朝・・・六時。
に、起こされた。
「いつまで寝てるの?カイト。
 そんなんじゃ、置いてくよ」
と言うは既に着替えていて、出かける準備を整えて部屋のドアの向かって、もう歩いている。
その姿は、初めて見たジーンズにシャツという姿で、その上に少し見慣れない濃い緑のジャケットという、いつもから考えると至ってラフな格好

で、一方のカイトはと言うと、これまた・・・準備がまだだったりする訳で・・・
それにしても、そのプラチナの髪のことを昨日初めて知ったカイトとしては、確かに彼は『マスター』なのに、どこか見慣れない頭の色をしてる。

から、少し、緊張してる。
だけど、そんなことに頓着していないであろう
「服は今日はもうなんでもいいから、急いで」
とカイトを急がせる言葉に、結局いつもの白いコート姿でベッドから下りてドアの前で待つ彼の元へ走る。
「す・・・すみません・・・マスター」
謝ったカイトの言葉に、の目が少しだけ大きく開いて、次の瞬間には見慣れた、少し困ったようなのと笑顔が混じったいつもの表情に変わる。


「なんで謝るの?
 行くよ。時間が無い」
海神の背に乗って
車に乗って、移動していくけれど。
でもマスター・・・これって、本当に海に向かってるんですか?
なんだか、全然・・・街中っぽいところなんですけ・・・ど・・・?
そう疑問に思った時、耳が何かを拾う。
アレ?
なんか・・・変な音が外から響・・・いてる?
そう思って窓に手を当てて外を見ようとした丁度その時
「カイトは耳塞いでろ」
と、車を運転しながら言ってきたの方に視線を向けると、表情は少し真剣で、彼は言われるがままに耳を両手で塞いだその瞬間、轟音が辺り

一面に響き渡る。
 
 
 
な・・・何・・・この音・・・
 
 
 
ゴォォォ・・・ッ!という、轟音が響いて、そしてアッという間に遠くなっていく。
「マ・・・マスター!今の音は一体?!」
あんな・・・
あんな音・・・初めて聞いた。
あんな煩くて、騒がしい音は、今まで聴いたことが無い!
「珍しいな。この時間に上がるなんて・・・」
そんなことを、ポツリと呟いていて、カイトの問いには答えない。
「更にくるよ」
その言葉で、再び耳をカイトは塞ぐ。
途端鳴り響いた、まるで雷のような爆音に今度は体がビクッと大きく震えて、音の衝撃が去った後も小さな震えは止まらなかった。
「マ・・・マスター・・・あの・・・」
震えが止まらない。
何?アレ・・・
「何?」
『何?』じゃないですマスター。
「アレ、一体なんですか?」
あんな怖い音・・・知らない。
「あぁ。
 ただの18」
・・・
 ・・・
  ・・・
   ???
疑問が顔に出ていたのだろうか。
がカイトの表情を横目で見て、言葉を続ける。
「だから。
 今から、アレに乗るの。
 その後、海の方に出るの。
 おーけー?」
と。
「マスター・・・アレって・・・?」
「だから、今飛んでった戦闘機に乗って・・・海を見るのと、洋上訓練して、それで・・・」
「誰・・・が・・・乗るのですか?」
更に続きそうなの言葉を遮って、カイトが聞く。
「ん?
 俺と・・・後は、後ろに、お前」
ウ・・・ソ・・・
「何固まってるの?」
「え・・・だって・・・マスター・・・嘘ですよね」
「嘘じゃないよー
 上空からなら潮の心配もないし・・・まぁ、ちょっとばかりオイル臭くなるけど、でも、錆びるよりマシだろ?
 それに、もしかしたら向こうにいるお前の仲間とも演奏できるかもしれないし・・・」
「いや・・・そういうことじゃなくて!
 マスター・・・一体・・・何・・・モノ?」
分からない。
この人・・・何者?
 
 
 
 
 
コンコンッ
門の前に車が停まって、人が窓のところに近づいて来ると、がそのままドアを開けて、その人を何かを話し始めた。
とは言え、これ・・・英語?
『ようこそ大尉』
『どうも。
 入ってもいいか?』
『おっけ。
 ところで、隣の・・・ワォ。日本版の奴か。アイツが喜ぶ』
『彼は元気?』
『元気、元気。
 今日はあんたに会えるって教えたら、大喜びしてたぜ?』
『まぁた振り回されるのかなぁ。俺は』
『アイツに基本を教えたのはアンタだからなぁ。カーターよりもあんたに懐いてる』
『冗談はやめてくれ。
 日本語版の奴等で俺は手一杯だよ』
と言うと、肩をすくめてみせる。
・・・一体、何を話してるんだろう。
早くて、聞き取れない。
『今日の訓練じゃ負けないって、マイケルの奴息巻いてましたよ?』
『ほぉ』
『まぁ、俺としてはあんたがどこまスコア伸ばすのかの方に興味があるんですけどね』
『賭けてるのか?』
『当然』
『配当今いくらだ?』
『う〜ん・・・俺が知ったときは、7・3だったな。
 当然『3』が大尉』
『まぁ。せいぜい負けないようにするよ』
そう言うと、アクセルを踏んで、門の中へと車を滑り込ませていく。



「マ・・・マスター?」
「ん?」
「今の・・・何話していたんですか?」
「さぁ。なんだろう」
とはぐらかすように答えると、ハンドルを切って駐車場の中に車を入れて、ドアを開けて下りて
「しばらくそこで待ってて。
 直ぐ戻ってくるから」
と言って、足早にそこに建つ建物の中へと消えてしまう。
それにしてもマスターは一体・・・本当に何者なんだろう。
そんな疑問が解消されることなく、カイトはただ、彼が戻ってくるのを、待った。
 
 
 
 
 
 
 
 
ガタン・・・ゴトン・・・
海沿いを走るその電車の中で、カーキ色のジャケットを着て、大きなバッグを背負った青年が、揺れ動く窓の外を眺めている。
その耳には、何か音楽でも聞いているのだろうか。
イヤフォンが付けられていて、それに更に手を当てて、真剣に何かを聞いている。
そして、一言、呟いた。
「今日は3対3の模擬か。
 情報どおりだな」
と。
アトガキ
VOCALOID KAITO夢
・・・アトガキ,なし
2008/05/04
管理人 芥屋 芥