京都 夏の話
「で、なんで辞めたンや。」
本来ならここにはいないはずの人物に、忍足は声をかけた。
その声は、ずい分不機嫌そうである。
彼が小学校から帰って来ると、
「お?お帰り、侑士君。なんや。また背ぇ伸びたんやんなぁ」
と、男性にしてはかなり高い部類に入る声が向かえたのだ。
その時の彼の第一声は・・・
「な・・・・・・なんでおるねん?!!」
だった。
「なぁ。兄ちゃん。なんで辞めたンや?」
さっきからそればかり聞いてくる。
「・・・ん?だってな、やりたいこと見つけたからやで。」
「答えになっとらせんワ。」
ジト目で返す。
「それに。人ん家(ち)におる時くらい、その暑苦しいサングラス外すさんね。」
「なんや。暑苦しいか?」
「見てるだけでイヤァなってくる。それに、『こーきょーマナー』ってやつやで」
その言葉に・・・
「よく知ってるね、そんな言葉・・・」
すごく驚いた様に言った。
「ジョーシキや」
「ったく今時のガキは・・・」
頭を掻きながら言った。
「さっさとする。取ってまうで。」
言って忍足はのそれを無理矢理?外した。
一瞬いきなり入ってきた大量の光に目を閉じた後、ゆっくりと開けたその瞳の色。
ホントに『東洋の人か?』と誰もが疑う色をしているからだ。
「相変わらずメチャメチャ綺麗やン。その目。」
ニヤリとしながら言った。
は大きなため息をつくが、取られたサングラスはどうやら返してもらえそうにない。
「で、なんで辞めたんや?」
結局、最初の質問に戻ってしまった。
「だから。な?言うたやろ?やりたいこと見つけたって」
「なんやぁ。あれだけテニス一本やったやん。」
そう、今までは。(少なくとの忍足の知る範囲では・・・)
「まーな。オレな?来年から教職取ろうかなってな。考えとるンや。」
「なんや、キョーショクって。」
聞き慣れない言葉に、つい聞き返してしまった。
「ん?『先生』のことや。」
言うと、忍足は大爆笑した。
「・・・・・・オイ。」
声をかけるが止まらない。
「侑士?笑いすぎ。」
だけど、それは更に彼の笑いを誘ったようだ。
「コノヤロウ!」
止まらない忍足の笑いに、ついにはキレた!!
もう、最後はプロレスごっこと化していたのだから。
だけど、先に『まいった』を言ったのはの方。
「・・・・・・疲れた‥」
兄ちゃんが‥先生?・・・し‥信じられへん!」
「まぁだ言うか!こんガキ!!」
第2R開始である。
結局、2人は夕方近くまで居間のど真ん中で爆睡していた。






コートで、2人はテニスをしている。
「やっぱ強いわ。」
言いながらコートを出る。
結局、左でラケットを握ってもらえなかった。
「いい加減、手加減するの止めてくれへんやろか。モノごっつぅむかつくんやけど‥」
休憩がてらジュースを買って、飲んでいる。
「イ・ヤ・だ・ね。で、明日から祇園さんやねぇ、侑。行こか?」
「ん?明日は友達と行くんや。悪かったな。」
言って、彼はコートにを誘う。
「それより!早う来ぃや。今日こそ左に持ち替えさせたる。」
「それこそ無理な相談や。」
『ヤレヤレ』といった感じで、は飲みかけの缶を置いて、コートに向かう。
結局勝ったのは、
「でも、侑ってシングルよりダブルスの方が合ってる気がすんだけどな。」
帰りに、がポツリと言った。
「なんや、急に・・・」
「ん?だってな、結構侑士は視野広いと思うから。ダブルス、合いそうやないか?」
「そんなん、いきなり言わんでよ。」
「でもなぁ・・・合いそうな気はするんやで。・・・・・・・気ぃだけな。」
そう言うの顔は、どこか寂しそうに忍足には感じたが、あえて気付かない振りをして明るく言った。
「でもな、やったコト無いからなぁ。それに相手もおらんし。」
そう言って頭を掻く。
「・・・おるやん。」
と、どこか心外そうに言った
「どこに?」
「お前、‥オレがダブルス出来んと思とるやろ。」
「うん」
思いっきり頷いた忍足である。
「お前なぁ、オレ後衛も前衛も出来るんやで。」
やっと口を開いたの声は、どこか疲れていた。
「‥信じられへんコト『パート2』や。あんだけコート中動いててダブルス出来るなんて、誰も思わんへんて。」
「まぁ‥そうかもな。で、今度一回やってみるか?」
「・・・考えとく」
アトガキ
う〜ん,そうか。
忍足君のダブルスは先生が関係していた??・・・かも・・・
ま,これはあくまで夢のお話。
でも,10才の忍足と居間で雑魚寝かぁ。いいよなぁ・・・
2017/07/17 書式修正
管理人 芥屋 芥