「そういうお前の方こそ、仙比よりも戦闘してる方が向いてると思うけどね」
そう答えて笑う自分。
だけどれどももう、お前の顔さえ思い出せない。
聚慎が滅ぶのと同時に、お前は自分の部屋で自害をしていた。
あの時,『王』は死んだのだと、そう書き置きだけを残して。
いや、実際には自害ではない。
だが、今となってはどうでも良いことだ。
『家が仙比の家だからな。幾ら武道を学んだところで、仙比の道からは逃れられん』
そう言って、共に武道を学びながら戦闘部隊には入らなかったお前。
『でも、その道も中々に悪くない。花朗部隊にはお前が居るし。いいじゃないか。それぞれ道は違えど、聚慎に仕えるということは変わらんのだから』
霞み掛った情景の向こうで、見慣れているはずの笑顔で笑っているのだろう。
殺してください。将軍。
この思いは、届いただろうか。
そして私は、あなただから殺されても構わないとさえ思うんです。
将軍。
あなたを筆頭にして、私の周りには、私には無い物を持つ人間が多く居ました。
だから、羨ましかったです。
あなただから、平気です。
「撃てぇ!」
目を開けると、木の袂で寝転がっている自分。
空が、青い。
こんなにも青い空を見るのは、一体何時以来だろう。
そして……
「俺のことは思い出したのか? 元述」
と、今まで忘れていたのを知っているかのような言葉が木の上から響き、ゆっくり視線を上げる。
そこには、天上の光の影でよく見えなかったけれど、でも確かに親友の顔。
「あぁ。ようやく思い出したよ。
」