「脱げ」
 その男はまるで帝王が如く命令を下した。そしてその男の目の前に立つ人間は、その言葉を聞いて嫌そうな表情を隠さなかった。
「……なんでだ」
「何でデモだ。それに俺は今怪我をしている真っ最中なのだがな。そんな俺に仕えようって気は無いのか。お前は」
 何とも不遜な笑顔で言われ、二の句を告げない男の前に立つ人間の顔がはっきりと分かるほどに引きつっているのが男から確認できた。そして、次の言葉は案の定と言うべきか、至極真っ当な返答だった。
「9mm四発も食らってんでしょうが。治すのに専念したらどうでしょうかね」
 と。
 しかしここで曲がることのないのが男の性質、とでも言うのだろうか。この、自分が動けない状況下にあってもこんな下らないことを命令してくるのは一体どんな心算だと考えあぐねていると、男が平然と言い放つ。
「お前が跨れば俺は楽にできる。違うか? 動くのはお前だ。だから来い」
 その言葉で、と呼ばれた人間は理解した。つまり、預けろということ。それを理解して表情を消して預けようとすると、今度は先ほどよりも厳しい表情になった男がゆっくりと首を振って拒否を示し、それを見たが怪訝な表情のまま服を脱いでいた手の動を止めて男をジッと見つめている。
 そんな彼に、男は言った。
「俺に預けてどうすんだ。分からんか? 俺はけが人だぞ。テメェの判断で来い」
 了解の意を頷くことで返事をすると、は男の服にゆっくりと触れていく。
 そして、それ以上の注文はないだろうと思っただったが、思いついたように男が口を開いた。

 珍しく男が呼んだ名前に、呼ばれた少年が手を止めて顔を上げて男を見た。
「『攻めるな』よ」
――また難しいことを。
 などと思って、そのギリギリのバランスを取らせようとする男を不満げな目でにらみ返すが、男はそんなこと意に返さずに不敵な笑顔を浮かべているだけだった。

「相変わらずお前は、上手いな」
 言葉が妙なところで切れたことに頓着せず、は事をただ黙って実行していった。
 ちなみに服を脱いだのは上だけ、しかもシャツのボタンを外しただけで下も当然履いている。
――別に本格的にヤルワケじゃないし。
 そんな冷静な判断を自分に下しながら彼は、命令を下してきた男の身体を気遣いつつ事に及んでいく。
 例えば、あまり相手の身体に体重を掛けないとか、傷口を広げないように気をつけるとか。
――それにしても、男相手に『上手い』って言われてもなぁ。っていうか、こういうのって昔の……ッ?!
 のん気にそんな考え事をしたいたところに、グイっと髪が引っ張られて顔を上げさせられ、その急激な動きに驚いていると目の前に寝転がる男の不機嫌そうな顔が飛び込んできた。
「何を考えてる。お前は」
 不遜な笑みを浮かべながら問い掛ける姿は正に『悪人』そのもの。いや、既に三合会というマフィアのタイ支部のボスという時点で十二分に悪人なのだが、その顔は正にそんなイメージ通りの悪人面だった。
all ruler
「入れてみろ」
 どうして男がこう言ったのかは、には分からない。
 最初は口だけのはずだったのに、途中から男の気が変わったのかもしれない。
 だから、一瞬動きの止まったに対して、男は感情のこもらない言葉で無慈悲に命令を下した。
「聞こえなかったのか。入れろと言ったんだ」
……出すだけでいいだろ。
 と言おうとしたの言葉は、男が彼の髪の毛を掴んで無理矢理上を向かせたことで封殺される。
「二度も言わすな。それとも『酷く』して欲しいのかどっちだ」
「……分かった」
 理不尽ながらも男の命令を渋々受けれると、一つの問題に突き当たった。
「旦那、一つ質問いいか」
 それを解消させるためには旦那と呼ばれた男に問い掛ける。
「なんだ」
 鬱陶しそうに返された返事にが思い切って尋ねた。
「慣らすのは、自分でやっていいの?」
 だが返ってきた返事は、これまた雲を掴むような曖昧なものだった。
「さぁ?」
 ニヤニヤした男の顔に一つ小さな息を吐くとは言った。
 どうせヤルつもりはないのだ。この男は。
「……やります」
 残っていた僅かな羞恥心が声を小さくさせるが、それを許すほど男は寛大ではない。
「聞こえんな」
「自分でやります」
 慣らすのは自分が痛くないようにするだけ、とは言え見られることに抵抗がないわけじゃない。少し……いや、かなり恥ずかしいと思うのだが、いくら恥ずかしいと思ったところで男が動いてくれるはずもない。
 それに、感情を消せばこんな恥ずかしいという気持ちなんてどこかにいってしまう。
 だから、感情なんていらない。
 そう思い、の指がゆっくりと動き滅多に触れない場所に触れて慣らしていく。
 こう考えればいい。これはただ体が熱くなって、吐き出すだけ。旦那の熱を吐き出させるだけ。ただ、それだけだから。
 しかしそう思っていたの考えは、見事に打ち砕かれた。


 シュルリ……とまるで衣擦れのような音が聞こえたと思えば、視界が真っ白に染まっていく。
「?!」
 それに驚いて慌ててソレから逃れようとするものの時既に遅く、身体を支えていた腕に絡まったかと思えばグイと後ろに持っていかれ、支えるものを失った体が倒れそうになったのを、まるで腕の代わりとばかりにどこから湧いてきたのか複数の長い布のようなもので受け止められた。
 折り曲げていた足にもそれは絡まり、こちらはテーピングのように大腿と脹脛とをキツク絞めてきてはそこから動くことが出来なくなった。
「だ……んな!?」
 いきなり仕掛けてきた男の意図が読めず珍しく狼狽したような声では男に問いかけるが、男からの返事はない。それどころか、腕に絡まる布の数が多くなったような気がして、それがを混乱させる。
「ちょ……何をしッムグ!」
 まるで黙れと言わんばかりに口の中に硬いものが入れられて声を封じられ、体が倒れる心配がなくなったと判断したのか、身体を支えていた布は綺麗に跡形もなく消えうせる。
 その代わり腕から肩、背中に掛る負担が大きくなったが足を封じられて立ち上がることもできない。
 やがて作業が終ったようだと判断し、一息ついたは白くなった視界で自分が置かれている状況を想像してみた。
 男の身体を跨ぎ、中に入れたまま上半身を前に突き出す形で腕は後ろに固定され、そこから伸びる何かに支えられて倒れないようにされた不安定な姿を晒している。
 腕や背中から先に伸びている布のようなものが、どんな形となって自分を支えているかは分からないが、この男の考えだ。きっとロクなもんじゃないだろう。
 それにしても。
――ハズカシ……ッ!?
 一息ついたのもつかの間、自分を支えている布のような紐のようなものから、何かが流れ込んできているのをは感じ取った。
 何だ……これ。
 声にならない疑問に答えなど返ってくるはずもなく、じわじわ広がってきたその妙な痺れのような感覚に快楽が伴なっていることにが気付いたときには全てが遅かった。
「ッ!?」
 僅かに残った、外を察知できる耳が捉えたのはシュルリという衣擦れの音。そしてその布の場所は……!
「ッ……ん!」
 声が出ないことなど百も承知で、それでも声を出さずにはいられなかった。
 なんでこんなことをする? 何故?!
 だが、声にならない抗議さえも男は煩わしいと思ったのか、手を伸ばし唇に触れるとこう言った。
「いい眺めだ、。しばらくそのままで、俺を楽しませろ」


 熱い手が気まぐれに、体をすべるように触れていく。
 その手に沿って身体に熱がこもっていくのが分かる。だけども何処にも出口がない。声も出せない、身動きも取れない、吐き出せない。
 それが一層を追い詰めていく。 
「相変わらずだな。お前は」
 言葉の一つ一つが心と体に絡まって抜け出せない。苦しい。
 しかしそんなの表情も、男にとっては自分を楽しませる光景(モノ)でしかない。
 男の腹の上に座らされ、口を塞がれ手は後ろでに回され固定される。この男の思うとおりに布のような物は紡がれ、かろうじて息はできるが声は出せず、身体を傷つけない程度にだがしっかりと絡まって身動きが取れない。
 そんな中、はだけたシャツの中に手を伸ばして男が確認するようにゆっくりと触れながら、言う。
「理性と本能の境界線を溶かしてやろうか。あの時みたいに」
「……ッ!?」
 何とも無しに告げた男の言葉に僅かに身体を震わせて抗議するのが精一杯で、他には何もできない。僅かな身動きも取れないほどに、布みたいなものが深いところまで絡まっている。
 こんなに追い込まれたのは久しぶりだと、心の底で別のことを考えている自分の声が聞こえてきてはまだ自分をコントロールできていないことを自覚する。
「冗談だ」
 この男が言うことは冗談には聞こえないのはきっと気のせいじゃない。
――それに、しても一体……何を、考えて……? 旦……那!
 やがて身体に巻きついて、そして支えている布のようなものが流し込み続けているソレが、感覚が鋭くなっている体の一箇所に集まるのが分かった。
 それは、恐らく男が一番気にしているところ。
 致命傷に近かった、跡。
 首に近い左肩の辺りという、心臓に近い位置に付けられた傷に布からの快楽が水のように身体に流し込まれているのが分かる。
 少しずつその傷跡の中に……
「ッ!?」
 身動きが取れないよう押さえつけられていても、の体の震えを男ははっきりと感じ取った。
「さぁて。どこまで耐えられるかな」
 手は使わせない、自らも積極的には動かない。ただ、気まぐれに身体を少し動かすだけ。
 吐き出すところはどこにもない。口は塞がれ手は後ろ。そしてその欲を出す肝心な中心は根元から塞がれている。
 そんな状態でどこまで耐えられるか。そして、どこで折れるのか。
 男には、それが楽しみで仕方がない。


 男から見れば、それは滅多に見ることの出来ないその光景。それに題名をつけるとするなら、姿だけなら快楽に苦しむ堕天使。
 といったところだろうか。
 その中途半端にはだけたシャツが、彼の色香を増大させている。
 だが実際の目の前で苦しんでいる少年は、その外見とは裏腹に数多くの修羅場をくぐってきている。
 外見と内面が一致しない。それもまた、『景色』といったところか。
『だからこそ、お前は追い詰め概があるんだよ。なぁ
 などと考えながら腰を僅かに動かすと、の体がビクリと震えるのが分かる。
 おまけに声が上がらないその口から微かに漏れる吐息に煽られた男の思うがまま、に絡まる布のような物から流れ込む快楽が更に強くなる。
 やがて吐き出すことを許されない体が熱と快楽によって追い詰められたが、声にならない悲鳴の代わりに涙を流した。
「やっと泣いたか」
 心はもちろんのこと、首にも腕にも指の一本にいたるまで身体も支配しないと涙を見せない。
 これは、追い詰めて追い詰めて、さらに追い詰めた果てに自分だけが見ることのできる光景。
 誰も見たことのないという名の人間が、本当の意味で支配されるという姿は普段の彼を知る者では絶対に想像することが出来ないだろう。それは、目の前にいる男だけに与えられた特権だった。
 そして、そんな姿を晒しながら彼は、布のような物から伝わる痛いほど苦しいほどの快楽に苛まれてただ泣くことしか出来ないでいる。
「……ん……っぁ……」
 口を塞がれていてもなお漏れ出る声にも男は動かず、その代わりにベッドのスイッチを入れて電動のリクライニングを動かすと中で動いたのか、上に乗りかかったままの、限界などとっくに越えているの体がビクリと震える。
 その様子に男がの耳に顔を寄せて、初めて彼に対して気遣いの言葉をその口に乗せた。
「苦しいか?」
 の言葉と共に、その耳に舌を入れるのも忘れない。
 グチュと、卑猥な音が入ってきての体の震えがさらに大きくなる。
「……ッ」
 思いもかけない男の行動に体をビクリと震わせると、男が満足したかのようにその口にソッと手を添えて、その声を塞いでいるものを、消した。
「……ッハ!」
 途端大量の空気が入ってきて、それに咽そうになっていると男の手が背中に回されて擦ってくる。
 そんな気まぐれな行為ですら、散々抑制され限界を超えたには体を蝕む快楽でしかなかった。
「ん……ぁ」
 閉じることを忘れたの口から甘い吐息が漏れて、さらに男は淫沌に落ちたの顔を見ようと、顔を覆っていた布のようなものに手を触れて先ほどと同じようにそれを消した。
「あ……」
 いきなり解放された視界の目の前に男の童顔とも言える顔があって、は快楽の淵に沈みながらも戸惑いの表情を見せる。
 そんな不安げな顔ですら男にとっては自分を楽しませるものでしかなったらしく、満足そうな表情を浮かべるとの髪をクシュと軽く掴んで顔を近づけて言った。
「いかせて欲しいか? ん?」
「……ん」
 まともな思考などどこかに吹っ飛んでいるが、強請るように動かせない身体を必死に動かして答える。
 だが男は途端に機嫌が悪くなったかのように顔に黒いものを宿らせると、掴んでいた髪をクイッと引っ張って言った。
「なんだ。口を解放してやったんだからちゃんと答えろ。まぁ、その苦しい姿のまま居たいって言うのなら、話は別だがな」
「……せて……さい」
 小さな声に、男は首を振って拒否を示す。
「はっきり言え、
「い……かっ……せて……くださっ?!」
 言葉も終るか終らないかの時に、男の手が縛っていた布越しに触れて声が途切れた。
「はっ……やぁ」
「嫌なのか? だったらこのままやめるが?」
 思わず出た拒否のような言葉に、男が素早く反応してその手を止める。
「や……やだっ、やだ、ヤダ! 止めな……で……」
 相当苦しいのだろう。珍しく本格的に泣いたの顔にソッと手をやると、身動きが取れない中懸命にその手に頬を押し付けて来た。
 その目は既に甘く溶けていて、これ以上やると今度は快楽とは別のどこかに落ちそうだった。
「旦、な……イカ、セテ……お願い」
 もう、苦しい。苦しすぎて、オカシクなる。



 相手が怪我人だとか、傷が塞がりかけた大事な時期だとか、そんなことはどうでも良かった。
 ただこの熱が解放されるなら、何だって構わなかった。
 いつの間にか自由になっていた腕を、痺れてろくに動かなかったがそれでも懸命に動かし目の前の男に縋りついた。
 そうしなければ『何か』を支えられないと、体が勝手に判断したからなのかもしれない。
 兎に角溜まった熱をどうにかしたくて、は男が与える快楽に酔った。
「……んぁ!」
 一際高い声を上げて吐き出すとすぐにの体はぐったりとしてしまい、息の荒いまま倒れこんできた彼の体を男はをしっかりと受け止めると、その額に手をあてて汗でべたついた髪を掻き上げてやる。
「んっ……」
 胸の上で未だ荒い息を整えているが、何か言い足そうに僅かに瞳を開けるのが見えて男は問い掛ける。
「なんだ」
「……なは、いいの?」
 それは、男がイッていないので最後までしなくて良いのかという確認。
 最初に脱げと言ってきたのは、この人だから。
「構わんさ」
 の割には、中が……
「でっも……」
 顔を上げて男を見上げると、一瞬だった。しかし確かに男の素の表情を見た、気がした。
 いつもの余裕ある男の顔じゃない。
 その、珍しいものを見て呆けたように動かなくなったに、男もまたが顔を上げるとは思わなかったのだろう。バツが悪そうに顔をゆがめると、何かを誤魔化すようにキスをしてきた。
 やがて先ほど自分が飛ばした残滓に指を絡めて、そのまま口元に持ってくると
「咥えろ。ただし、噛むなよ?」
 と言って口を開けさせ、歯になぞってゆっくりと動かしていく。
「……っん」
 ニガ……
 自分で出したものなのに、一瞬だが嫌悪の感覚がよぎるのはそれは本来口にするものではないからか。
 そして男の反対の手はどこかにやってには触れていない。
 触って……欲しいのに。
 と思っていると
「それじゃぁ。後はよろしく」
 というと、さっさとベッドの電動リクライニングを動かし男の体がそれにつられて再び寝る格好になった。
「……」
 あまりの唐突のことには何が起きているのか珍しく状況判断を失っていると、男がヤレヤレといった顔で
「おいおい。俺は今怪我してんだぞ? だから動くのはお前だ。最初にそう言っただろ」
 呆れた声音で言い、ニヤニヤしながらを見ている。
 そんな男の表情に、やがておこの男の体がどんな状態かを思い出したは顔を真っ赤にして
「あんた、最低だ」
 と言った。
 ギシギシとベッドが軋んで、それが自分の動きとリンクしていることに妙な感覚をは覚えた。
 なんか、可笑しい。
 そしてその心の余裕を感じ取ったのか、腕を伸ばした男の手がの顎を持ち上げて顔を上げさせた。
「何を考えている」
「……なッにも……ッあぁ」
 余計なことを考えるなと言いたげに、反対の手が伸びてきて中心に触れる。
 だが、まだイカセテはもらえない。
 男の嫉妬は女のそれとは違い本人にむけられる。
 そのことを実感したは顔を真っ赤にしながらさっきまで考えていたことを男に告げた。
「お、とが。ベッドの……音。ギシギシ言って、変だな……って」
「余裕だなぁお前は」
 そんなクダンナイことを気にかけていることに呆れた男が肩をすかすと、僅かに腰を動かしてきた。
「さてと。俺もそろそろ、か」
 その言葉の通りに、今度は積極的に動いてきた。
 煽られる。
 体が熱い。
 しかし取り戻した僅かな冷静さに、は男への配慮を忘れない。
 なるべく体重を掛けないように、だが抜かないように気を使いながら男に合わせていく。
「っ……んあっ、あぁ!」
 一際高い声を出して果てると、中にドロリとしたものが入ってくるのを彼は感じた。
「お前、また蓋を閉じようとしただろう」
「……」
 吐き出した後、グッタリとなって倒れこもうとした身体で力が入らないながらもナントカ自分で男に負担が掛らない居場所を確保したに男が言う。
 そして彼は、おそらく図星だったのだろう顔を真っ赤にして俯いたまま顔を上げない。
 確かに、自分はまた塞ごうとした。
 それをこの男には全部お見通しだったわけだ。
 銃弾にまで気が回らなかったことを、自分が後悔していること。
 この男に傷を負わせたことを、後悔していること。
 そしてそれに蓋をしたまま、日々の生活を続けようとしたことを。
「お前が蓋を閉じようとするときは、分かるんだよ」
 まるで独り言のように呟く男の言葉を、はただ、黙って聞いている。
「何度でも抉ってやるさ」
 ?
「お前の身体に傷をつけるのは構わんが、お前の心が見えなくなるのは気にいらんからな」
 珍しい男の『長い独り言』には思わず呼びかけた。
「旦那?」
 だがそれは無粋だったようで、男は呆れながら小さく笑って言う。
「おいおい。せめて今だけは独り言くらい言わせろ」
 と。
 闇が踊る。
――お前が、俺に逆らうことは許されない。
「話す。話すから助けてくれ!」
――お前がその蓋を閉めるっていうなら、何度でも何度でも開けてやる。
『ザッ……ザッ』
「分かった。予定通り制圧しろ」
『……ザッ』
――こじ開けて、そこに塩を捻じ込んで抉ってやるさ。
「残念。あんたが知ってる『話したいこと』なんて、俺にはとっくにお見通しだ」
――だから、お前は安心して……


ドンッ!
アトガキ
ゑろぃくナ―イ orz
2011/12/28 加筆書式修正
2010/01/23
管理人 芥屋 芥