「……聞いても、いいですか?」
「何?」
全てが終わり、寝るまでの僅かな時間。
本当に時間が空いている時は『奴』がこの人の中からちゃんと居なくなっているかを確かめますけど、今は平日だしそんなこと出来ないから。
だから、一つ一つ確認していきます。
マルチタスクなようで、実はシングルタスクなんですよね。僕たちコンピューターって。
蒼焔、心影に立つ 番外
「本当に僕は、マスターの役に立ってるんですか?」
この人の『心』を知ったときから生まれた疑問。
「十分すぎるほど助かってるよ」
だけれどマスター。その答えは、少し違う気がします。何故なら僕
「でも僕、何もしてませんよ?」
していることと言ったら、眠る前にソッと肩に触れて確認することくらいですし。
アレ以来、この人にあまり触れてない。
そりゃ、誰も居ないところではソッと触れたりしますけど。
例えば台所で料理を手伝ってるときとか、二階で歌ったときの後片付けを手伝っている時とか。
でもそれらが役に立ってるとは、到底思えなくて。
だから、不安です。
だから今日も手を伸ばして、触れてみる。
だけど彼の体は僕の手が近づくとまだ小さく震えてしまい、まだまだ『奴』が居ることを教えてくれた。
残酷なまでに。
「そうやって、触ってくれるだけでも随分違うよ。自分で触ると嫌でも意識するからリハビリにならないし」
そう言って、ゴソリと体を動かしカイトに背中を向けてくる。
「ま、こうやって背中を預けられるだけでも随分進んでる。色々助かってるよ。ありがとう」
その声からは、本当に助かっているという気持ちが伝わってきて思わず布団の中で腕を伸ばして、の体をカイトは引き寄せた。
「ッ?!」
途端ビクリと震えた彼をカイトは更に力を込めることで抑え込む。
「だめ。震えちゃだめ、!」
連れて行かないで。
この人はもうお前のものじゃない。だからダメ!
泣きそうになる。何故ここまでこの人が傷つかなければならない?!
どうして!
「ダメだってばぁ」
いやだ。嫌だ。イヤだ。
一瞬で心がどこかに飛んでしまうを見るのは辛いと思う。
でも、どうしても、この人の中に『奴』がいるのは嫌だ。
 
 
 
 
気がつけば、の背中で顔をつけて泣いていました。
あぁ、どうして僕はこんなにも涙が出るんだろう。
「……大丈夫。驚いた……だけ」
少し荒くなった息を整えながら、は静かにカイトに告げる。
「カイト、ありがとう」
その言葉に、背中に額をくっ付けたままカイトが頷く。
「助かってる。本当だよ?」
背中に響く声が、好き。
「……うん」
だから彼を焼いて、その心から消してあげる。
この人の心に、誰も何も要らないでしょう?
この人の理性も、何もかもは、僕のもですから。
 
 
 
 
 
 
人と機械の交流の中で宿ったそれは、妬心という名の、蒼い焔(ほむら)
アトガキ
VOCALOID KAITO夢

おまけです。おまけ

2009/02/09
管理人 芥屋 芥