Über dieLinse
Bestimmt ist es in Ordnung
いくら家に来いって言っても、全然アイツは寄り着かない。
というよりも、分かってんだ。
テメェが来ねぇ理由も、来たくない理由もな。
だから俺も余り強く言えねぇんだよ。
無茶はするが、分かってる。
でもな
親父から初めてテメェのこと聞いたとき、少しだけ嬉しかったんだぜ?
だから、少しでもアイツから頼ってくることが、接点がない訳じゃねぇってことを教えてくれる。
 
 
 
 
 
 
 
 
「洗濯物、まとめてその袋の中入れてくれ。んでもって晩飯の買出しに行こう。」
とは言っても、夜八時過ぎの安売りの時間帯だから、少しは安く手に入るはずだ。
冬の夜は寒くて暗いけど、俺はなんとなく好きだ。
今日の分と明日の分を二人分で計算してリストアップする。
それの様子をコタツに入りながらミーを抱き、不思議そうに見るランディに
「あぁ。今から買出しだから、一緒に行くんだよ。いい?」
と言うと
「はい」
と素直に返事が返ってきた。
それにしても、今日一日で色んなことが分かった気がする。
こいつは、色んなことを知らなさ過ぎる。
会って最初に言った「秘境」っていう程じゃないが、色んな物を不思議な物を見るように珍しそうに見てたんだ。
特に驚いたのは携帯と、テレビとパソコン。
まるで、初めて見るみたいに、食い入るように見てやがったっけ。
今時軍において、テレビ・・・いや、液晶でもブラウン管でもいいが、テレビやパソコンを知らないってことはないだろうに。
まるで第一次世界大戦の時代からタイムスリップしてきたかのような奴だ。
というのが、俺の第二印象か。
二次大戦は、少なくとも今のテレビ程小さくはないが、「受信機」も「発信機」もあったからな。
んでもって、ドンクサイ。
これでよく「伍長」になれたなぁとつくづく感心するくらいに、鈍くさい。
動きがゆっくり過ぎるんだ。
まぁ、いいけどな。
 
 
「行こうか」
と洗濯物とメモを持って、食材の買出しのため、車に乗った。
・・・コイツが隣に座ると軽自動車が、とてつもなく小せぇ!狭い!!・・・デカ過ぎだ、ランディ・・・
一体何食ったらこんなデカク育つんだ?
店に入ると余計にそのデカサが目立って、始終注目の的だった。
それを気にしているのかランディが口を開く。
「あの・・・」
「いいから、気にすんな。って言っても無理なら、車に戻るか?」
こいつはコインランドリーの使い方は、多分知らないだろうからそう言ってキーを差し出した。
車の開け閉めは、駐車場で「訓練済み」だ。
「いえ・・・」
質問に否定で答える。
「なら、黙ってついて来い。」
そう言うと、黙ってついてきた。
だが、何か言いたそうなので、その質問は家に帰ってから聞くことにしよう。
飯を作る間、狭い台所に突っ立ってたって邪魔なだけなので、コタツの中に入ってもらってミーの相手をして待ってもらった。
とりあえず、晩飯はパスタと惣菜で買ってきたマカロニサラダ。ミーには猫缶。
人数多い時には、こういうザックリした食い物がいい。鍋とかカレーとか・・・
まぁ、それは置いといて。
食うぞ。
「いただきます」
そう言って、食う。
「い・・・いただきます」
と、俺に倣ってランディが言うと、「あの・・・」と、話を切り出した。
「飯の後にしてくれ」
「はい」
 
 
 
「で、話って?」
飯を食べて一段落したしたところで、今度はの方から話を切り出した。
「あの・・・どうして。俺を・・・その・・・」
最初はあんなに警戒していたのに、どうして?
「匿ったか?」
「はい・・・」
そう答えると、コタツの中から手を出して
「猫だよ。猫」
と言った。
「猫・・・ですか?」
そう言って飯を食べて腹の上に乗って眠っている白猫、ミーを見る。
「あぁ、その猫・・・ミーは・・・その、余り人に懐かないんだ。
 拾ったときからそうだった。警戒心が強くて、最初は俺も引っ掻かれたもんさ。
 その猫、左耳だったかな。余り聞こえないみたいなんだよ。
 だから余計に警戒心が強い。
 だけど、あんたには直ぐ懐いた。ってことは、そんなに悪い人間じゃないって思ったんだ。
 今だって、あんたの腹の上で寝てるだろう?」
そう言って猫を見る。
「はぁ・・・」
納得したのかしてないのか分からない声をランディが出す。
「それに、行く当てのないあんたをこの冬の寒い路頭に放り出すっていうのは、いくらなんでも目覚めが悪い」
そう言ってお茶を飲む。
「そんなんで、俺を?」
「それだけで十分さ」
そう言って、床に寝転がった。
「それに、あんたの目。あんたの目は、穏やかな目をしてる。」
ミーが懐いたのも分かるような気がする。
「はぁ・・・」
今度は、納得したような・・・そんな声で答えた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
電灯というものが消されて、辺りが真っ暗になる。
帝国にはないものばかりの物がここには溢れている。
ここは、一体どこなんだろう。
店にも物が沢山あって、どれも初めて見るような物ばかりだった。
この服にしたって、初めて着るような服だったから、最初は着方が分からなかったし・・・
一体ここは何処なんだ?
さんは、『日本国』だって言ってたけど、そんな国、帝国じゃ聞いたことがない。
こんな豊かな国は・・・知らない。
まだ、帝国じゃ戦後間もなくて、寒い中路上で寝るのが当たり前だ。
だから、放り出されたって、全然大丈夫なのに・・・
明日になれば、ここを出よう。
そして、ここはどこなのか、探ってみよう。
車で出かけたとき、青い光が所々にあった・・・けど・・・大丈夫・・・ダ。
アレ・・・は・・・ランタン・・・ノ・・・光・・・なんかじゃ・・・ない・・・
 

 
 
 
T・・・ö・・・te・・・n ・・・Sie・・・

Tö・・・te・・・n ・・・Sie・・・

Töte・・・n ・・・Sie・・・

Töten ・・・Sie・・・

Töten Sie・・・Töten Sie・・・Töten Sie

 
 
 
 
 
Töten Sie!





ガバッ
布団を跳ね上げて、起きたら・・・朝日が見えた。
「何してんの。あんた・・・随分うなされてたみたいだけど・・・大丈夫か?」
そう言って顔を覗かれて、慌てて体を後ろへ下がらせる。
「うわぁ!・・・イテッ」
ゴンッ・・・という音をさせて、後ろの壁に頭をぶつけた。
「朝っぱらから何やってるの。あ、今日ちょっと大学の後仕事あるから、俺帰るの遅くなるけど・・・」
と言って、沢山の荷物と共に家を出て行った。
一人取り残された俺は、結局コタツという足を暖める物の上にあったメモに目を留めてそれを読んだ。
そこには、見たことのある文字と一緒に、見たこともないような文字らしきモノが書かれてあった。
でも、早くここから出て行かないと。
彼に迷惑が掛る。
メモと一緒に置かれてあった鍵を、昨日教わった通りに掛けて、ドアのところから中に入れると、そこから一人立ち去っていった。
 
 
 
 
「ミー」
どこを行く当てもない。
それに、さっきから彼の猫・・・ミーが付いてくる。
まるで戻れと言われているみたいで・・・
「俺は、これ以上迷惑掛けられないから・・・ごめんな」
と、通じるのか分からないが、それでも言わずにはおられなかった。
一日通して考えて分かったこと。
この国は、とても発達している。
そして、とても豊かで、自分が居ていい場所じゃない。
俺は・・・
俺は・・・ランタン付ければ・・・人が変わってしまう、Gespenst Jagerだ。
腰に手を当てて、そこにあるはずの物を探る。
が・・・
ない。
ランタン・・・が・・・ない・・・
そう言えば、銃も・・・ない。
 
 
 
慌てて戻るも、鍵は中。
どうしよう・・・
ミーが、立ち尽くす俺の足元に擦り寄ってきて「ミー」と鳴いた。
まるで「ほら見ろ」と言わんばかりの鳴き声。
彼、さんが帰ってくるまで、ここで待つ以外に中に入る方法はなかった。
ミーを抱いて、ドアの前で座り込む。
腹は減るけれど、こんなのは慣れている。
寒いけれど、こんなのは慣れている。
吹雪いてないから、大丈夫。
それに猫が、暖かいから。
 
だから・・・大丈夫。

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管理人 芥屋 芥