双想歌
07.出所は何処だ?!
「で? なんで喜助にそう言った?」
翌朝アイツよりも早く起きて、朝一で真子を捕まえた。
「なんやぁ、。俺のこと疑ってるんかいな」
「疑ってるも何もねぇだろうが。俺は、喜助がお前に聞いたって言ったからっ!」
「ちゃうちゃう。俺もな、ひよ里から聞いたんやわ。」
「はぁ!?」
「じゃ・・・その噂の出所て・・・」
と、すぐさま彼女のところに向かおうとするに、後ろから真子の声が掛った。
「あぁ、ひよ里とちゃうで?っていうか、ひよ里も誰かから聞いたって言ってたから・・・
 もう、噂が一人歩きしとるんとちゃうか?」
と・・・
なんだよそれ。
じゃ、何か?
俺は・・・俺は・・・そんな、どこから出たかも分からない、そんな噂に振り回されたのか?
あ・・・振り回されてるといえば、喜助も同じか。
んでもって、トバッチリ食ったんだよな・・・俺・・・
まぁいい。
兎に角その出所探ってやろう。
そう思ってが再度真子から背を向けたときだった。
「なぁ、ソレ・・・お前の子供か?」
と、肩にのる「ソイツ」を指さしてそう言った。
 
 
「誰が父親だぁぁぁ!」
バキッ・・・
 
 
 
 
 
 
 
「うっ・・や・・・るやん。流石・・・・・・」
と、うめく真子には構わずに、はそこから一瞬で姿を消すと、その噂の出所について探りを入れるために動き出した。
ったく。
コイツが俺のガキだって?
まぁ、そりゃ・・・コイツは俺のガキ時代の姿に似せて作ったとは、喜助の野郎から聞いたけどな。
そう言えば俺、コイツに名前つけてなかったな。
いつまでも「コイツ」って呼ぶわけにもいかねぇし・・・サテ、どうするか・・・
そう考えて、移動してきた隊舎の屋根の上でしばらく考えてみた。
だが、思い浮かばない。
なので・・・
「よし、お前の名前はチビだ。」
と肩に乗ってるチビを見る。
が笑うと、そいつは与えられた少ない感情を総動員したのか、一生懸命笑おうとしていた。
「いいよ。無理に笑おうとすると反って顔が強張っちまうぞ?
 笑いってのはな、自然と生まれるもんなんだ。だから、無理して笑うな」
な?
と言って、頭を撫でる。
本体はアメーバ状のはずなのに触れた髪はサラッとしてて、作った野郎の技術だけは本当に(無駄に)高いことを教えてくれる。
真子の話を信用するなら、噂が流れてそれほど時間が経ってないはずなのに、自分の研究もあるハズなのに・・・その合間でコイツを作るってどういう生活してんだよ、あいつは・・・
と、チビの創造者たる喜助の生活を少しだけ考えて、心底理解不能だという結論に至り、ため息が出た。
「それにしても、この広い瀞霊廷のどこかに、その噂を流した野郎が居るってわけか。
 さて、そいつは一体誰なのか・・・だよな。当面の問題は。」
自分の結婚話なんて、そんな色気のある生活してないハズ・・・だよなぁ。
大体そんな話、『俺』に一番に話が回ってくるはずだろう?
なのに、俺自身が噂から知るって、ちょっとそれ話の順番として逆転してるだろうが。
一体流した奴は誰なんだ?
夜一じゃねぇ、喜助でもねぇ。
んでもって、真子でも、ひよ里でもねぇ・・・
・・・
誰だ?
一心か?
そう思っては、一縷の望みを託して、彼のところに足を向けた。
 
  
 
 
「あぁ?俺?」
と、隊舎にいる一心の、その心底意外そうな声を聞いて、『ヤッパ、ダメか・・・』と半ば諦めてしまった。
大体コイツ、噂流して楽しむってタイプの奴じゃねぇ・・・しな。
「そんな噂は初めて聞いたなぁ、。お前、結婚するのか?」
と、本当に初めて聞いたような反応を返しやがる。
しょうがねぇ。
コイツの線は諦めだ。
「いや、聞いてないならいい。っていうか、その噂の出所を今探ってる最中なのさ」
「ほぉ。でもなぁ。出会いってのは、大事だぜ?」
そう言って、煙草を持ってニヤリと笑う。
「ハイハイ。ま、何か入ったら連絡くれ」
と、これ以上居るとのろけ話になりそうなので、サッサと退散することにした。
 
 
 
「それにしてもアイツ。ガキでもできたのか?」
と、が部屋を出てしばらくした後に、一心が呟いた。
目の前で言ったら、蹴りが飛んできそうだったから・・・
そして、彼よりも前に同じことを言って蹴られた奴がいることを、一心は知らなかったのだけれど・・・
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それにしても、今日一日。
大して収穫なかったな。
それにしても、誰なんだ?
ひよ里から真子。そして、喜助・・・夜一はどんなルートで知ったんだ?
喜助からか?
それとも・・・
んでもって、ひよ里は誰から聞いたんだ?
一心よりも先にそっちに行くべきだった、クソッ!
そう思って、走った。
「はぁ?」
走って、噂を誰から聞いたのか尋ねた返答の第一声がこれ。
「だから、俺の噂、お前は誰から聞いたんだ?」
「何言うてるんな。そんなん瀞霊廷歩いとったら、そこら中に流れとったで?」
と、不機嫌な表情でひよ里が言う。
ということは、不特定・・・多数かよ。
ったく、何処の誰が流したか知らないが、こう振り回してくれんじゃ堪ったモンじゃねぇよ、全く・・・
「ひよ里、ありがとう」
と言ってそこから去る。
「ちょ待ち!」
と後ろから掛った声に足を止めて振り返った。
「何?」
そう答えると、
「なぁ。その肩に乗ってるの・・・ひょっとしてお前のガキか?」
と本日二人目の質問者が出た。
「いや・・・違う。」
「ちゃうんか。でもエライ似てるなぁ」
と、瞬歩での隣に来ると、彼の肩に乗ってるチビに手を伸ばした。
「まぁ・・・色々あってな。拾ったんだ。」
「ふーん。まぁえぇわ。なぁ、その噂の出所探し。手伝ったろか?」
との申し出に
「いや・・・いい。」
と断ってそこから消えた。
 
 
行き先は、最後の手段・・・
あの人のところだ。
アトガキ
噂って・・・
管理人 芥屋 芥