Web Clap LOG-8
LOVELESS 東雲

 うるさい教室。
 ガキって皆こうなのかねぇ……
 どうなんだろう。
 ま、『まとも』な少年(ガキ)時代送ってない俺にとっちゃ、初めて見る世界ってことだけは確かだな。

 捨て置け。

 それが一番だ。

 教室を出ると、真っ先に体育倉庫に向かうと、屋上に行った。
 張り巡らされたフェンスの強度を確かめるとニヤリと笑って、倉庫から取ってきたロープを結ぶ。
 そして、そこからは横壁の運動。
 これが案外気持ちいい。
 まぁ、訓練で俺は一番これが好きだったから、な。

「もう。何やってるんですか、先輩」
 東雲がフェンス越しに俺に向かって声を掛けた。
「何って、ビル降下訓練だよ。ちょっと待て。今そっち行くから」
 ったく、降りるより登る方が体力いるんだぞ?

 

「危ないですよ?」
 と、フェンスの外側に居て、足を空中に投げ出して座る俺を見て東雲が一応『注意』をする。
 少しでもバランスが崩れたら、俺は空中に放りだされるのを危ないと思ったのだろう。
 だがこんなことは慣れている。
 それにさっきは側壁に足をつけていたんだぞ?
「それ、誰に向かって言ってんだよ。お前、俺のバランス感覚疑ってるの?」
 そう言うと
「もう。一応『先生』からの注意です。それにしても、先輩全然クラスに馴染んでないじゃないですか! ちょっとは小学生らしくしてくださいよ……」
 最後の言葉は、弱かった。
 呟きっていうか、そんな感じだったけど
「聞き捨てならないなその科白。あのなぁ、今更俺がガキらしくできるわけないだろうが」
――タダでさえこの年齢までは戦場にいたんだし
 最後の言葉は、言えない……よな。流石に。
「それは、分かってますけど……でも、羽渡さんが一生懸命話し掛けてるのに、無視はダメだと思います」
 そう言って軽く睨んできた。
 おぉ。ちょっとは成長してるんだな、コイツも。
 と、別の考えが頭に浮かぶ。

 初めて会ったときは、教育研修だったかな。
 公立の小学校の教員に一発で合格したから、それなりに優秀だってのはすぐに分かった。
 分かってけど、コイツ自身もちょっとガキっぽかっていうのだけは、記憶にある。
 まぁ、変わってないっていえば、変わってないのか……

「いいんだよ。馴染まなくても。どうせ俺はいつか消える。この通常ではない状態だって、いつかは終わりが来るんだ。次会うときは、俺はお前よりも年上になってるんだから気にするなよ」
「でも、それじゃ謎の人物のままですよ?」
 コイツのこういう天然なところ、俺は案外好きだったりする。
「ぶっ……はっはっはっはっは、いいねぇ、『謎の人物』ってさぁ! やっぱ東雲、お前最高だよ!」
 笑いが止まらん! 最高だ! コイツ!!

「先輩、笑いすぎです!」
 顔を真っ赤にしながら東雲がそう言っても、俺は笑いを収めなかった。
「いい……お前発想が天然だよ。いいねぇ、そういう考えの自由さってさ。俺にはないから、羨ましく思ってるだけさ。それにしても、謎の人物ねぇ……」
「まだ言う気ですか?」
 頬を膨らませて、ちょっと怒ってるか?

「あの羽渡って子によく言っとけ。もう俺に話し掛けるなって。それとあの青柳って子にもだ」
「え? 立夏君?」
 意外な顔で俺を見る。
 ってことは、気付いてないな。

「視線が煩いんだよ、青柳は。それと、あいつの兄貴だがな、あれ、生きてるよ。……じゃな!」
 と言って、東雲がその言葉に反応する前に、そこから身体を下に自分で放り投げた。

「ちょ……先輩! どういう意味ですか!? 立夏クンのお兄さんが生きてるなんて!」
 東雲がそう叫んでたけど、この際気にしなかった。
『何故かは自分で考えろ。俺が元に戻るまでの宿題だ』
 と、壁の途中に足を付けて、彼女に手旗信号でそう告げてると俺は今度こそ地面に降り立った。
アトガキ
混合作 SkyLordの庭球先生主←東雲先生(後輩設定)
そんな感じ
2012/03/11 書式修正
2007/01/31
管理人 芥屋 芥