が宿舎まで案内し、自分の部屋のドアを開ける。
「え……?」
驚いた様子で部屋の入口で立ち止まったエレンに対してが
「どうした?」
と振り返ると、
「えっと……なんで?」
と戸惑った様子を見せる。
「なんでって、一緒の部屋だけど?」
「そうじゃなくて! なんで? 怖くないんですか?! 俺はッ!」
「あー。巨人になるとかそういう? 別に怖くないよ。それに、さっき兵長が言ってたろ? 部屋は俺のところでってさ。入って」
そう言ってエレンを促し、中に入った。
Attack on Titan
08.No position but...
「俺はさ、明日までの仮の監視だから」そう言ってブーツを脱ぎ、部屋に置いてある靴に着替える。
「俺、あなたのこと知らないんですけど……」
部屋で所在無げに立ち尽くしているエレンに対し、やるべきことをは行った。
「じゃ自己紹介。俺は。・っていう。まぁって呼ぶ人も居るけど、あんまり呼ばれないねぇ」
上着を脱いでハンガーに掛けながらが告げると、やはり立ったままエレンが問いかけてきた。
「団長とは長いんですか?」
シャツのボタンを外しながら、問いに問い返した。
「なんでそう思う?」
「なんでって、さっき団長が兵長に対して『を借りる』って」
ここに来る前に起きた団長と兵長のやり取りのことを言っているのだと思ったが
「あぁ。またぞろ出向だからね。いつものことさ。気にしないで」
「はぁ……いつもの事、なんですか?」
「まぁね」
「さんの、いえさんの……」
「あーでいい。そっちの方が呼ばれ慣れてる」
「あ、はい。では、さんの本当の役職は?」
「役職?」
「はい」
「役職って……特にないけど?」
「そうなんですか?」
「うん」
しれッと大嘘をつくが、間違ってないとは思う。
「とりあえず、疲れたろ? ひとまずそこのソファでゆっくりしてくれ」
団員服を脱ぎ、部屋着に着替えたがそう言って、エレンをソファに座るよう促す。
「しかし!」
「いいから。それに、今は『俺が』ゆっくりしたいのよ」
「は、はぁ」
「だから、エレンもゆっくりしなよ? 明日から監視されて過ごすんだから」
「はい……」
念を押された形で、エレンが恐る恐るソファに座る。
それを見届けたは、そのままベッドに大の字になった。
「明日から監視って、今日は……」
「今日も監視だけど、俺は基本感知しないし見ないから好きにしていいよ?」
「い、いえ。このソファでゆっくりします。その……ありがとうございます」
「いいよ。慣れない環境で緊張するだろうけど。それでも一日くらいはゆっくりできたらいいかなって思っただけだから」
そう言ったは、そのままベッド脇のテーブルに置いてあった本に目を通す。
その様子を、エレンがジッと見つめている。
「何?」
「いや、さんって、不思議な人だと思いまして」
「不思議?」
「はい。いや、なんていうか……すみません、意味わかんないですね」
「まぁ……君が一人で完結してるから言ってることは意味不明だなぁとは思うけど。悪い気はしないよ」
「ありがとうございます」
そう言って、本を置いて一言
「俺、もう寝るから」
と言った。
朝、兵長が編成した特別作戦班と共に迎えに来た。
――絶対この人、昨日一緒に居たくなかったから俺に預けたよね!?
そうは思えども口には出さず、は冷静に言葉を紡ぐ。
「じゃ、引き渡し完了ってことで」
「あぁ。テメェもエルヴィンの足引っ張んじゃねぇぞ?」
「へいへい。分かってますよ」
「副長。出向、頑張ってくださいね」
ペトラのその言葉に反応したのはエレンの方が早かった。
「副長?!」
――ペトラァ!!
そう思いつつも、新人の手前いつものように喚く訳にもいかずが力弱く肯定する。
「副長っていうか……まぁ、うん……」
「。テメェ、言ってなかったのか」
――言う訳ないでしょー! 俺が副長って呼ばれるの嫌いで嫌なの知ってるでしょ?!
そう思いつつもやはりエレンの前で喚く訳にいかず……
「まぁ……言ってません!」
と、潔く返す。
「そうか。じゃ、エレン。行くぞ」
「え? えぇ!?」
と兵長を見比べて、驚いた様子で見てくるエレンを完全無視した兵長が足を止めることなく歩き出す。
それに手を振って答え、は静かにドアを閉めた。