヤツをだよ」
 と告げる。
「?」
 一体なにをするのか疑問に思ったが、エレンは冷静に今自分が置かれている状況を告げた。
「あの……許可については自分では下せません。自分の権限を持っているのは自分ではないので」
「リヴァイ? 明日のエレンの予定は?」
「……庭の掃除だ」
「ならよかった、決定!! エレン! 明日はよろしく」
「あ……はい」
 そして、エレンは聞いてしまった。
 変人分隊長にとって、最高の言葉を。
「しかし巨人の実験とはどういうものですか?」
 と……
 すかさずオルオが
(オイ! やめろ……聞くな!)
 と忠告するが、時すでに遅しである。
「あぁ……やっぱり。聞きたそうな顔してると思った……」
 そう言った彼女の言葉に、兵長を始めとする隊員たちが席を立つ。
 そしてもまた、そのまま隊員たちに続いて食堂を出た。
 その出たところで、は今度はリヴァイに捕まった。
 各自部屋に帰り、誰もいなくなった廊下でリヴァイが告げる。
「てめぇは部屋に来い」
アトガキ
効かない聞かない
2026/02/25 up
管理人 芥屋 芥