「はい」
「30日後に壁外調査の申請を出した」
――ってことは、エレンは囮だなぁ
そう思ったが、
「はい」
と返すと、団長が言ってきた。
「その作戦を練りたいのだが、。君の見解を聞きたい」
「ですねぇ……って、もしかして団長。エレンのことエサにしようとしてません?」
「そうだ」
「なるほど」
この人と作戦立案をすると、話が合うから好きだったりする。
「超大型巨人や鎧の巨人がもし、意識のある巨人だとするのならば。別の意識ある巨人がいたとしても不思議ではない。そうは思わないか?」
「まぁ……もし、ですよ? 居たとして、どうやっておびき出すんです?」
「今回は、新人も入れる」
「新人……なるほど。今期の新人の中に、エレンと同じ連中が最低でも二人はいる。団長はそう思ってるんですね?」
「そうだ」
それはつまり、最低二人は『壁の外』から来たことを意味する訳だ。
それはあの超大型巨人と、鎧の巨人のことだろう。 いや、それ以外にも潜入しているかもしれないと、この人は踏んでいる。
「」
「はい」
「一人でもいい。罠にかけたい」
何を、とは団長は言わなかった。
恐らくこの人には『壁の向こう』が見えているんだろうと思う。
「了解しました。詳細に関して、特別作戦班の中でも兵長以外には言わないようにします」
「そうしてくれ」
――例えそれが、多大な犠牲を払うことになろうとも……ですね。俺を含めて……
Attack on Titan
09.特別作戦班
「着替えて、フード被ってから馬に乗ってね」そうペトラに言われ、兵団の服に着替えてフードを被り、準備された馬に乗るのは監視対象のエレンだ。
「の、副長のところで随分羽を伸ばしたみたいだな」
「いえ……」
「言わなくても分かる。あの人のところだとリラックスできたんだろ?」
「……」
言わなくても分かるなら答える必要はないだろう、そう判断したのか不明だがエレンは無言だ。
それに構わず、オルオが馬に乗ったまま話を続ける。
丁度、旧調査兵団本部が見えてきたところで、その説明をオルオが行う。
「旧調査兵団本部。古城を改装した施設ってだけあって、趣とやらやだけは一人前だが……こんなに壁と皮から離れた所にある本部なんてな調査兵団には無用の長物だった。まだ志だけは高かった結成当初の話だ……しかし、このでかいお飾りが、お前を囲っておくには最適な物件になるとはな」
しかしエレンはオルオを静かに見たあと、後ろに視線を移しリヴァイを見る。
リヴァイが睨むと、少し焦ったように正面を見直した。
それが気に入らなかったのか、オルオがグイっと顔をエレンに寄せて告げた。
「調子に乗るなよ新兵」
「はい!?」
驚いたエレンの声が響く。
「巨人か何だか知らんがお前のような小便臭いガキにリヴァイ兵長が付きっきりになるなど……」
そこで舌を噛んだオルオの口がやっと止まる。
――馬鹿?
そう思ったのは誰だったのか。
そして辿り着いた旧調査兵団の前でエレンが馬を休ませている間に、オルオが噛んだ舌を井戸の水で冷やしている。その正面に立ち、説教をしているのは作戦班唯一の女性兵士であるペトラだ。
「乗馬中にぺらぺら喋ってれば舌も噛むよ」
「……最初が肝心だ……あの新兵、ビビッていやがったぜ」
「オルオがあんまりマヌケだからびっくしりしたんだと思うよ」
「……何にせよ俺の思惑通りだな」
「……ねぇ。昔はそんな喋り方じゃなかったよね? もし……それが仮にもし……リヴァイ兵長のマネしてるつもりなら……本当にやめてくれない? いや、まったく共通点とかは感じられないけど……」
心底嫌悪してそうな顔でペトラが告げる。
「さん、副長を見習いなよ……」
「……!! フッ……俺を束縛するつもりかペトラ? 俺の女房を気取るにはまだ必要な手順をこなしてないぜ?」
「兵長に指名されたからって浮かれすぎじゃない? ……舌を噛み切って死ねばよかったのに……」
「……戦友へ向ける冗談にしては笑えないな……」
そんな二人の会話を、エレンは黙って聞いている。
みな、リヴァイが指名した兵員たち。
巨人化したとき、自分にブレードを向けるかもしれない相手だ。
殺されることになる相手。
だが、そんなエレンの思いなど関係なく、オルオが兵長に告げる。
「久しくつかわれてなかったので、少々荒れてますね」
それにリヴァイが変わらずの深刻そうな表情で、答えた。
「それは、重大な問題だ……。早急に取り掛かるぞ」