Sky Lord
06.It's Bungee!
「じゃぁね。後はあなたの運次第ね。子猫ちゃん?」
 そう言って女の人の気配が消える。
 ここはどこ?
 真っ暗だよ。
 何も見えない
 怖い……
 と、の体が竦んだときだった。
 フワッ
 と何かが頬を掠めていったのは。
 これ、風?
 目隠しをされている分、いつもより体の感覚が敏感だ。
 頬に感じる、下からの風。
 下から?
 途端、の中に恐怖が生まれた。
 ここはどこだ?!
 どうして下から風が当たるの?
 どうして?
 耳に聞こえる風の音。
 鼻につく、何か油っぽい匂い。
 肌に触れる湿気た空気の感触。
 そして、あの金属音……
 もしかして、ここは外?
 ここは何処だ!
 と、の恐怖が頂点に達したときだった。


 シュルリ……


 それは偶然だったのか、または必然だったのか。
 の目隠しが解けた。
 そこで彼が見たのは南国特有の、濃く光る真っ青な空だった。




 そして、そのまま視線を下に向けたのがいけなかった。
 真下に見えるのは、剥き出しの鉄の色と、そして遥か下に見えるコンクリートの地面。
 そこでそのままガクッと崩れるようにして気を失えたら、はどれほど楽だったかは分からない。
 一瞬息を呑んだその後、そこから動くことも、何をすることもには出来なかった。
 ただ足が竦んで、息が荒くなって何も出来ない。
 彼が今居るところは、剥き出しの鉄骨の上。
 しかも幅が七十センチ位しかない、空中に突き出しているだけのただの鉄の柱の上に、は立っていた。
 当然ここはアトラクション広場じゃない。
 命綱など、当たり前だが彼には付けられていない。
 そして地面は遥か下。
 言わば、落ちれば即死の紐無しバンジーだ。
 正直、洒落になってない。
 そんな状況の中、の目に再び涙が宿る。




 嘘だ……こんな……
 俺ここで死ぬの?
 いやだ イヤダいやだ!
 誰か、助けて……
 いやだよ。こんなの……
 助けて誰か……
 誰でもいい。怖い、助けて、タスケテ、助けて!!




 泣いたって何にもならないのはも分かっている。
 だけど、こんな状況だなんて考えたこともなかった。
 こんなの……
 怖い……
 死にたくない……
 いやだぁ!!!





 キィ……ン
 恐怖で細かく息を繰り返すの耳に届いた、聞きなれた耳鳴り。
 え?
 今の……誰? 先生?




「しまった。指向性領域の展開をするのもいいけど。俺、あいつにモールス教えるの忘れてた」
 と、上を見上げながらが言う。
「おいおい。しっかりしてくれ『先生』。それにしてもあの女。高みの見物たぁ、いい度胸してんじゃねぇか」
 そう言って上を見上げる。
 その視線の先には、ビルの上にたつ女の姿をハッキリと捉えている。
「さてと。真正面から馬鹿正直に行くか?」
 と張が聞くと
「まずを助けてからだ」
 と言って、体を翻した。
アトガキ
書き直しと加筆と修正してみた。
拡大解釈です。
指向性領域展開
2023/07/22 CSS書式+加筆修正
管理人 芥屋 芥