自分の中の恐怖
この時代に来たことに意味があるのなら、何故こうまでしなければならない?
確かに、俺たちが持つ兵器は、この時代では群を抜いて、というより影さえ踏むことが許されない兵器の塊だ。
だが、それを果たして人に向けていいのか?
トマホーク発射の命令が、解除されない以上、これは俺の仕事だ。
ボタンを押すのは、俺なのだから。
自然に体が震える。
『殺す』ためにボタンを押すことなど、今までには無かった。
いつも、『誰かのために』ボタンを押していた。
だが、今回は明らかに違う。
敵と認識した以上、それを『倒す』ためにボタンを押すのだ。
この一撃で、ワスプを沈めた後、俺の中で何かが変わってやしないか?
押してしまうことに、恐怖を感じるのは、きっとその所為だ。
 
 
 
 
頼む。
警告を無視しないでくれ。
二次攻撃を、中止してくれ!
俺たちは、こんなことがしたかったんじゃねぇ!
 
 
 
 
 
震える手が止まらない。
発射されたが最後
こちらから自爆信号を送らない限り、トマホークは進みつづける。
マッハ0.8〜0.9という、この時代じゃ考えられないほどの速さで、恐らく一次攻撃隊を、彼等が気付かないうちに抜き去ってしまうだろう。
頼む・・・
止まってくれ
時間でも、何でも構わない。
俺は、今自分に恐怖している。
 
 
 
 
 
押してしまったが最後だと、そう、心の底から思った。
アトガキ
トマホーク発射の瞬間,ボタンを押す砲雷士の気持ちって,こんな感じなんでしょうかね・・・
2017/07/16 加筆書式修正
管理人 芥屋 芥