Sky Lord
03.True Intention
「アチィ」
 と嘆きながら空港から出た途端に出た第一声がコレ。
 空港から降り立つと、熱帯地方特有の空気が体にまとわりつく。
 流石に暑さのレベルが違う。
 暑い。
 太陽なんか真上だし。
 もう少し夕方の便にするべきだったかなぁと、は少し後悔する。
 まぁ慣れればそうでもないんだろうが、だからといってすぐに慣れるはずもない。
「さて。張の旦那に一本連絡入れておくべきだったな、こりゃ」
 と、着ていたシャツに手をかけてパタパタ仰ぐと、晴れ渡った空を見上げて目を細めた。
 さてと。早速情報収集に掛りますかね。
 それにしても『ついでだから修学旅行の下見もしてきてくれ』って。
 学校ものん気なものだ。
 などと考えていると、車が一台後ろからやってきた。
 その中に、は見慣れた人物がそこ乗っていることに気がついた。
 そしてその人物は、明らかに自分を見ているのがそのサングラス越しにハッキリと分かる。
――何してすんか
 と思いながらその車に近づいていく。
「なにやってるんですか張の旦那。てか、よく俺がこの便に乗ってることが分かりましたね」
 車から現れたその人は、三合会のここのボス……張維新だ。
 そりゃ確かに『タイで待ってる』とは言われたが、まさかこうもぴったり車を横付けされるとは予想外だった。
 てっきりお互いソロ行動かと思っていたのに。
 それにしても凄いな。行動が筒抜けか? それとも名前の所為か?
「ブーゲンビリアから引き取ってきた。この先は入用になるだろうからな。それよりも、後ろにいるのは例の耳付きか」
 と、布に包まった物を俺に渡しながら視線を後ろに向けてそう言った。
「ですよ」
「あの……先生?」
「いいか。ここでは俺は先生じゃない。だから、って呼べ」
「え、でも……」
「でも、でも何でも良いから。ここでの俺は先生じゃない。いいな」
「わ……かりました」
 それを受けて俺は一息大きく息を吐くと
「気をつけろよ。それから俺のそば離れるなよ」
 と言って、が肩にかけて持っていたバッグをグイっと引っ張って引き寄せた。







「では、ここからは別行動で」
「あぁ。行動起こすときには連絡しろ」
 そう言ってと共に車を降りる。
 さってと……
 とりあえず、黄色旗のところで情報収集兼ねて一杯やるかね。
 は周りをキョロキョロしながらもについてくる。
 大丈夫か?
 と思うが、今のところは何とか無事だ。
「よ、バオ。元気してたか? てか、また改装したのかよ。なんだか来るたびに変わってねぇか? ここ」
 と共にカウンターに座りながら店を見回したは、店主であるバオにそう言った。
「お? おぉ?? ? じゃねぇか! お前生きてたのか?!」
 と、サラッと何気にヒドイことをバオが言う。
「おーおー。挨拶じゃねぇの」
 そう言って注文したのはバーボンだ。
 と、彼には……
「すまん。ぺプシ一本出してやってくれ」
 とバオに頼むと、途端彼が嫌な顔をした。
「なんだよバオ。ぺプシがどうかしたのか?」
 と聞くと
「あ゛ぁ。ぺプシなぁ。最近の一番嫌な思い出だ。それで店が半壊になった」
 と言った。
「オイオイオイ、穏やかじゃねぇなぁ……それ」
 なんだよぺプシで店が半壊になったって。
「覚えてるか? レヴィだよ、レヴィ。あいつのダチがな。店潰してったんだ」
 なるほど、と納得していると、と急にバオが声を低くして言い出した。
「それよりも、お前が来たってことは、やっぱあの噂。本当だったんだな」
 ほらな。情報はこんなところにも転がってる。
「なんだよ。俺は今日ついたばかりでな。その噂のことは何も知らねぇから、ちょっと詳しく話せよ」
「あぁ。動いてるのはイタリア系と張の旦那だ。イタリア系っつったって、ベェロッキオ・ファミリーじゃねぇみてぇでな」
 なるほどな。
 確かに、イタリア系の人間の顔が俺を見た瞬間変わったな。
 それにしても随分派手にやってるもんだな。
 そりゃ確かに耳・尻尾付きは高く売れるが……
 大使館絡みのガキを攫ったことが、どうやらコトが大きくなった発端らしい。
 言ってしまえば、助けるお仕事は向こうの仕事。実際のの仕事は汚れ役、ということだ。
――まぁ汚くない仕事なんて、少なくとも俺向きの仕事じゃねぇわな。
 教師は別として。



「じゃなバオ。面白い話をありがとよ」
 そう言ってと共に店を出た。
 それにしても、さっきから早く出ろっていう顔しないでくれるかなぁ。
 お前等。バレバレなんだよ。
 旦那がナイフを取ってきてくれていて正解だったな。
 数は三人か。
 ま、挨拶程度だろから別にがいようが居まいが関係はないが。
 そう思って狭い路地に入る。
 この狭さなら、足が……届く。
 ガッ
 と言わせて一人の男に足蹴りを食らわし、一人の男には持っていたナイフ、そしてもう一人の男には手刀を打ち込んで気絶させる。
 三人なら一人は潰しておいたほうがいいからな。
 こっちは『お荷物』抱えてるし。
「挨拶だなぁお前等。さて欲しいのはなんだ? 情報か? それとも俺の命か?」
 ナイフを突きつけた相手に、そう問うてみる。
 視線からどうやらコイツがリーダーのようだったからだ。
 ギリッと言わせてナイフを突きつけると男が吐いた。
「お……前は手を引けと。ボスからの伝言だ」
「ほぉ。それはワザワザご丁寧なこった。忠告かい」
「そうだ」
「ふーん、まぁいい。じゃ、こっちから質問だ。お前等からはイタリア系の臭ぇ匂いがするが、お前等の上司は……マチルダ・グリエンコじゃねぇのか?」
 そう言うと男達の顔が変わる。
 ビンゴだ。
「情報、ありがとよ」
 といって、残った二人も気絶させた。
アトガキ
書き直しと加筆と修正してみた。
そろそろ、ダーダン……
2023/07/20 CSS書式+加筆修正
管理人 芥屋 芥