VS病人・・・02 >主人公視点
「裕大、退部届け持ってこい」
最初に言ったのはオレの方。
薄々ヤツも気付いてたみたいだけどな。
それから時間かけて説得されたけど、最後にはオレの方がキレた。
「バカ野郎。話がややこしくなるから、さっさと持って来い!!」
って。
ま、翌日から熱出したから、結局書けたのは6月入っていたように思う。
「裕大、オレが抜けた気分はどうだ?」
なんて冗談で言ってみた。
「そんなこと言わないでください。もう見舞いに来ませんよ?」
だって。
実際、ヤツはよく見舞いに来てくれた。
ま。それも学校と試合の合間を縫ってだからな。
って言うかヤツが部長だし・・・な。抜ける訳にはいかないし。
一年にはオレのことは伝えるなって言ってあったんだ。
ヤツらにとって、部長は裕大でいいと思うから。
って言うか、これはオレを交えて話し合った事だからな。
コレに関しては感謝し足りない程だ。
そんなこと、口が裂けても言えンけど‥
 
 
 
 
で、一方のオレはと言うと・・・
毎日、定期的にやってくる検診と薬の時間
それ以外はもうヒマヒマな時間だった。
だから、院内をうろうろしてただけ。
だってそうでしょ?
今まで運動部にいた人間が、いきなり絶対安静なんて出来ないって。
ま、自分の体の状態だけは今まで以上に分かるようになったかな?
その時に、ある病室をヒョイって覗いたのが運の始まりだった気がする。
今から思えば。
「暇なのか?少年」
部屋の中から声がかかって‥
「はい。そうっすね。」
と、点滴をつり下げてるあのカラカラの音を立てながら、入っていった。
「そんなに暇なら頭が死んでしまうよ。いい本を貸そうか。」
と、枕の下から取り出したのは、
「アインシュタインの相対論?」
思わずオレは声に出して題名を読んでしまった。
思えば、あれが新しい知識との出会いだった。
その出会いが無かったら、オレの頭は衰退する一方だったかも知れない。
始めは、その本の内容がさっぱりでも、慣れてくれば大体何が書いてあるのか位分かるようになってたんだ。

それが「元さん」との出会い。
吉元 大助:通称元さん
その人に色々な事を教わった。
競馬、競輪、競艇。パチンコ、パチスロ ect・・・
囲碁、将棋、ポーカー、チェスなんでもござれの人だった。
ま、多趣味って言うのかな?
それに工学にも通じてて‥
辞めよう。
話し出したら止まんなくなる。
ってな具合で、オレはその人んところに体調が良ければ入り浸っていた。
ま、そんな生活を2年してるとな?
最後には、
『やった!枠番もらい!!』っていう仲になるんだよ。
OK?
それにしても、オレが何故中学を卒業できたのか。
実は夏から秋にかけて、一度退院してるんだ。
あの時は体調が良くてさ。
だから一時帰宅を言い渡されたって訳。
それ以外にも、友人思いの同級生のお陰で、出されたプリントとかを解いては、先生に渡してもらってたからな。
人使いが荒いって言うな。
別に頼んでる訳じゃないんだ。
ただ、オレの事情ってモンをヤツらは知ってるからよ。
特に裕大な。
だから、だな。
今回の部長の件だって、
『一つ貸しですからね?』って言って来やがった。
「で、どうするんです?」
そう。
これからが問題なんだよ。
オレの答えは出てるんだけどな。ってオレ、言ってなかったな。
これからのこと、どうするのか。
「ん?大検受けてみようかなぁって考えてる。」
「大検?」
「そう。大検。大学検定。」
「どうしてです?」
「ん?だってな、今の中三と同じに高校1年生やるのってオレ、イヤだし。」
と言いますかね?これが本音だったりして・・・
「それと裕大。変わってないなぁ、その口調。同期にデスマスはないだろう」
「じゃぁ・・・どうして?」
ウッワァ、似合わねぇ。・・・ただ単にオレが慣れてないだけか?
「やっぱ、お前はそれでいけ。なんか裕大じゃない。」
「分かってるなら言わないでください。」
冗談めかして言って笑う。
オレ、お前のその笑顔は苦手だな。
有無を言わさないって言うか・・・迫力あんだよ。ソレ。
「ま、なんにせよ。病院で勉強してただけあるな」
と背伸びしながら言った。
最後の方なんか、中学レベルがバカらしくなってたからな。
それもこれも、元さんのお陰だ。
「‥勉強?してたんですか?」
今、思いッきし疑ったろ・・・
「してたの。言ってなかったか?何も競馬だけやってた訳じゃないんだぜ?あれは特別。G1って言ってな‥」
と関係ないことまで懇切丁寧に教えてみる。
「へぇ。ではキミは、そのG1と言う賞以外しないんですね?」
「そ。あれは特別なの。今度は皐月。やっぱ本命買いかね?」
オヤジの会話だな。まるで・・・
「やってみるか?」
冗談で誘ったのに・・・
「怒りますよ?」
と本気で言ってきた。
「で、話戻りますけど、実際 ってどの辺りまで理解してるんですか?」
教科書広げながら言った。
「一つ借りてるモノ返そうか?」
いきなり言ったオレの言葉に、珍しく詰まった。
「な・・・なにをです?」
「ん?一応カバーできるのは大学生レベルくらいじゃないか?」
「・・・そこまで行ってるんですか?」
ま、義務教育を卒業したら自由に学べるし。
それを言うと、
「で、そんな高等な知識と共に、競馬なんかが入ってるんですね?」
・・・そんなジト目で見るなよ。
「わかったよ、競馬はしない。」
競艇はいいんだな。よし!!!
そんなオレの心を読んだのか、
「賭け事、一切禁止です。」
だって。
全く・・・
「真面目にも程があるぞ裕大。」
とか何とか反論したけど、無理、却下された。
トホホ・・・・・・・・・・・・・・・
誰かこの真面目君を、ちょっとは不真面目にさせられるヤツ、友達にしよう。
アトガキ
無理ですね。
大和はあの『大まじめ』手塚君の先輩ですよ?
絶・対・無・理。
って言うか主人公が大和に逆らえないのか,大和が主人公に甘いのか分からなくなってきました。
ま,この際どっちでもいいですね。
2017/07/17 書式修正
管理人 芥屋 芥