限・・・定・・・一人だけ?
え?
マスター・・・それは・・・一体どういうことですか?



の言葉に、カイトの動きが止まる。
海に行くのに、連れて行けるのは一人だけって・・・どういうことなんだろう・・・?
そんな疑問を丸々感じ取ったのか、が答える形で
「うん。
 だってアレには、三人も四人も乗れるスペース、無いし・・・」
そこで一度言葉を切ったは、そのまま腰を完全に床に落として、後ろに手をついてから、カイトに向かって
「その代わり、それまで少し仕事詰めるから、明日から全員パソコンの中だけど・・・いいか?」
と、聞いた。
海神の背に乗って
「「えぇぇ?!」」
話を聞いて、リンとレンが不満そうに抗議の声を上げる。
「マスター・・・ヒドィ・・・」
の大腿に顔を埋めて、ツインテールの緑の髪を床にたらしながら、ミクが泣きそうになりながら訴える。
「ごめんねミク。
 でも、そろそろ時期的にその予定が入ってきてるし・・・
 俺も、お前らにどう言おうか少し迷ってたから・・・さ」
「予定って?」
メイコが、冷蔵庫からワンカップを取り出しながら、に疑問を投げかける。
「ん?
 あー・・・うん。
 ちょっとした・・・ことなんだけど・・・ね」
言いにくそうに、珍しく言葉を詰らせて言うに対して、リンが
「マスター・・・もしかして、私達に言えないことなの?」
と、不満より好奇心が勝ったのだろうか。
さっきの不満そうな表情はどこかへ飛ばして、瞳を輝かせながら聞いてくる。
「いや・・・そういう訳じゃ・・・ないんだけどな・・・」
「マスタァ・・・アーヤーシーィ」
と、ミクが顔を上げて真っ直ぐにを下からジッと見上げて、言い募る。
そんなミクに、が慌てて否定するが・・・
「いや・・・怪しくない、怪しくないぞミク」
「益々怪しいよな・・・マスター」
と、今度はレンがリンとミクの援護に回ってしまい、収集つかない。
「「「マスター??」」」
左の下からミクに、正面からリンに、そして右側からレンがソファに手をついて、ズズイッと頬を膨らませながら顔を近づけてきて、そしてそんな三人に迫られて、座っているソファからの体が少しだけずり落ちる。
ズル・・・
「いや・・・あの・・・その・・・」


迫る妹弟(きょうだい)達に少し怯えたようなタジタジしたような、そんな彼の様子や表情を、少し離れたテーブルのところに座って酒を飲んでいるメイコが、その酒をテーブルに置いて、目の前に座るカイトに向かって、通信を飛ばしてきた。
『助けてあげないの?カイト』
『メイコこそ・・・』
『原因はあんたでしょうが』
どうやら、今回はカイトの希望が発端だということに気付いてるメイコが、キッパリと言い切る。
それに一瞬怯んだカイトだが、ここで隠し事をしても意味はないと判断して、素直にそれを認めて、通信を返す。
『・・・確かにそうだけど・・・でも、なんだか、焦ってるマスターも、いいなって・・・』
ソファで、ミクやリン、それにレンに三方向から迫られてタジタジになっている彼に対して、思わず本音が出る。
『カイト?』
そんな弟の反応に、疑問を持ったメイコが名前を呼ぶが、カイトはそれをスッと隠して
『ごめん・・・忘れて?』
と言った。
そんなカイトに対し、メイコがカラカウ様子で、顔は少しだけニヤケさせながら、
『珍しいわよねぇ・・・ファイルブロックしてるなんて』
と言って、更に『遊ぶ』
遊ばれていると分かっていても
『そ・・・そう?』
と、少し焦ってしまうのは、基本設定の性格ゆえか。
とは言え、彼女はそれ以上聞かず、流した。
『まぁ、いいけどさ。
 それにしても、焦ってるマスターって、確かにいいわよね』
『メイちゃんもそう思う?』
『うん。
 でも私は、ギター持ってるマスターが一番好きかな』
そう。
確かに俺たちの基本は、歌。
だけど・・・ごめんね、メイコ。
俺は、多分、違うんだ。


 
「ちょっと・・・泊まりで出かけなきゃダメなんだ・・・だから・・・」
途端響く、ハモリの声。
「「「「えぇぇぇぇえぇぇ?!」」」」
これには、に迫っていた三人に加え、メイコも参加する。
衝撃が抜けて、真っ先に聞いたのはリン。
「連れてってくれないの?」
元々近かった顔を、更に近づけてに迫るその表情は、少し怒ってる。
「リン・・・ちょっと・・・落ち着いて。
 事情が・・・色々複雑でね。
 ・・・家を少し空けなきゃいけなくて・・・
 その間はパソコンの電源とかも落すし・・・だから・・・
 それに色々あって・・・連れて行くのは、ちょっと厳しい・・・かも・・・」
「マジかよぉ」
連れては行けないというにレンが不満の声を洩らす。
「うん・・・ごめん・・・レン・・・」
「マスター・・・」
「ん?何?ミク」
「帰ってきますよね・・・」
下を向いた彼女が、泣きそうになりながら、に言う。
その表情に慌てた彼が
「帰ってくるから!・・・な?ミク・・・泣くなよ・・・」
感受性が豊かで、素直な彼女は直ぐに顔に出る。
だから、今はとても泣きそうな気持ちなのだろうことはすぐに伝わってくるから・・・少し・・・辛い。
「まぁ・・・仕方ないわね。
 マスターは私達とは違って、仕事があるわけだし・・・」
メイコが酒をテーブルに置き椅子から立ち上がってソファの、背もたれを挟んで丁度の後ろに行くと、そのままグイッとずり落ちたままだったの体を引っ張り上げ、笑顔全開で、言った。
「とりあえず、マスター? 帰ってきたら、思いっきり歌わせてくださいね?」
 
 
 
 
「ハ・・・ハイ・・・」
アトガキ
VOCALOID KAITO夢
メイコ姉さん,最強伝説・・・健在っす。
2008/04/28
管理人 芥屋 芥