Sky Lord
21.Touch It
「ただいま」
 が玄関を開けると、まだ手塚が起きてる気配がした。
「なんだ起きてたのか。寝てても良かったのに」
 そう言いながらリビングに足を向けると、手が伸びてきた。
「何……? あんまり急にこういう事しないで欲しいんだけど?」
 反応を抑えるのに疲れるから、と言って手塚の手から逃れようとする。
「駄目です」
 宣言通り、強制的に入り込まれる。
「ッゥ……手……づか……痛いよ」
「痛くしてますから」
「なんでさ……ッ」
「分かりませんか?」
「分かるかよ」
「そうですか」
「なぁ手塚。何? 怒ってんの??」
「……」
「ダンマリじゃ分かんないよ」
 妙なところで子供なんだから、とが思っていると、手塚の手が動いた。
「ちょ……なに……?!」
 何すんだ?!
 の言葉は途中で切られ、変わりに響いた艶の声。
「ッん……んッ」
 入ってくる舌にせめてもの抵抗として歯を食いしばっていると、手塚の腕が背中に回されて刀傷の痕に触れられる。
「ィッ!!」
 痛がった瞬間に入ってきた舌に、舌が絡め取られる。
「ッ……んぁ」
 たっぷりの時間をかけて受けたキスで、唇が離される頃にはすっかりの体から力が抜けていた。
「な……んだよ、いきなり……」
 息が上がってるの背中を、まだ手塚の腕が離さない。
 シャワーを浴びたのだろう。
 しっとり湿った前髪がの額に落ちる。
「手塚、手離して……」
「イヤです」
「怒ってるなら怒ってるって言えよ」
「怒ってはいません。ですが彼が、が来てから、少しモヤモヤしています」
「モヤモヤ?」
「はい」
「それって、不安に思ってるとかそういう事?」
 感情が掴めない手塚の心を考えて、が言う。
「かもしれません」
「そっかぁ。手塚でも不安に思うんだね」
「はぐらかさないで下さい」
「でもさ、ずっと言ってあっただろう? もう一つの名前の奴が、いつか現れるって」
「えぇ」
「それが今なだけだよ」
「分かってます」
「それでも、現実に現れると手塚も不安に思うもんなんだね」
「えぇ。しかもあんな……」
 ここで珍しく手塚が言葉を切った。
「あんな幼稚な、同い年とは思えないくらい子供だとは思わなかった?」
 と、が後を続ける。
 まさか言い当てられるとは思わなかった手塚は、驚いた表情をしていた。
「ッ!」
「図星かな?」
「……まぁ……」
 言い難そうに手塚が認める。
「手塚。いい加減傷跡から手を離してくれ。結構疼く」
 そうが言うと、手塚は黙って手を離しそのまま腰を抱く。
「お前も朝早いんだから、さっさと寝なさい」
 少し湿り気のある手塚の前髪にが触れ、返事の無い手塚に名前を呼ぶ。
「国?」
 名前を呼ぶと、腰を抱く手塚の腕に力が入る。
 それを感じた
「一緒に寝るか?」
 と提案した。
「はい」
「それじゃ俺はシャワー浴びてくるから、先寝てて」
「わかりました」
 そこまで確約して、やっと手塚はを開放した。






 シャワーを浴びて部屋に入ると、部屋の電気は点いていた。
「手塚?」
 まだ起きてるのか、さっさと寝ろの意味を込めて若干非難の声がから出る。
 短パンにTシャツを着たラフな格好のがデスクチェアに座りながら
「さっさと寝ろって言ってるだろ」
 と言って、雑に髪を拭いている。
 その様子を見て、手塚がベッドから降りてきた。
「何」
「髪、痛みますよ」
「いいんだよ」
「何回言わせるんですか。駄目です」
「じゃ、拭いてくれる?」
 と、がそのまま椅子を回転させ、手塚に背中を向けるようにして依頼する。
 それに手塚が
「分かりました」
 と答えて、髪を乾かし始めた。




 しばらく乾かした後、後ろから手塚がを呼んだ。

「ん? ひぁぁ!」
「無防備すぎです」
「だから刀傷痕触んなってば」
 そう答えるの声は、冗談交じりだが震えている。
「この傷が、オレとあなたを繋ぐんです」
 キンッ……
 支配権が、AIRLESSからMERCILESSへと移るのがには分かった。
 手塚が名前を出したのだ。
 傷が疼くから、あまりMERCILESSの名前を出したくないだったが、手塚は容赦しなかった。
「国……肩痛い……」
「痛くしてますから」
「ひどいな……」
「えぇ。オレは、MERCILESSですから」
「……ッぁ!」 
 口付けを受けて、ビクンっとの体が跳ねる。
 その肩に刀を受けて以降、傷痕と共に性感帯にもなっているのソレ。
 それを知っている手塚は、そこへの愛撫をやめなかった。





 すっかり息が上がった頃には開放された。
――ったく……あーあ。どうしよう……
 一息ついて、冷静に考える。
 男の体は素直だ。
 どうしようかと迷っていると、手塚にクルリと椅子を回転させられ、彼はそのまま口に含んできた。
「わっ! ば、馬鹿!!」
 流石に焦った様子でが手塚の肩を押すが、いかんせん男の弱いところを握られてるために力が入らない。
「……ッん……んぁ」
 なんというか、どこで学んだのかは知らないが、手塚は上手い。
「こらッ! 離せって……」
 焦ったようにが言うが、手塚の行動は止まらない。
「国! もう……!」
――出る!!!
 そう思い、机の上にあったティッシュ箱からティッシュを取り出そうしたときだ。
「あッ!」
 ゴクリと喉を鳴らして、手塚がソレを飲んだ。
「の……飲むな馬鹿!! 今すぐ吐き出せ!」
 手に持ったティッシュをそのまま手塚の口の前に差し出してやるが、彼は冷静に
「要りません」
 と言った。
「飲んだ?」
 が聞いたその声は、若干震えている。
「飲みました」
「飲むものじゃないだろ、ソレ……」
「ですね」
「ですね、って……」
 冷静な手塚に、は呆れたように肩を落とす。
「寝るか……」
 そう言って短パンを上げ、椅子から立ち上がると、そのままベッドに引きずり込まれた。
 明日の練習、最後まで付き合えるかなぁ……てか、若いっていいなぁと思いながら、は目を閉じた。
アトガキ
書き直しと加筆と修正してみた。
ぬるいけど……
2023/07/15 CSS書式+加筆修正
管理人 芥屋 芥
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