Sky Lord
13.You cannot meet him
『発:七声学園 南律
 これから恐らく東京を中心に1500kmの範囲でとてつもない広さの戦闘領域が展開されます。
 だが驚く必要はないよ。君たちには関係のないことだから。しかし、何が起きても対処できるように。以上』
 これくらいでいいだろう。
 何せ何が起きるか分からない相手だから。
 まさか、軍人で、本物の戦闘機乗りだったなんて、全く分からなかった。
 少し逸りすぎたかもしれないと、今更ながらに少し後悔をしている南である。
 しかもあの二人とは、全ったく連絡がつかないことも不安だった。
 恐らくもう既に戦闘が始まっているのかもしれない。
 せめて生きて帰ってきてくれたらいいんですけど。
 それに、あの話が本当なら、君の戦闘機は……
 そう思った矢先だった。
 電話が鳴ったのは。
 それも大阪からだ。
『ちょ! 南先生!これどういうことなん?? なんやのこのプレッシャー! 信じられへんねんけど!!』
「メールを見たか? 君たちには害はないよ」
 ギシッ、と椅子の音をさせて南が天井を見上げる。
「とても厄介な相手に、手を出してしまったな」
 そう言って、静かに目を閉じた。







 その圧力の中心で立っていたのはと、そしての二人だけだった。
「な、ん……だ……」
 居れた腕がまるで腕が鉛のように重いように、金華は感じる。
――なんだよコイツ……何者なんだよ……
「分かるか? ガキ。これが力の差というものだ。ここら辺りは大体7Gが掛っている。Gって分かるか? まぁどうでもいいよ。お前の腕はまるで鉛のように重くなっているはずだ」
 目が違う。こいつ『マトモ』じゃない!
「銀……華……」
 そう言って彼女に手を伸ばすが、血を吐いた後は倒れ込んだまま動かない。
――まさか
 最悪の事態が金華の頭をよぎる。
「お……まえ……」
 こんなのは……違う……
 こんなのは……暴力……だ……
 こんなのは……今まで経験したことがない
 こんな恐怖は……知らない……
 圧倒的なその恐怖を前に、何もかもが打ち砕かれる。
 動かない銀華、立てない自分。
 どこまで広がってるのか分からない、その戦闘領域。
 明らかに広すぎるその、終わりの無いその戦闘領域が、何故か無性に怖かった。
「言ったはずだぞ。俺はそこの女の生死は問わんとな。さぁ、まだ腕を折られただけだろう? まだGが掛ってるだけだろう? どうした? ガキ。さっきの威勢はどうしたよ」
 あざ笑うようにが告げる。
 その顔は、本当に悪魔のような顔をしていた。




「や……めてよ。こんなの!」
 こんなのは、ただの暴力だ。
 違う、こんなのは……違う。
 今まで、色んな戦闘を見せられてきた。
 だけど、こんな凶暴な戦闘は、知らない。
 金華の腕を折ったあの動きも変だった。
 銀華が言ったあの言葉が唐突にの頭の中に蘇る。
『その先生、妙な迫力があって』
 割れたガラス、床にある弾丸、そして銀華の言葉。
「こんなのは、暴力だ」
 震える声でが言うと、
「そうだよ」
 肯定が返ってきた。
「なんで……?」
「これが本来の俺だからな」
「どういうこと?」
 は震えが止まらない。
 普通の先生だと思っていた。だが、こんなのは違う。これは『普通』じゃない。
――怖い……
 しかし振り返ったが告げてきた。
「話すよ田中。お前には知る権利がある」
 がそう言って、一方的に宣言した。



「領域離脱。状況終了」
アトガキ
書き直しと加筆と修正してみた。
2023/07/10 CSS書式+加筆修正
管理人 芥屋 芥