命令系統
「艦橋に・・・上がる。補給士!ここを頼む」
「・・・?!戻ってください補給長!」
後ろで叫ぶ補給士を無視して、上に上がる。
艦橋部分に上がったとき、残存航空機を落とすために主砲が火を噴いた。
『CIC・艦橋!今補給長が艦橋に』
『艦橋・CIC!、そこで何をやってる!すぐ戻れ!』
 
 
 
 
当然のごとく、呼び出しを受けた。
そりゃそうだ。
現場放棄・命令違反。それに加えて命令無視ときてる。
現代なら、上陸禁止命令か昇進禁止か・・・
それくらいの処分を受けても仕方がないことをやったのだという自覚くらいにはあった。
 
 
 
 
「桐野一尉。あとでを部屋につれて来い。」
強烈な氷の嵐を秘めた瞳で言い、出て行った菊池砲雷長。
艦橋は、それによって凍りついていた。
 
桐野とロープで両手を後ろ手に結ばれたが廊下を歩いている。
しばらく二人とも黙ったままだったが、桐野が先に口を開いた。
「まったく。なんであんなことやらかした。」
桐野が不信感を隠さずにを見る。
だがはそれには頓着せずに、涼しい顔だ。
菊池三佐に先程まで見せていた顔とは全然違う。
言うなれば叩き上げ幹部の、顔だ。
 
 
自分とは、やはり違うな。
 
 
桐野はそう感じた。
大学を出てから幹部候補生を受けた自分とは、経験・実績・度胸全てが違う。
それに何より・・・視野の広さ。
自分には持ち得ないものを沢山もっている。
 
そしてそれは、同じB幹として全く異質のものだった。
 
「桐野一尉、入ります」
一歩遅れてが部屋に入る。
途端冷気が部屋を襲う。
だが何処吹く風なは、意に返そうとはしないのか、あるいは気にも留めていないのか・・・
判断が付かなかったが。
そして、その判断が為せないままいるところに、菊池が言葉を発した。
「ご苦労だった。桐野一尉、下がっていいぞ」
え?
意外だった。
いや、意外というより予想外の言葉。
下がれ」ということは、外で見張る必要はないということだ。
しかしこいつは砲雷長の命令を無視した、違反者ですよ?
「構わん。下がれ」
僅かな反応で不服を読み取る菊池三佐の観察力もすごいものがあると、改めて実感する。
「了解しました」
 
 
 
 
 
 
 
バタン
静かに扉がしまり、桐野がそこから退室した後に残ったのは二名。
この部屋の主である菊池三佐と、その命令をさっき完全に無視して行動した一尉の二人である。
「現場放棄・命令違反・そして命令無視か。軍において最も最悪なことだ。、やってくれたな」
は口を開かない。
角松二佐や尾栗三佐のように怒鳴りはしないものの、やはり佐官。
怒らせると、あの二人以上の迫力を出す。
そんな菊池の刺すような視線を、瞳に冷徹さを宿してはっきりと受け止めている。
「俺は、菊池三佐の下についた覚えはあっても、少佐の下についた覚えはありません」
静かにそう言った
「俺は自衛官です。先制攻撃をする少佐の命令には、従えません」
 
 
 
 
バシッ
菊池が、を殴った。
「貴様は、分かっているのか?ここではアメリカは敵になるんだぞ?」
「ですが、この艦(ふね)は、イージス艦は!・・・っん」
ガンッと、頭をドアに押し付けて菊池がその口を噛み付くように塞いだ。
次第にの体から力が抜けていく。
そして、そのままズルズルと腰を下ろした。
「あのスピットファイアに乗っていたパイロット、助けないんですか?」
「助けるつもりはない」
「・・・そうですか」
見下ろす菊池に、の表情はとても悲しそうな顔をしていた。
「もう『三佐』というものを、捨てたんですね。」
その言葉は、小さく吐かれた。
だが菊池にはハッキリと聞こえた。
「・・・しばらく・・・そこでそうしていろ。すぐ戻る。」
 
 
 
 
 
 
 
主がいなくなったあと、はモソモソと立ち上がった。
このまま逃げたところでどうせ狭い艦内。すぐに捕まってしまう。
そうすればもっと酷いことになるのは目に見えている。
あの命令は、『三佐』のものだった・・・な
『命令系統』の違いがはっきりと分かることに、は苦笑した。
そして、彼が何をしに出て行ったのかも・・・
分かり易すぎですよ菊池三佐。
 
 
 
カチャ
静かにドアが開く。
「おかえりなさい。」
床に座ったままのが、少し悲しそうな、それでいて満足そうな、複雑な表情で迎えた。
菊池は、そんなの体をベッドに運ぶと、上体だけうつ伏せにして寝かせた。
「ん・・・」
首に掛る息に、思わず声が洩れる。
両手がロープで後ろ手に縛られているためにロクな抵抗ができない。
だが、意外にもロープは解かれた。
 
 
(え?)

 
 
自由になった両手。
だがすぐに体を反転させられ、頭の上で纏められて一つにされる。

 
 
 
壁に背中を預けて、涙目で開放を訴える。
体が無意識に逃げようとするのだが、括られた両腕の中に菊池の頭が入っていて、強制的に誘う結果になってしまうため、逃げるに逃げられない。
という、拷問のような状態だ。
それに加えて、さっきから開放寸前で止められている。
頭が・・・おかしくなりそうだ・・・
「構わん。」
その一言が、やけに耳についた。
クチュ・・・
のけぞった首元に菊池の舌が這う。
そしてそのまま唇を奪うように吸い付いた。
と同時にの腰を引き寄せると、息を呑んで首を振って逃げようとする。
 
まだ理性が崩れんか・・・
 
両腕から首を抜き腰を持つ手を離すと、がそのままズルズルと壁伝いに崩れ落ちた。
、声を出せ。」
耳に舌を入れて菊池が囁く。
途端ビクッと体が揺れるのを、菊池は見逃さない。
塞ごうとする口に強制的に指を入れる。
「噛むなら噛め。」
出来ないことを百も承知で言ってやる。
「ん・・・んっ・・・」
口に入ってる菊池の指が、中をかき回す。
「んっ・・・はぁっやぁ」
カチャ
ズボンの袂に手をかけて一気に下着ごと下ろした。
そのことに、桜色に染まった体は一気に朱に変わる。
腰を引くを無理に引き寄せる。
「さ・・・三佐・・・」
指を銜え、涙目で菊池を見上げるの瞳の中に、入り混じっている欲望と理性。
それに引き寄せられるかのように、菊池がの瞳に唇を落とした。
 
 
 
あ・・・熱い・・・体が・・・焼ける
 
 
 
吹っ飛んだようだな
何より・・・だ
 
 
 
気を失う、いや気絶に近い状態のの体を引き寄せて、菊池が言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「もっと壊れろ。。そのためにお前を艦に残したんだ」
アトガキ
くら!
そして重い!
次は最後までかけるかなぁ・・・って,桐野の件もあるんだけど,それはまた今度ってことで・・・
それにしても菊池が暗い・怖い・恐ろしい
しかし菊池砲雷長のこの壊れっぷり。裏ならではだな・・・(見放し?
2017/07/16 加筆書式修正
管理人 芥屋 芥