伝言
あんなに元気だったが死んだ。
後から知ったことだけど、引越しで転校っていうのは真っ赤な嘘だったらしい。
あれが最後の手紙になるなんて、思いもしなかった。
気が付けばそこに、自然に足が向いていた。
全て終わったあと・・・だった。
のおばさんは、まるでそうするのが当たり前なのかの様に、訪れたオレ達に頭を下げた。
「に会いに来て頂いて、ありがとうございます。」
弱々しいその姿は、半年前を学校に迎えに来たときと全く違う印象を受けた。
「ある程度、覚悟はしていたんです。ギリギリまで中学生活を楽しみたいっていうのが、の願いでしたから。」
覚悟をしていたとはいえ、そのあまりにもやつれた姿に、その悲しみの深さが何となく分かるような気がした。
「君は、一体なんの病気だったのですか?」
聞くべきじゃなかったかもしれない。
だが、聞いておきたかった。
どうしても言ってくれなかった、彼の病気。
「から、聞いてないのですか?」
意外そうに驚くおばさんに、俺たちは顔を見合わせることしか出来なかった。
「あのコ、自分で言うからって言ったのに・・・やっぱり言えなかったのね。」
懐かしそうに目を細めて話すおばさんに、少し半年前の面影が宿る。
一呼吸おいてから、手を膝の上でギュッと握り締めながら、
「骨肉腫っていう病気なの。骨にできるガンね。今の医療でも、完治は難しい病気・・・」
それは、なんでも男、とりわけ十代の少年がかかりやすい病気なのだそうだ。
そして、それは一度なると二十歳まで生きられる確率は・・・
「10%あるかないか。実例があるみたいだから、決して0%じゃないのよ?だけど、やっぱり早くに進行して・・・死んでしまう方が多いみたい」
そんな・・・
車椅子で転校してきて、最初は戸惑ったけど、明るくて・・・あんなに笑って過ごした日々。
色んな勝負をして、オレがに勝ちつづけていたこと。
それは・・・
『ちくしょう!なんでテニスゲームだけお前に負けるんだよ!』と、悔しそうに話すを、今でも思い出せる。
その裏で、そんな重い病気を抱えてた?
「学校のこと、すごく楽しそうに話すのよ。病気のことなんか忘れられ位楽しいんだって。毎日そう言ってた。」
自分に、カウントダウンが迫ってることを、知っていた。
知っていて・・・
毎日、いろんな勝負事(ゲーム)を・・・
「越前?」
カチローが、ボーっとしてたんだろうオレに声を掛けた。
その時、おばさんが驚いたように顔を上げる。
「越前・・・君?」
「ハイ。そう・・・ですけど・・・」
「から、『越前君』へ伝言預かってるの。確か・・・」
そう言っておばさんは立ち上がり、棚の引出しの中を探し始めた。
「あった」と小さくいってリョーマに差し出したのは白い封筒。
「が、最後に書いたあなた宛ての手紙。最後の方は意識がほとんどなかったから、読めるかどうか分からないけど、どうしても渡してくれって。」
「あのコの最期の言葉・・・『生きたい』。そう言ってあのコは、死んでいきました」
これ読んでるってことは、俺はもういないかな。
よ!
未来の越前へ。過去の人間からの手紙
う〜ん。最期に・・・なるんだろうなぁ。
実は俺随分ヤバイです!
何がって?
あー結局、言う勇気なかったなぁ、生きてる頃は!
でも、死んでから渡されるこの手紙には何故か書けるんだよなー
んとな?
耳カッポジッテよーく聞けよ?てか見てくれ!
骨肉腫!
骨ガンでっす!
うん。
まーなんだな。
実はもう腰から上辺りに転移してんじゃないかっていうのが医者の見解で、実は俺もそう思ってます。
だからもう長くないだろうって。
いや〜もうね。
随分越前には迷惑かけたかな?って。
毎日毎日無理に勝負事持ちかけてさ。
いや〜もう、ね。
悪かったなぁって思うよ?
でも、俺的には随分楽しい毎日でした!
ま、最期に手紙書いたのは
『ThankYOU!』と言いたかったからで、ホントありがとうな。
感謝してもし足りないぜ?
といっても、俺からはな〜んにも出来無いけどな。っはっはっはっはぁ
んじゃ・・・半年だったけど、一生分の楽しさを味わえたこと、感謝する!
P.S
もし将来お前が結婚したら、墓にでも報告くれや!
待ってるZE!
アトガキ
2017/07/17 書式修正
管理人 芥屋 芥