「誰だ!艦のヒューズを飛ばした奴は!!」
ドライヤー
「飛んだな。復旧を急げ」
起こってしまったことは仕方ない。
「ダメージコントロール、ヒューズが飛んだ。復旧を急げ!」
そして、即入る菊池からの報告。
「艦橋・CIC。CICは予備電源に切り替わった。それにしても、どこの誰だ。」
その声は、当然のごとく怒っていた。
 
「真っ暗だ・・・」
補給物資の点検をしていたら、いきなり飛んだ電気。
お陰でチェックが出来ない。
だが大体の見当はつく。
誰か、艦のヒューズを飛ばしたな。
一尉。この事態は」
少し声が震えて言う科員に対し、は少し笑って
「初めてか?」
「はい」
「ヒューズが飛んだんだよ」
「飛ぶ・・・ものなんでしょうか」
「大方、誰かがドライヤーか何かを変圧器なしで作動させたんだろう」
とりあえず予備電源に切り替わったが、薄暗い中ではチェックも出来ない。
なので科員を伴って物資倉庫を出た。
 
 
 
今ごろ上は大騒ぎになってる頃だな・・・
ま、外周と違ってCICにはちゃんとした予備電源があるし心配はない。
それよりも、飛ばした奴を見つけ出すのが大変だ。
思いながら、艦内をひた走る。
なんせ出港前とは言え、200名以上がいる艦内なのだ。
走ってると電気が戻った。
どうやら復旧したようだな。
「椎原、ちょっといいか?」
機関科タービン員で、友人の椎原一曹に声を掛ける。
士官は変圧機は持ち込めるはずだから、恐らく下士官。
だから少し探りを入れてもらおうと、そう・・・踏んだんだが・・・
いきなり頭を下げられた。
 
 
 
 
 
「すまん!!」
その一言で全てが分かった。
・・・
 
 
 
 
 
 
「お前かぁぁぁぁぁぁ!」
 
 
 
 
「艦内の電圧は125V。一般家庭用の物じゃ飛ぶことくらい分かってるはずだろう」
「全く、出港前だから良かったものの、洋上じゃ大問題だぞ」
ため息混じりにいう菊池三佐。
だけど、ため息つきたいのはこっちですよ。
探りを入れてもらおうと声を掛けた人物が当人だなんて、誰が想像しますか。
「椎原一曹。別命あるまで待機だ」
 
 
「あ〜あ。不可抗力だって今更言っても信じてもらえないか」
割り当てられたベッドの上でゴロンと転がる椎原に
「艦長に、言ってみようか?」
「言ったってどうせ菊池三佐あたりにつぶされるのがオチさ。なぁ、お前は信じてくれるか?」
「内容による」
「冷てぇ奴だ」
「だが、信じないとは言ってない。聞いて、本当に不可抗力だと判断できるかどうか。だな」
 
 
 
 
不可抗力・・・だ。
「艦長に言ってくる。」
言って部屋を出る俺の後ろから、「おう。任せた」と言ってきた。
全く。
のんきなもんだ。
だが士官の肩章を付けてる以上、俺は奴の上官だ。
ま・・・
慣れてるさ。
こういうごたごたを解決するのも、仕事だからな。
 
 
 
 
 
 
一尉。入ります」
「来たか。」
梅津艦長は、椅子ごと振り返ると
「まぁ、ゆっくりしなさい」
「はい」
 
 
「うむ。理由はわかった。問題は副長たちが納得するか、だが」
「椎原一曹のドライヤーについては、補給科の方で預かります」
「うむ。まぁ、よかろう。特に重要事態があったわけでもなし、理由を聞いて完全な不可抗力だということが分かったんだ。椎原一曹にそう伝えてくれ。」
「は。では、失礼します」
 
 
 
 
 
「よかったな。待機命令は解除された」
「さっすが一尉。恩に着るぜ」
「その代わり、ドライヤーは没収だ。渡せ」
「はいよ」
 
 
 
 
 
まったく。
誰かが刺しかけて、そのまま放置されていた電源が偶然椎原が背伸びしたときにグサっと奥まで入って、それで作動した。
なんて。
そんな・・・もう脱力するしかないような理由で艦内を慌てさせたのか。
 
 
 
 
刺しかけたドライヤーを放置したのが誰だったのか、それは結局分からなかった。
そして問題のドライヤーは、今も備品庫の中に眠っている。
 
 
 
 
艦内電圧は125V
一般家庭用電化製品を使う際にはご注意を。
アトガキ
うん。
完全にネタだな・・・
そしてあまり面白くも何ともないSSになったが,ジパングで面白いというと・・・
あんまりないんだよな(消沈)
2017/07/16 加筆書式修正
管理人 芥屋 芥