それは、いきなり下りた許可だった。
「達する F作業許可」
艦内に響いた艦長の声。
途端、科員の表情が明るくなった。
「ヨッシャ!」と言って甲板に駆け出す者。
「俺苦手だからパス」と言って辞退する者。
士官・曹士ともどもそれぞれの反応を示す。
『艦橋 CIC 艦長、よろしんですか?』
そう確認取ったのは菊池だ。
「うむ。構わんだろう。」
そう言って椅子から立つ。
「そう硬く考えるなって、砲雷長。折角艦長が許可してくれたんだ。俺は行くぜ?」
そう言って艦橋から航海長が降りていった。
こういう事にかけては、大の・・・祭り好きなのだ。
Fox 作業
「しかし、こんなところに『いる』のかねぇ」
下を見ても、少し濁った水があるばかりでいるのかいないのか分からない。
だがもう甲板には道具を持った科員が既に位置を決めていた。
「よ、いそうか?」
「さっぱりですよ。」
そう言って肩をすくめるのは麻生先任だった。
「そうか。ま、これぞ正しく自給自足・・・だな、先任。」
「そうですね一尉。」
科員が竿をたらしている。
それを見て
「副長には悪いですが、たまにはこんな日もあっていいと思いますよ。」
と麻生が言う。
「ま、大漁とまではいかなくても、ある程度なら飯のタネにはなるからなぁ。それも考えて艦長が許可したんだろう。ってわけで、俺も釣るぜ?」
そう言ってが甲板に足を向けた。
 
「たまには、こうやってF作業をしてみてもいいだろう。それで気分転換になるのなら、私はそれを許可したいと思ったのだ。だめかな砲雷長。」
第二甲板で、F作業・・・基釣りを楽しんでいる科員に視線を向けて艦長が言う。
「いえ、周囲の監視を怠らなければ、いいかと思います。」
「ま、そんなに気を張っていては体が持たんよ。どれ、私もやろう」
と言って甲板へと下りる。
 
 
 
「どうかな」
その言葉に科員の動きが一瞬止まる。
「艦長・・・」
珍しいこともあるもんだ。
艦長自らが甲板に降りて、F作業に参加するとは。
「どうです?つれますか?」
「うむ・・・そこそこだな」
バケツの中には小魚が数匹。
この辺りでつれる魚といえば・・・何があるだろう。
そう思い、『それ』をよく探知する人間へと艦内電話を走らせる。
「ソーナー 艦のしたに魚群はないか?」
と、問い掛けてみた。
 
 
 
『艦首右側に魚群らしき影があります。』
との返事が返ってきた。
「ありがとう。お前等の飯、今度はずむわ。」
ソーナー員にそう言って、足を向ける。
 
 
 
 
 
 
その日全員にうなぎの蒲焼がご馳走になった。
それもまた、自然の恵み。
大事に頂かねばバチが当たるというもの。
それにしてもこのF作業 なにやらお後がよろしいようで。なによりです。
アトガキ
あくまで静かに。だってほら,公式業務じゃないしですし・・・
それに,マジで「イカ釣り舟」とかしてるなんて・・・護衛艦が・・・イカ釣り舟とかする・・・なんとも情けないやら,笑いがこみ上げてくるやら。
そんな作業がF作業
平和なもんです
2017/07/16 加筆書式修正
管理人 芥屋 芥