L U U W -Life unit under works-水面下の信頼-
その放送が流れた直後、医務室に飛び込んできた補給員が一人。
「あ、医務長。後で津田大尉にコーヒーか何か持って行ってくれないかって補給長が」
「私に?」
「えぇ。是非にって、そう言ってました」
「どういうこと?」と問いただすが、 伝令を伝えにきた補給員も詳しいことは聞いてないのだろう。
「さぁ」というばかりで、頭を捻っている。
桃井はとりあえず疑問を解消するため、もう一人の分隊長に直に問うことにした。
 
 
 
 
「なんで私なの?補給長。補給科の仕事でしょ?」
しかもこの時間の後なんて・・・厳戒態勢じゃない
「ほら、今朝戦闘配食だったから味気なかったでしょ?だから、医務長に頼んでるの」
「何よそれ。意味不明だわ」
「意味不明で結構です。」
一尉同士。いや四分隊の分隊長同士のやり取りに、他の連中はトバッチリを受けたくないためににコソコソと去っていく。
そして、一方的に話を切り上げたのはの方だった。
「んじゃ、医務長よろしく。・・・対水上戦闘用意!」
「ちょ・・・ちょっと?!」
片手を上げて去っていくに、桃井は叫んだあと
「しょーがないわねぇ」
と言いつつ脱力し、肩の力を落とした。
 
 
 
 
 
「補給長、いいんですか?医務長に頼んで」
心配な顔をしながら聞いてくるのは、士官室係の柳生だ。
「いいんだよ。多分あの人しか出来ない仕事だからな」
「は?」
食事を運ぶのは自分の仕事のハズ
そう思っていた柳生は納得がいかない顔をしていた。
だがの一言で固まった。
「お前だって、艦内で血を見るのはいやだろう?」
「え?」
「大丈夫。艦長には許可取ってあるから、心配するな」
 
 
 
ズゥゥゥン・・・
シースパロー発射の衝撃で艦が重く揺れる。

 
 
 
 
始まったな。
迎撃に成功すれば・・・
そこまで考えては首を横に振った。

 
 
 
 
MRBMすら、シュミレーションで迎撃成功をたたき出したことがあるあの砲雷長が、大和の『遅い』砲弾を外すわけがない。
先手を打っていて正解。というわけだ。
艦長、ありがとうございます。
 
 
 
 
しばらくして、艦内放送が流れた。
『全弾、迎撃に成功。各員、厳重に留意せよ』
『第一哨戒配備・第一直哨戒員残れ』
 
 
 
 
終わったようね。
艦長の放送が流れる中、とりあえず桃井は言われたとおりコーヒーを入れ持っていったのだが・・・
ドアを開けて凍りついた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
一尉、入ります」
「どうだね。津田大尉の様子は」
「はい。部屋に篭ったまま、出ようとしません。草加少佐とは大違いですね。 それと艦長。やはり短剣は取り上げるべきかと」
「最悪の事態も考えねばならんか」
「俺には、止める自信はありません。なんせ彼はこの時代の人間です。」
「ウム・・・医務長には、頼めないかな」
「医務長に?」
「よろしく頼むよ。補給長」
「了解しました。」
 
分かるもの同士。
だ。
言葉は最小限でいい。

 
 
 
 
最悪の事態になれば、恐らくこの艦に乗っているこの時代の人間は自決を選ぶ。
だがそんなことされたら、困るのはこっちだ。
『自衛艦内で人が死ぬ』
そのことがどれほど重いか。
 
 
 
 
 
だから、あんたには意地でも死んでもらっちゃ困るんだ。津田大尉
 
 
 
 
 
「死ねなかったこと、後悔してるのか?」
振り返り、の顔を真っ直ぐに見た津田の表情は、どこか悲しそうな、それでいて吹っ切れているような。
複雑な表情をしていた。
「男が弱いってな。そんなこと、何時の時代も変らない。ただ強がってるだけさ。」
入ってきたドアに背を預けて、は言う。
「女性は、強いですね」
「まぁな。あの強さには適わない」
「あの人に、コーヒーを頼んだのはあなただと伺いました。」
 
どっちが言いたいのか、ぼかした言い方だな。あるいはその両方・・・か
 
「あぁ。先手は打たしてもらったよ。津田大尉」
「じゃ、次は私の一手。ですね」
「あんたに持ち駒があるのか?」
「ありません」
ないのにどうやって打つつもりだ・・・
 
 
 
「とりあえず、あんたをここで死なせるわけにはいかないからな。止めてくれた桃井一尉に、感謝するんだな」
ドアを開けようとして、後ろから声が掛った。
 
 
 
 
「その下仕事をしたのは、あなただ。ありがとう」
アトガキ
ふう・・・もう,ジパネタ一直線!って感じになってきた。
止まれ〜止まってくれ頭の中よ・・・
2017/07/16 加筆書式修正
管理人 芥屋 芥