theMeaders!
そは『仕事』なりけりや
1945 08.xx
自分はこのまま死ぬ・・・のか?
灼熱の太陽の熱が身体を照り付けて、生きる気力を奪っていく。
死ぬ・・・のかな・・・
そう思った時に、影が降りた。
何?
そう思ったのは一瞬だった。
次の瞬間には、声が聞こえてきたから、やはり誰かいるのだろうことがハッキリと分かった。
「ほお、これはこれは」
・・・誰?
「君は彼によく似ているね」
・・・ナニ・・・イッテルノ?
「君は、生きたいか?」
・・・生キ・・・タイ?
「そう。
 君が彼によく似ているから、ちょっと死んでほしくないんだ。
 ねぇ、生きたい?それとも、このまま死にたい?」
・・・イキタイ・・・
それは、触れてはいけないはずの日常から来た男の囁き。
もし、この時、死を望んでいたら、きっとこんなことにはならなかったハズ。






1946 12.xx

今日は、お兄ちゃんが来てくれる。
未だに身体が灼かれている僕に、会いにきてくれる。
この部屋は、お兄ちゃんしか入れない。
だから・・・早く会いたいな・・・
ガチャ・・・
とドアが開く。
だけど、制御できない、訳の分からない力は、その開いたドアへと向かっていった。
「うわぁ!」
医者がドアの向こうで叫ぶ。
やっぱり・・・ダメか・・・
だけど、一人の人間が一歩、それに負けじとこの部屋へと入ってきたから、少年が声を出した。
「お兄ちゃん。来てくれたんだ」
 
 
真夏の灼熱の太陽が容赦なく、その病院へ歩く彼を照り付けていく。
まだ残暑厳しいこの国に彼はいた。
いや、送り込まれたといった方が正しい。
アメリカの機関は自分達が生み出し、人類史上初めて一年前に使った核兵器の調査を、徹底的に行うつもりのようだ。
そして今彼の目の前にいるのは、その対象の子供達だった。
「モルヒネを打っていくしか、彼らの痛みを軽減できない」
「そう・・・ですか」
「あぁ」
「それに、今まで前例のない症状の子供もいるし・・・
 全く、核兵器というのは・・・」
「すみません」
「いや、君を責めたところで、どうしようもないからな」
「それにしても、また随分と・・・」
そう言いながら、少年がメモを取っていく。
淡々と、冷静に。
だがそんな彼のその表情が一瞬にして笑顔に変わるのは、彼らが病室に足を踏み入れたときだ。
「あっ!」
兄ちゃん?!」
「やあ。
 元気だったか?皆」
 
 
 
「問題は『あの子』なのだよ」
「あの子?」
「あぁ。
 全身から得体の知れない炎のようなものが出ていてな。
 まず防熱服を着て室内に入り、睡眠薬を投与して意識を失わせてからでないと我々は病室に入ることもできん。
 それに時折、子供とは思えないようなことを口走る、・・・不気味な子供さ」
「今回の調査の目的は、ソレ・・・ですか」
「そういうこと。
 君なら、あの子と直接話ができるだろう?」
「身体を焼かれながら『楽しくお話する』というのも、また、キツイ話だ」
「何を言ってる。
 それが、君の『仕事』だろう?」






20xx年
「なんだか、街の様子が物騒だよなぁ・・・」
一人ごちながら、学校帰りのがアパートへと戻る途中のことだった。
「よぉ」
そんな声が掛ったが、はその声を無視した。
やがて襲ってきた衝撃。
「ったく。人が安全に無視してたら、イキナリか」
バシッ!
とその襲ってきたその物体を受け止めた直後、身体に異変を感じ取る。
毒?!
「お前はランキングには載っていない生徒だが、あの人直々につれて来いって言われてるんでね」
目の前に立つのは、ニットの帽子を被り眼鏡をかけて、手にヨーヨーを持った見慣れない制服の生徒。
「ランキング?何の話?」
そりゃなぁ・・・載る訳ねぇし・・・
それにしても、毒とはちょっと厄介だな。
いくら不死者とはいえ、毒やウィルスには再生に少し時間が掛る。
よし。
行ける。
だが『効いているフリ』をするというのも、中々骨が折れる話だが・・・
膝を地面につけて、体制を整えている間に、『連れて行く』と言った少年(ガキ)が近づいて来る。
いいか、
こういうときは、タイミングの問題なんだ。
と、クレア・・・じゃなかった、フェリックスに教わったことが頭をよぎる。
「誰の命令か知らないけど、いい加減家に・・・帰らせてくれないかなぁ!」
最後のところだけ徐々に強く言い放って、油断している相手の足を掴み手を地面に置いて、そのまま逆立ちの要領で相手の顔面にケリを入れてやった。
こちとらお前達と違って伊達に15+70年、生きてないってんの!
ガツンッ!
彼の頬に足がもろに当たるのがハッキリとわかり、そのまま彼が吹っ飛んだ。
だが、眼鏡の少年にも意地があったようで、上を向いているの足首にヨーヨーの糸を巻きつけ、思いっきり引っ張った。
糸じゃない。これはワイヤーだ!
痛いな・・・
そう思ったのも一瞬だった。
ブチッブチッ!!
というイヤな音が鳴り響き、足首が足から離れ、その足がワイヤーごと彼のところへ飛んでいった・・・ハズだった。
だが・・・
「なんだよ。
 信じられねぇっていう顔してるな」
と言ってそのままバランス悪く立ち上がっただったのだが・・・
それと共に、ビチビチビチ・・・とも、グジュグジュグジュとも取れる音をさせて、ワイヤーに引っ掛かっている足がスポンと、まるで意思があるかのように離れると、それはやがて一つの意思あるモノとして歩き出し、やがて主の身体にピタリとつくと、立ち上がったの足首として、再生された。
そして
「ったく。
 靴下が台無しだ。
 それと、あんた。
 俺の靴返してくれないか?
 『中身』は帰ってきても、流石にソレまでは返ってこないからさぁ」
と、なんでもないように平然とした態度で破れた靴下を確認し、目の前に立つニット帽子に眼鏡姿の制服少年の足元に転がる自分の靴を指差して言う。
確かにさっき、彼の足首をワイヤーで引きちぎったハズ・・・
「なぁ・・・頼むよ。
 あんたが何故俺を襲ったのかも、話、聞きたいしさ」







1941年
「えぇぇ?!じゃ、クレアはクレアじゃなくなったの?!」
帰ってきて、速攻そんな話を聞かされて、は心底驚いた。
「あぁ。
 まぁー何て言うかな。
 あの汽車の中で俺、死んでることになってるし・・・
 そこまでは俺も構わなかったんだけど、戸籍がなくちゃ、シャーネと結婚できないだろう?」
「シャーネ?
 あぁ、噂の奥さんね」
「そう。
 あの時の汽車の中で見つけた、最高の俺の女さ。
 ちょっっと気が強いところなんか、ホント、惚れるぜ?」
「ふうん。
 じゃぁさ、クレアは一体『誰』になったの?」
バシィ!
と、彼の蹴りを腕で受け流しながら、が問いただす。
「俺か?
 そうだなぁ。
 あの名前、何ていったっけ・・・
 あぁ。
 そうだ。
 『フェリックス・ウォーケン』」
「変な名前」
「なにぃ!」
「『ヴィーノ』の方が・・・って、クレア!ギブ・・・ギブ・・・ギブアップ!!」
が慌てて床を叩くと、彼がの首に巻きつかせていた腕の力を解いた。
「それで、シャーネさんに俺はいつ会わせてくれるんだ?」
一通り部屋を片付け、緑茶を入れてクレアに聞くが
「そうだなぁ。
 あぁ見えてあいつ結構シャイだからなぁ」
とさっきからクレアは話をはぐらかすばかりだ。
「ふーん。
 会わす気ないなら、ないでいいよ。
 別に俺は急がないし。
 クレアは、もう一杯飲む?」
「あぁ、もらおう」
そう言って、彼のところにポットを持って歩いていったときだった。
カランという音を立てて、入ってきた一人の男に、二人の視線が向かったのは。
「ラック?」
「ラックさん?」
アトガキ
バッカーノ!
2023/08/07 CSS書式
2008/02/04
管理人 芥屋 芥