VS病人・・・
キミが入ってくる少しで前まで、部長は・・・彼だったんですよ。




彼がいれば、少しは話が違っていたかもしれない。
だけども現実は、どうしようもなく進んでいって。
だから僕は・・・キミの退部だけはどうしても避けたかったんです。





「手塚君、キミには言っておきたいことがあるんですが‥」
そう言って彼を連れて来たのは病院。
、元気ですか?」
裕大は、寝ている彼に声を掛ける。
今にも眼を覚ましそうなのに、一向に目を開ける気配がない。
でも、それはいつものこと。
「あの、部長。この人は?」
 
 
 
いきなり連れてきて、寝たままの人物に引き合わされて、混乱した風な手塚。
「う〜んと、なんて説明したらいいでしょうか。彼はと言って、部長だった人です」
側にあったイスに座りながら、答えた。
「部長だった?・・・では、先輩の先輩ですか?」
「いや、同期ですよ。正確には今年の部長をやるはずだった人。と言えばいいんでしょうかね。」
裕大自身、うまく説明できないでいる。
それは、あまりにも突然やってきたのだから。
最初は単に疲労だと思っていたし、彼も『この頃疲れが溜まってさ』なんて冗談めかして言っていたのに。
あっという間に体調が悪くなって、学校で倒れた後そのまま入院を言い渡されたのだ。
医者に、
「なんでこんなになるまで放っておいた!!」
と、怒鳴られていた。
それからしばらくは元気だったのに・・・
3月に入ってから体調が悪化して、今は目を覚まさない状態だ。
「一年生の前では、皆気にしないようにはしてるんですけどね。」
それでも、それぞれ現実を受け入れるのには時間が掛かかる。
そのイライラが出たのが今回の事件なのだろう。
と、そう大和は踏んでいた。
「だけど、キミには知っておいて欲しかったんです。内緒ですよ?」
そう言って笑った。
「大和、アイツ起きたそうじゃないの」
よく大和が見舞いに行くことを、2・3年は知っていた。
「じゃ、もうすぐ退院っすか??」
先輩か。会ってないなぁ。」
「会いに行けばいいだろ?」
「遠いっすよ。」
「部長、どうなんすか?先輩もう退院なんすか?」
だけどそれには首を横に振った。
「まだいろいろあるらしいですよ。それにもう顔を出さないって言ってましたし」
「マジっすか?」
「それって・・・」
「そうです。もう退部届けもらってしまいました」
取り出したるは天下?の退部届け。
「間違いない。ヤツの字だ。」
納得するように言った。だけどそこで話は中断した。
一年の前では話さない。
それが2・3年生、暗黙の了解だからだ。
「もう少ししたら、12月のランキング戦ですね。がんばって下さいね。手塚君」
三年の引退が決まっている11月。
高校受験も追い込みである。
「大和先輩、あの人は・・・」
言いかけた手塚を大和は止めた。
「とっくに退部してますよ。大分引き留めたのですけど。言い出したら聞かない人ですからね」
あの、寝ている所しか見たことがない、その先輩。
夏に一度退院したらしいと言う話を、先輩達が話しているのを聞いたきりだ。
だけど、また容態が悪化したらしく今度は面会謝絶だそうだ。
「だな。言い出したら聞かないな。アイツは」
しみじみ言うのは副部長。
「なんだか、こう言っては何ですが・・・」
言いにくそうに言う手塚を、
「だから言ったでしょ?僕は部長としては大したことはできないと」
「でもお前なりに頑張った方だと思うよ。に比べたら十分部長らしかったよ。」
「そうですかね?」
なんて言いながらも、問題を解く手は止まっていない。
「それでも、全国大会。行きたかったですねぇ。」
しみじみと言う裕大に、ため息をついて返したのは副部長。
「それを言うな大和。悲しくなるから・・・」
「手塚君。来年か、再来年。頼みましたよ?」
「オイオイ、いいのか?今からプレッシャーなんか掛けてよ。」
「構わないでしょう。だってもう頼んでますから。」
「何をだ?」
「内緒です。ね?手塚君?」
言ってニッコリと笑った。
その有無を言わさない微笑に手塚はただ、「・・・はい」と言うしかなかった。
そんなことを言いながら、彼らの受験勉強は続いた。
 
 
 
--ここから、大和視点--
結局、の病気が完治したのは僕が高二になった時だった。
四月に入って、突然電話が鳴った。色々あって気付かなかったけれど。
『オーイ、裕大?これお前の番号だろ?』
そう言うメッセージが入っていた。
忘れる訳がない。彼の声。
何ヶ月振りなんだろう。
折り返し電話をして話を聞くと、どうやら来週退院らしい。
「来ないか?」
そう聞かれたから、向かったのに・・・
病室から聞こえてくるこの音と声は一体・・・
「やった。枠番もらい!!」
「ったく、。お前強いな。」
「かぁぁ、一番人気来ると思ったんだがなぁ」
そう言ってガリガリと頭をかきながら言った小父さんに
「甘いっすね。桜花はまず一番来ないッスよ」
と言っていた。
「お前それで馬番も買ってるだろ。ったくなんで分かったんだ。予知か?」
また別の小父さんが彼の頭を小突いている。
「まさか。勘っすよ」
「でも今回儂は単勝で買ってるからいいやね。」
「オイオイ、元さんまで。今回オレの一人負けかよ」
?‥何してるんですか?」
「おう、裕大。今回はオレの馬番、枠番一人勝ち。」
はっきり言って、言ってる意味が分からない。
「だから・・・なにしてるんですか?」
それに答えたのは、僕をここに連れて来てくれた看護士さんだった。
「競馬です。ったく何度言えば気が済むんですか?未成年に競馬を教えないでください!!」
そう思いっきり叫んだ。しかも、後半は僕に言ってない。
「それは違うな、原田さん。こいつが勝手に覚えたんだ」
そう言ったのは、先ほど『元さん』と呼ばれた人だ。
「そうそう。やることないから、勝手に覚えたんですよね。それに、同じ部屋にした病院も悪い思うんすけど?」
それに便乗した
看護士さんはそれで黙った。
「わかりました。じゃ今度から別室で。」
「って言うかもう遅いよ。だってオレ来週退院でしょ?」
そう言ってニヤリと笑った。

アトガキ
こんなんでいいのか?
競馬に手を出す17才,もとい病人。
って言うかシリアスは何処行ったぁぁぁ????(家探)
元気になれば主人公ってこんな感じ。
勝手に動きすぎ。ちっとは言うこと聞いてちょ?
競馬やらす気なかったのにぃぃ(泣)
本当は麻雀が良かったんだけど,芥はよく知らないので競馬になった。(十分悪いわぁ!!)
看護士の原田さんはこの回だけではなく,ちょく×2出てくると思います。

最後に 競馬は未成年・学生がやってはいけません。

2017/07/17 書式修正
管理人 芥屋 芥