VS病人・・・04 >手塚視点
「やっぱ、体って動かねぇもんだな。」
そう言って、 先輩は背伸びをした。
「どうして、さっきは居なくなったんです?。お陰で質問の嵐でしたよ。」
ラケットを先輩から返してもらいながら、大和先輩は言った。
「ん?ソイツは悪かったな。‥面倒くさかったんだよ。それに、オレ。今の3年生って知らないし。」
言われて、気付いた。
オレ達の代で、この先輩の事を知ってるのは、オレくらいなものだ。
ということに。
確かに噂はあった。
テニス部で、入院している先輩がいるという、噂が。
「中途半端に言うより、知らない方がいいこともある。裕大、なんで教えた?」
言って、大和先輩を睨んだ。
「なんでって。一人くらい知ってる人がいても構わないと思ったからですよ。」
それに笑顔で答える大和先輩。
「あっそ。で、手塚君・・・だったかな?お前、好きな数字はなんだ?」
いきなり言われたから、かなり驚いた。
「いや・・・特に好きな数字はありませんが‥」
そう否定したら、
「好きな色は?」
と、間髪入れずに聞いてきた。
「‥自分は、緑か青が好きですが・・・なにかあるんですか?」
「なる程ね。いや。ありがとう。」
そう言って、
?何言ってるんですか?」
と、大和先輩も疑問に思ってるようだった。
「ん?別に。聞いただけだから気にしない。」
そう言って、ネットを片付け始めた。
「‥自分がやります。」
このまま先輩達にやらせるわけにはいかない。
だけど・・・
「あぁ、気にすんな。使った人間が片づける、だろ?裕大。」
「えぇ。もたまには良いこと言うんですねぇ。」
「‥なんだよ、『たまには』って。」
「言葉どうり、たまにはですよ。」
「なんだよ。それじゃいつもろくな事しか言ってないみたいじゃないか。」
そう反論しながらも、手は止めない。
「だって の口から、最近ろくな事しか聞いてないですからねぇ。」
そう言いながら、結局2人で片してしまった。
何故、急に試合をするなんて言い出したのか。
それに・・・
先輩は‥その、体の方は大丈夫なんですか?」
まぁ、試合をするくらいだから、大丈夫とは思うが・・・
「あぁ、もう大丈夫。検査の方も異常はないみたいだし。じゃなかったら、試合なんてしなよ。」
「そうですよね。自分から言ってきたくせに、すっぽかしてしまうんですから。らしいと言えばらしいですけどね。」
「だーかーら。謝ったろうが。」
「冗談ですよ。それにしてもあの時、がいたら、一体どうなってたんでしょうね。」
途端、先輩の雰囲気が・・・変わった。
「裕大‥。オレはそんなに変わってないと思うよ。」
「・・・確かにそうかも知れません。悪かったですね。」
こんな風に謝る大和先輩も・・・初めて見た気がする。
「‥あの、先輩は、どうして‥その・・・」
オレがそう声をかけると、雰囲気が元に戻った。
「オレから言わなかった理由か?」
「・・・はい。どうして、教えてくれなかったのですか?」
確かに、大和先輩からは聞いていた。
だけど、この人から理由を聞きたかった。
何故・・・口止めしたのか。そして、何故黙っていたのか。
「なんでって、入院したのがお前ら今の3年が入ってくる二ヶ月前だったからな。それに体調の方も、どうなるか分かんなかった。
だったら面倒な事しないで、テニス部から居なくなった方がいい。そう判断したんだ。」
「・・・しまった。」
帰りの途中で、先輩が突然言った。
「どうしたんです?」
大和先輩がそう聞いた。
「番号浮かばない‥」
「・・・??」
「だって、今月ピンチなんだって。バアちゃんにこれ以上頭下げるわけにはいかないでしょ?だから。」
一体・・・なんの話だ?
「アレですか?」
「ビンゴ。」
「今からは無理なんですか?」
「だから、今から行ってもいいんだけどな。その『今』、勘が働かないってこと。・・・こう言うときは、買わないに限る。」
一体なんの話をしているのか・・・
「‥あっそうですか。」
半ばあきれてる大和先輩。
「大和先輩?何の話をしてるんです?」
「・・・言いますよ?」
と、許可を取る大和先輩。
「別に悪いことしてる気はないんでね、言っても構わないと思うけど・・・」
「って言うか、そこから欠如してますよ、?」
と、ジト目で先輩を見る大和先輩。
「だーかーら!やめろって、その顔は。苦手だから!!」
「何言ってるんですか。大検を受けようとしてる人が。‥そんな事に手を出していいんですかね?」
更にジト目で先輩を見た。
「・・・仕方ないだろうが。そういう家系なんだから。大体バアちゃんからしてパチプロなんだからよ‥」
「・・・パチプロ?」
思わず、口をはさんでしまった。
「そ。代々、賭博師の家系なんだ。」
「だからって、までなる必要はないような気がしますけどね?」
賭博って・・・まさか。
「好きなんだから止められないね。ま、親父を見てるからな。そこそこで止めるよ。」
「それ以上に、法律違反ではないんですか?」
「実際買うのは母さんだぞ?」
この・・・会話は・・・一体‥。
「一体、何を買うんですか?」
この質問は、間違いだったことを・・・
その後の答えを『聞くんじゃなかった』とすごく後悔した。
「ん?馬券」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・本気で言ってますか?
バス停で別れるとき、
「手塚。関東大会、がんばれよ。‥お前達なら大丈夫だと思うから。ま、根拠はないんけどな。じゃ!」
そう言って、先輩はバスに乗って帰っていった。
それからおもむろに大和先輩が口を開いた。
は『根拠はない』って言いましたが、彼の言葉はよく当たるんですよ。だから、大丈夫だと思います。関東大会。」
「はい。」
「それと、さっきは聞くのを忘れていたんですが。腕は、大丈夫ですか?」
そう聞いてきたから、
「はい。ようやく病院の方で許可が下りました。」
「そうですか。・・・それと、手塚君。二年前、僕が言った言葉を覚えてますか?」
忘れるわけがない。
「はい。」
「そうですか。それならいいんです。あ、バス来ましたね。」







あの時は、どこかはぐらかされた感があったが・・・
しかし・・・
今のオレの状態を考えると、あの2人には・・・どこか・・・不思議な力が働いていたとしか思えない。
そう思いながら、オレは宮崎の真っ青な空を見上げた。
アトガキ
しゅーーーりょーー。
うっわ。
なんちゅう終わり方しとんねん。
2017/07/17 書式修正
管理人 芥屋 芥