選択の岐路
何気ないメールのやり取りが、こんなにうれしいなんて・・・
っていうか、幸村の奴病院じゃ携帯電話禁止のはずなのに
ということは抜け出してるなぁ
と思いながら俺は送信のボタンを押した。
「、先生が呼んでるぞ。」
げ
真田。
「わかった。今行くから。」
俺はこいつ苦手というより嫌いだと思う。
何せ・・・
「、いくら幸村の言ったこととはいえ、いい加減テニス部に顔を出せ。」
と、毎度のように小言を言うからだ。
「イヤだね。俺の想い人の世話だけで十分手一杯だから〜。な〜んてな。今日は顔出すさ。」
「・・・わかった。」
時計を見ると昼休みが終わる直前だったから。
急いで職員室に向かった。
って、わざわざ俺を呼びに屋上まで来たのか真田は・・・
ポーンポーン・・・
ボールが目の前を行ったり来たり。
忙しいことで。
ベンチでボケーっとしていると赤也が声を掛けてきた。
「先輩、打ちませんか?」
って・・・オイコラァ!
「何にもない俺に打ちませんか?ってなぁ・・・」
渋った俺に対して、後押しの声が掛った。
「いいじゃないですか?君。一度君のテニスというものを拝見したいものです。」
柳生・・・
俺は精市としかテニスはやらねぇって・・・
「まぁいいか。柳生、ラケット借りるぞ。」
後押ししたのは柳生だからな。その責任はラケットを貸すってことでチャラにしよう。
それが通じたのか、「どうぞ。使ってください」と、紳士ならではの態度で貸してくれた。
「お?っちがラケット持ってる。珍しか」
仁王がすれ違い様そういった。
「おう。赤也に打たないか?って言われたからな」
「へぇ。」
そう言ってニヤリと笑ってベンチに座った。
「どんなテニスだ?幸村しか知らないんだろ?」
「あぁ。」
「俺も、見たことはない。」
ギャラリーが集まってきたし・・・
開始20分までが勝負だ。
それ以上は精市から止められてる。っていうより、体が保たねぇ。
俺は携帯の目覚まし機能を利用して、時間をセットした。
なにがなんでも止められるように。
「赤也、20分したら俺辞めるからな。」
と、そう宣言して・・・
「ど、どういうことっすか?」
「いいから・・・」
納得してない顔の赤也に対して申し訳ないと思いながら・・・サーブを打った。
「パワー型・・・だったんすね」
バテタ・・・
正直疲れた。
そういった赤也に対して何も返答できないくらい疲れている。
結局、試合形式と化した自称「打ち合い」は、ノーカウントとなった。
「いいデータが集まったよ。」
「なんであんな細腕で桑原先輩並の力出るんスかねぇ・・・」
「俺並って・・・」
俺が何もいえないことをいい事に好き勝手なことを言う。
貴様ら、後で覚えてろ・・・
「練習を再開する」
頃合を見計らって真田が言った。
その際、ギロっと睨まれたが・・・
「、残れ。」
帰り際、真田にそう言われて現在にいたる。
っていうか、雰囲気重!
「お前が部長補佐としてテニス部に関わっている経緯は知っているが、だからと言ってサボっていいわけではない。」
それって・・・
「副部長のお前の補佐もしろってこと?」
実際俺の位置というか、立場が微妙なことは自分でも分かってる。
だけど精市がいたから俺はテニス部に関わっただけで、居なかったら恐らく一生関わってないだろうなぁと今でも思う。
「正式に入部したらどうだ、と言っている。」
・・・
「イヤだ。」
そういった瞬間、真田の目が・・・
わっかり易すぎだよ真田
「今更ってのもあるし、もう十分なんじゃない?俺はロクにテニス出来ない人間だし。」
「基礎をやり込めば体はついてくる。」
やけに絡むなぁ・・・
「なぁ、幸村に何か言われてるの?俺のこと」
そう聞くと、真田はとても言い難そうにいった。
「お前には、まともな選手になってもらいたいと、そう言われた。」
・・・はぁ?
「でも俺そんなこと一言も聞いてないけど・・・」
「直接言うような奴じゃない。それはお前のほうがよく分かってるはずだ。」
また睨まれた・・・
そういやぁ最近精市はテニスのことよく聞いてきたなぁ
運動してるのか、とかテニス部に顔出してる?とか・・・
まさか、伏線がそんなところにあったなんて!
「ま、幸村の思いだ。どう受け取るかは、お前次第だ。」
アトガキ
2017/07/17 書式修正
管理人 芥屋 芥