双想歌
05.初めて下からあなたを見る
 汗ばんでいる手に合わせてが喘ぐ。
 一度抜いて正面を向かせ、その様子をどこか違う視線で見ているような、頭のどこかが多分冷静な浦原が追い上げていく。
 その姿も、声も、自分を見る視線さえどこかに閉じ込めて、自分だけを見て、感じて……
 この人を独り占めできればどれほど楽か。
 だけど、そんなことは無理な話。
 この人がそんなことを許すはずもなく、またそんな軟な精神なぞ端から持ち合わせていないことくらい、とっくの昔に分かっている。
 だからこそ、こんなにも惹かれる……ンでしょうネェ。

 
 
 彼の斬魄刀『風梗』の起こす風の嵐の中、悠然と立つこの人の姿を初めて見たときから、今から思えば惹かれてたんでしょうね。
 そんなことを思いながら、浦原がその瞳を下をむいて隠している彼を見る。
 それが何だか気に入らなくて
「何隠してるんスか」
 と言ってその顎を掴むと
「う……るせ」
 と悪態をつくけれど、顔ははあっさりと上を向いて、ぶつかった濡れた瞳に思わず心臓が高鳴りを打つ。
――ヤッバ……


 
「っん……はぁ……ッ」
 相変わらず、が相手だと余裕がない自分を感じる。
――ワタシはこの人以外、いらないとさえ……
 そこから先の言葉を自分で否定し、喜助はの腕を引っ張り、背中に回すように促した。
「……ッ?!」
 心は、その体を抱きめたくて仕方がないと喜助を急かせるが
――ここで急げば、またイレルの苦労するでしょ?
 と、なけなしの理性が心に囁いてなんとか押しとどめた。
 代わりにと、その体に腕を回して彼の頭を抱いてその髪を梳く。
 自分より小さな体は腕に納まりがよく、柔らかくはないけれど抱き心地が良い。
「お前……」
 それだけ言って肩口に顔を埋めた
「こうすると、入ってるの明確に分かるデショ?」
 と、その耳に囁くように言う。
 途端、ビクッと震えるの髪に口付ける。
「……テメェ……ン」
 それでも悪態を吐く口を口で塞いで、彼の言葉を遮った。
「……ん……っはぁ」
 逃げるように顔を背けようとするの顎を指で固め、割って入れた舌で逃げる舌に絡ませる。
 息も奪うほど深く吸って彼の頭から酸素を奪うと、ボーっとしだした頭に応えるように体から力が抜けた。
 そんな彼に、
「いつもワタシからですよね。たまにはワタシも楽がしたいんで」
 と言って、ゆっくり自分の上体を布団に持っていく。
「ん?」
 何が起きたのか分かってないが、一瞬キョトンとした表情を作る。
 それに満足そうに笑うと、喜助は腕を伸ばしてその腕を掴んで引き寄せる。
 中で見る見る真っ赤にしていく。
「お……お前なぁ!」
 と言って腰を浮かして逃げようとする
「ダメっすよ。逃げちゃ。それに、こういう時じゃないとさせてもらえなデスからねぇ」
 と言って、まるで新しい遊びを覚えた子供のような嬉々とした顔で言ってのけた。
「自分から動かないと、いつまでもそのままですヨ? まーワタシは一向に構わないんですが」
 目を閉じて顔を背けたまま動かないに、喜助が言いくるめるように話し掛ける。
 その声に一度だけ喜助を睨むと、彼の腹に手をついたが上体をわずかに倒す。
 その支えている腕を、少し嬉しそうな喜助がそっと掴んだ。



「ん……っはぁ……っ」
 時折声が漏れ、が動く。
 沸いてくる快楽に流されまいと必死になるけれど、それでも体は止まらなかった。
 無意識に下を向くその顔。その時に見せる表情に浦原は思う。
――う〜ん。その顔だけでワタシ、イッチャイソウです
 誰も見たことが無いであろう、自ら動くその姿。
 自分の快楽を追いかけるに手を伸ばす。
 慌てた様子でが顔を上げた。
「ッ?!」
「イイですよ。続けて?」
 ニコリと笑うと
「ヤメ……ッ」
 顔を真っ赤にして睨んで、手を引き離そうとするのを喜助は逆に掴み取って
「やめませんよ。勿体無い」
 と、目で促す。
 それに首を小さく横に振るに、
「ね? 続けてください」
 と言葉を掛けた。



 下から見上げるのも中々悪くない。
 そう思いながら、喜助はを突き上げる。
 時折抑えきれない声が漏れ、その度体を震わせるのも中々に新鮮だと他人事に思う。
 これは、自分の方かよりも、ずっと彼の体のことを知っているからだろう。
 死神として配属されたときときから、いや、それ以前から気になっていた。
 偶然を装って強引に誘い、慣れない彼を最初の頃は無理やり抱いていた。
 喜助自身にも、今から考えると余裕がなかったのかもしれない。
 変な虫が付く前にと、まるで子供のような独占欲を彼にぶつけていた。
 だからかだったのだろうか。
 抵抗もそれに比例して激しかったけれど、今は違う。
――ホント、随分素直になっちゃって
 左手で両手首を掴み、逃さないようにしながら、もう片方の手で中心を扱く。
 顔を隠す手段をなくしたは、ひたすら下を向いて喜助を見ないよう必死だ。
 それに誘われるようにして腕を伸ばし
「ここまで入ってますよね」
 言葉と同時にグッと押すと、顔を歪ませるが見えた。
 彼が抗議の声を上げる前に喜助が言葉の先を取る。
「ほら、ちゃんと感じてください?」


 熱がじんわりと辺りを覆い、時折触れる空気が冷たい。
 息も荒く、偶に視線を上げたが濡れた瞳で喜助を見る。
 その度にゾクリと背中があわ立ち、息を呑むのを自覚しながら、喜助は更に彼を追い上げていく。
 やがて、中心に触れる自分の手にの指が絡んでいた。
 思いがけない彼の行動に思わず
……サ……ン?」
 と、名前を呼ぶ。
 予想外な出来事に、一瞬呆けたような顔をした喜助が心底嬉しそうな顔を作る。
 一方のは、顔を真っ赤に染めていた。
 恐らく無意識の行動だったのだろう。
 喜助の呼びかけで自分を取り戻し、慌てて指を外そうとする。
 が、それを許す喜助ではない。
「は……なせ……」
「ダメです」
 が抵抗して手を離そうとするが、逆に彼の手ごと握りこんで自分で扱くよう動かした。
 その言葉の応えは相変わらずの減らず口だったけれど、顔が真っ赤だから、全く迫力もなかった。


 熱を出す瞬間、背中がのけぞる。
 その直後、喜助も吐き出して一息つく直前にの体が崩れた。
 咄嗟に腕を伸ばして体を支え、ゆっくりと降ろす。
 半ば気を失いかけている彼の髪に自分の指を絡ませ、左手で息が荒いの背中を優しくさする。
 そのまま意識を落としていくに喜助は優しく声を掛けた。
「もう少しだけ、ね? サン」
アトガキ
やっちゃった。もう、今回それだけ
2013/09/17 加筆書式修正
管理人 芥屋 芥