チョット待て。
おいおいおいおいおい。こりゃ一体全体どういうことなんだ!
ちょ! 直! 一体これはどういうことなんだよ!
ふざけんなよ! こちとら今まで海の上に居たんだぞ! 何だ、何なんだよコノヤロウバカヤロウ!
直! ちょっとこら! テメェ説明しやがれ!
「なぁにが起きやがった!」
じゃねぇんだよ!
こちとらただでさえ調子悪いっつうのによ!
ふざけんな!
「誰が止まれっつったぁ! 動きやがれバカヤロウ!!」
ってぇぇぇぇ!
テメェコラ! 殴んじゃねぇよ!
だから! 調子悪いって言ってんだろ!! ただでさえ、テメェ乗せて敵に追われながら海の上走ってたんだぞ。ったく、分かってんのか!?
そう思ったのもつかの間。
直が操縦桿を動かし、バンクを取り下を見るとそこに広がっていたのはまるで映画村のような光景。
なんだなんだ。今から合戦の撮影でも始まるのか?
そう思っていると、右20度のところに何か同じ飛ぶものが……
ちょっと待て。竜だと?
こら、ふざけてるのか??
ここは、空想科学小説の世界か??
それとも何か。
俺はユメを見ているのか??
そう思ったのは俺だけではないようで、席に座る直も困惑気味だ。
俺にはわかる。
操縦者は今、混乱している。
相変わらず口は汚いけどな。
竜の口から火が吐かれ、街が燃えていくのが見える。
それを見ていた直が、切れたのがわかった。
まぁ、直ならキレてもおかしくないか。
目下に広がる光景が、何とダブったのか、なんとなく俺にもわかる。
さてと、仕事の時間だ。
ってかお前。暴れるのもいいが、弾ぁ、そろそろ切れるぞ?
あと燃料も。
まぁ、そんときはコイツと共にお陀仏になればいいか。
そう思いつつ、直の動きにあわせて体を動かし竜を一体上から仕留める。
操縦者がデストロイヤーと言われる所以。
B−29相手にこうして上から叩いてきたんだ。今更驚くことぁない。
やってることは変わらないさ。ただ相手が火を吐くってだけでな。
それに、コイツとどこまでもいけるなら。
「戦果! 竜 一騎 撃墜!」
コックピットの中で直が声を出して報告する。
だけどテメェよ。
報告したところで受け取る先がねぇぞ。
わかってんのか?
「301飛 「新選組」 隊長 管野直!」
力強い声がコックピットの中を奮わせる。
そうだ。
そうだよなぁ。
お前はこんな状況で怯むような奴じゃない。
管野 デストロイヤー 直
階級は確か大尉だったか。
それが操縦者の名前。
これまで死線を幾度となく潜ってきた相棒の名前だ。
じゃぁ、いっちょ行くか!
それにしても、誰かが地上で何かを叫んでいたな。
燃え盛る炎の音に混じって、何か、そう確か……
コップピットにいる直の耳には入っていないだろうが、俺には聞こえたぞ。
『ドリフだった!』
と。
不思議な帽子を被ったソイツが、地上で嬉しそうな顔でこっちを見上げながら叫んでた。
『ドリフ』
ってな。
だけど、ドリフって、一体、何だ???