theMeaders!
半世紀以上前の宣言の履行
「だって・・・これ付けると・・・お兄ちゃんの顔、よく見えないから・・・」
少年はそう言って、ニッコリと笑った。
そして
「いつか・・・また、会えたら・・・お兄ちゃんのこと、僕・・・探すね」
そう言った。
そうだ・・・今の今まで忘れていたけど・・・あの時、確かにそう言われた。
でも・・・どうして今・・・頃・・・そんなことを思い出す?

 
 
 
 

20xx
「ヒューイ・ラフォレット?
 誰ですか?それは・・・」
キョトンとした様子で少年が答えた瞬間、の表情も目の前の少年と同じく『キョトン』とした表情を浮かべる。
その表情は正に、『信じられない』といった様子だ。
え・・・?
『あの』有名なヒューイじゃない?
あの、シャーネさんの父親であり、そしてクレアの義父でもあるあの、ちょっと自分にとって複雑とまではいかないけれど、それでもちょっと

引っ掛かる関係・・・だってアイツ、ある意味身内・・・ではある、あのヒューイ・ラフォレットじゃないのか?!
と。
そして、エニスを『造った』あの老人、セラードについては、最初から考えなかった。
何故なら
フィー兄ぃに喰われたところを、目の前で見たから。
だから『ヒューイ』だと、直感的に判断してしまった。
なのに、違うのか?
だけど研究とか実験って言えば、やっぱりアイツだろう?
それを違うというのなら、じゃ、コイツは一体誰のことを言っているんだ?
・・・分からない。
何故なら俺は、アイツしか・・・よく分からないから。
もしかしたら、他の組織のヤツなのかもしれないけど、だけど少なくとも俺は、『ヒューイ・ラフォレット』というヤツの名前しか、『不死者

』を研究している不死者を知らない。
じゃぁ、・・・コイツが言っているヤツって、一体誰?
先ほど偽名を名乗れたという、相手が『不死者ではない』という事実からかの心には余裕がある。
だから、一瞬でこんな深いところまで考えが及ぶ。
伊達に70年、生きてはいない・・・ということだろうか。
それとも、他のあの時一緒に不死者となった奴等とは少々違った『利用のされ方』をされ、生きてきた所為なのかは、判断つかなかったが。




1941
「只今ぁ・・・」
いつもの様に、ドアを開ける。
自分の放浪癖はいつものことだから・・・と、不死者になる前は少しはヤグルマさんなどに心配されていたが、不死者になってからは心配もされなくなったが、本当に、つい昨日までそうやってドアを開けていたかのようにドアを開けると、背後に何かが落ちてきた・・・
というのは間違いで、何かが降りてきて、あっという間に床に転がされてしまった。
「ッテ・・・!」
慌てて顔を上げて見上げてみると、そこには見慣れた赤毛の男が立っていて、一気にの表情は明るくなった。
「クレア!」






20xx
「まぁ・・・そんなことはどうでもいいでしょう。
 ところで、あなたは覚えていますか?
 あの時の僕を・・・」
少年がそう言うと同時に、右目が赤く変色・・・違う。
元々赤い・・・目・・・アカイ・・・メ・・・だ。
でも・・・なんで?
「もしかして・・・どこかで会った?」
記憶力は悪い方じゃないけれど、でも自分にとって、イヤな事や印象に残らない出来事は直ぐに忘れてしまう。
それは、自分が不死者になる前から変わらないし、もう、これで70年近くやってきたから、今更変われないだろうと、は思っている。
それに中途半端な『見た目』の年齢なためか、色々と利用される方が今までに多かったし・・・そんなことを一々覚えていたのでは、心が保てな

い。
ラックさんなら結構覚えているようだけど・・・でも、あの人はあの人なりに心を整理して生きているから・・・
やり方は違えど、目的が同じであることには変わらない。
「会った・・・ねぇ・・・
 会いましたよ。
 あなたは覚えていないかもしれませんが、僕は覚えていますよ。
 何せこの体には、六つの世界を廻った記憶が、刻まれているのですから・・・」
そう言うと、少年の赤い方の目が更に赤く変色していく。
「覚えてますか?あの時・・・あなたは僕にずっと付き添ってくれたこと・・・」
「ごめん。
 全っ然覚えてない」
見た目は同じような年齢でも、やはり中身が違うのか。
その言葉で、周りに流れていた空気が一掃された。
「大体俺が付き添ったりしたヤツって、今までに何十人居ると思ってんのさ」
その言葉で、あの後、この少年が生きてきた世界が、なんとなく把握できる。
・・・よし・・・そろそろ・・・抜ける。






1941
「だから。
 お前なら、できると思って・・・な」
「なんだよそれ」
見下ろされた格好だが、クレアなら許せる。
だけど、
「久しぶりに帰ってきて、コレが挨拶じゃ・・・ちょっと歓迎されてないの?って考えちゃうよ、俺」
仕掛けられたのは、縄抜け。
要は、『これを解いて脱出してみろ』ってことらしい。
だけど帰ってきて早々コレでは、少しだけ虚しくもありそして・・・少しだけ悲しくもあるのだが、それでも、誰も居ないよりかは全然マシだと

は考える。
もしかしたら自分が居ない間、皆がもし『喰われていたら』・・・と思ってしまうからだが、それ以上に、いくら『死なない』と分かっていて

も・・・誰も居ないよりかは、全然マシだから。
「俺直伝の縄抜けだ。
 コレが出来たら、どんなものでも抜けられる」
そう言うとクレアは、ニッコリと笑い膝を折りに顔を近づけその耳元で
「もし抜けられなかったら、お前を『レイルトレーサー』の時のように『殺してやる』から」
と言った。






20xx
結局あの後、事務所で乱闘騒ぎを起こし、それでも綺麗に片付けたはずなのにヤグルマさんにはバレバレでクレアと共に叱られたっけ・・・
結局に与えられたのは憐れみなどではなく、罰としてのただ働きだった。
その後も、『日本人』ってことで、色々・・・は置いといて。
なんて、そんな昔・・・とはにとっては思えないほどの、つい70年ほど前の出来事が鮮明に蘇る。
そして今、そのクレア直伝の縄抜けが、完了した。
あとは逃げ出すタイミングだけだ。
なんだかあの赤いほうの目は少しばかし異様だが、それでもは何も感じない。
恐らく、『何か』を彼は行っているのだろうが、コレと言って異変は感じない。
そして、それが効いてないと分かったのか、少年が一息小さく息を吐いた。
「・・・どうやら、幻覚も効かないようですね」
というと、スッと手を伸ばしてきての顎を掴んで上向かせると
「やはり、口で伝えたほうが、手っ取り早かったですね。
 僕は、あなた・・・を・・・」
その時、少年の体が、吹っ飛んだ。






1941
「殺してやるって、これまた物騒だなぁクレア」
「あぁ違った。
 もし、これからお前がピンチになったら、いつでも助けに行ってやるって、言いたかったんだ」
「何それ」
「お前が不死者でも、関係ない。
 お前は俺の『義弟(おとうと)』だ。
 お前は、俺が守るべき存在で、俺はお前を守らなければならない存在・・・分かるか?
「わ・・・かるけど・・・クレア、それって・・・」
それ以上の言葉が、止まる。
何故なら、『こんな目』をしているときのクレアを刺激してはならないと、昔からの経験がに言葉を止めさせた。


自分が不死になって、あれから70年。
老化もせず、死なない存在となった自分の目の前に立つのは、70年の歳月を生き、確実に年を重ねた彼の姿。
だけど一瞬だけ、の瞳には、あの頃の彼の姿が診えた。


「クレア!!」
アトガキ
バッカーノ!
2023/08/07 CSS書式
2008/03/11
管理人 芥屋 芥