双想歌
09.居酒屋と二日酔いの日々
なんだか最近『いやぁ』な予感がするんですよ。
そう、なんて言うんでしょうか。こういうの。
あえて言うならば、そう・・・
良くない予感・・・とでも言うんでしょうか。
浦原隊長が今日ニヤニヤしながら研究室に来て、私の肩をポンッて叩いたんです。
それだけでも、もうなんか『今日はおかしい』と感じたのに、私の周りの空気が冷たくなったり熱くなったりで、どうも周りの様子が変なんです。
それに、今日は隊長の呼び出しをよく受けました。
普段なら自分の研究室に篭って出てこない隊長なのですが・・・
雑用ならば他にも頼める人がいるはずなのに、何故か今日に限っては私を集中的に呼び出して十二番隊舎を口実のある追い出しというか、なんというか・・・を食らってしまいました。
「瑞橋、顔の色が優れませんよ?どうしたんです?」
なんて、ニヤニヤ顔のまま隊長に言われたときは・・・
『それは、あなたが俺を呼び出すからですよぉ!』って思いましたけど、でもそんなこと言える訳ないじゃないですか。
だから
「ちょ・・・ちょっと寝不足なので・・・」
と言って誤魔化しました。
でも、ホントに・・・今日はなんだったんだろう・・・
 
 
 
 
 
そんな日が続いたある日のことでした。
研究室に向かおうとする私の後ろから、いつの間に現れたのか後ろから襟首を掴んで放さない冷たすぎる感もある友人の霊圧を感じました。
そして、とても普段からは聞きなれない声音で
「雲〜?ちょぉぉっと付き合え・・・な??」
と言ってきたのです。
彼は、この前八番隊の十席から八席に上がった親友の
・・・」
その霊圧の冷たさから、かなり怒ってることは予想できましたけど・・・私、何かしましたっけ?
しかもその肩にヒョコリと顔を出した子供を、私は不思議に思いました。
そして、何気なく質問をしてしまったのです。
「ねぇ、その子・・・君の子?」
と・・・
どうやら更に霊圧の冷たさが増したような気がしました。
 
その後居酒屋に連れ出された後のことは、よく覚えていません。
 
 
 
 
 
 
 
 
「あらあら、こんなにヘロヘロにしたら明日の研究に差し支えるじゃないですか。」
という喜助の言葉を受けて
「いいんだよ。人を散々振り回しておいてその自覚が全くなかったんだ。これ位は『とーぜん』だ。
 だけどま、なんであんな事言っちまったのか、大体分かったからこの辺りで勘弁しといてやるってところだな。」
と冗談めかして言って
「ま、人の噂もなんとやらって言うし、このまま収縮してくれりゃぁ、俺はもう何もねぇよ」
と言いながら、椅子に体重を掛けて両腕を上にあげて背中を伸ばした。
喜助はの隣、雲とは反対側の隣の席に座りながら
サンは、何だかんだで甘いですよねぇ」
と言った。
「甘い?俺はこれくらいで良いって思ったんだけどなぁ。
 そんなに不満なら、後はお前に任せるよ。なぁ、チビ」
そう言って隣に座った浦原を見て、そして背中にいるチビを見た。
「あらあら、ソレ、まだ持ってたんですか?」
と視線がちょっと冷たくなりながら、浦原が聞く。
「それってなぁヒドイぞ喜助。コイツにはちゃんと『チビ』っていう名前を付けたんだ。
 それに『意思ある』ものを『ソレ』呼ばわりすんな」
前半の口調と後半のそれとでは全く温度が違う言い方をした。
「何言ってんですか。それは、ワタシにとっては『ソレ』ですよ」
「そりゃぁなぁ、お前はコイツの創造主だからな。でも俺にとっちゃ違うってだけさ。
 あぁ大将、酒頂戴」
と、更に酒を注文した。
こう言うときは、彼からの『この話題は終わり』という合図だということを長年の経験で分かってる浦原が
「さてと、サンが瑞橋に何もしないなら、私が代わりに・・・」
と、それに乗る形で冗談半分本気半分に言った。
「喜助。あんまいじめてやるなよ」
呆れ気味に言うに対して、浦原はどこか楽しげだ。
「いじめるだなんて、トンデモない。ただ彼の言葉が一人歩きしてそちらの隊長さんのみならず、ワタシまで振り回されちゃいましたから・・・
 ねぇ、サン?」
と、最後はニヤニヤしながら隣に居る男の名前を言った。
そこへ
「ホイ、お酒」
と、絶妙な間合いで酒をの前に差し出す大将に「お、ありがとよ」と返すと、
「で、お前。なぁに企んでる」
いきなり切り込んできたから、浦原が
「別に。ナ〜ンモ企んでませんよ。ただ、彼はちょっと酒に弱いみたいですから・・・ね」
とニッコリしながら言い放った。
ま・・・さ・・・か・・・
「お前、自分の部下に何仕込んだ」
「さぁ、ワタシは何もやってませんよ?」
「嘘をこくな、嘘を。
 大体最初からおかしいとは思ってたんだ。いつもはあんな量で酔わないはずの雲が銚子二杯で酔いつぶれるなんて有りえねぇってな。
 吐け喜助。お前、自分の部下に何仕込んだ?!」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
どうして、真っ直ぐに家に帰れないのか凄く不思議です。
ここ最近ずっと、が居酒屋に連れて行ってくれた次の日から、ずっとです。
ずっと私は、研究が終わった後真っ直ぐ家に帰れず、居酒屋に必ず立ち寄るようになりました。
どうしてかは、分かりません。
ですが、必ずと言っていい程、気が付けば酒を飲んでいるのです。
お陰で最近は二日酔いが続いています。
これは、果たしてどういうことなんでしょうか・・・
とても不思議です。

 
 
 
 
 
「オイ、喜助。自分の部下を薬の実験体にするんじゃねぇよ・・・」
と、瑞橋が暖簾をくぐる姿をなんだか可哀想だと思ってるのだろう声音でが言う。
「何言ってるんですか。あれくらいの罰は必要ですよ」
「ったくお前あの薬、俺に盛るつもりだったんだろう?」
とジト目でが浦原を見ると
「アラ、わかっちゃいました?」
「まぁいいさ。さてっと、二日酔いの雲を助けに行きますか、なぁチビ」
最後の言葉に浦原が
「あらら、ワタシじゃないんですか?」
と聞いてきた。
「何言ってんだ。お前は勝手について来るんだろうが。だったら、言う必要ないだろう?」
と言うと、スッとその手を差し出してきて、握り返した浦原の手をグイっと引っ張って、触れるだけのキスをした。
アトガキ
ギャグちっくだけど,最後は甘い?
とりあえず,一部は終わりです。シリアスになりきれないのは,人間界主の性格の為・・・です。
シリアスだとトコトンシリアスなくせに・・・イイ性格してます。人間界主って。
2007/04/07
管理人 芥屋 芥