「ドイツードイツー、あれ凄いねー」
飛んでる飛行機を見上げて、明るい青年の声がそこに響く。
「あ、あぁ。そうだな。って、あれはお前んところと協力して作った奴じゃないか」
答えるのは、少し硬い声音の青年の声だった。
太陽の日差しが眩しい空を見上げていた二人に、聞きなれた関西系の言葉(スペイン語)が届く。
「あー!こんなところに居ったんかいな。自分等待ってたんや、さっきから随分探しとったんやでー。って、早よぉ来ぃ、これから挨拶あるんやからぁ」
問答無用で二人をそこから連れ出すと、彼は慌しくどこかに消えていく。
その様子を、スウェーデンに掴まっていたが機体を整備しながらポカンとした表情で見つめていた。
Typhoon-02
「腕、止まってっぞ」
そんな外野に頓着せず、動きが止まったに金髪碧眼の背の高い男が注意を入れる。
「あ、すみません。だけどあの人たちって……もしかしてって思いまして」
なんとなく、お互いの呼び名で見当をつけたが注意をしてきた金髪碧眼の男、スウェーデンに確認を取った。
「あぁ。イタリアにドイツだな。今から、さっぎ飛んでった奴との連携で挨拶するらしいから、それでだろ」
と素っ気無い態度で答える彼は、に作業を再開するように言うと他の整備員に何かを言って、そのままどこかに消えてしまった。
残されたはまるで欧米人のように肩をすくめると、残された整備員と共に作業を再開していった。


相変わらずRIATは盛況で、流石世界中から人がたくさん訪れる世界最高峰の一つと言われる航空祭だなぁ。
と、は機体が置かれてあるハンガー(格納庫)から外を見て思った。
外からは、空を行く戦闘機のエンジン音が止め処なく轟いていて、この音を聞いているとなんだか……
そう思った時だった。
「ん」
という声じゃないような声が届き、冷たい何かが頬に当てられたのは。
思いもかけない急なことで珍しくオーバーアクションで驚いたが、思いっきり仰け反った。
「うひゃぁ!」
普段絶対出さないような驚いた声に、隣に立つスウェーデンのみならず周りから注目を浴びてはますます挙動不審になっていく。
その様子を、ここに居た客に混じって見ていたのがアメリカだった。
「しょうがないなぁ」
と、空気を読む気がない彼はそう呟きながら未だ挙動不審なの襟首にムンズと手を伸ばして掴むと、そのままどこかに去っていこうとする。
「あ……あの、あの……えっと」
急に引っ張られる格好となったが、状況がつかめてないのか襟首を掴むアメリカの行動に、ただただ混乱するばかりだった。



「全く。君は案外目立つんだからね。もう少し大人しくしててもらわないと」
と、機体が置かれてあるハンガーから、その建物の影までを引っ張って行くとそのままそこにあったベンチにを座らせ、自分は片手を腰に当ててもう片方の指をを指差すといった説教の体勢を取っている。
「はぁ……でも、俺みたいな背の人ってこの辺りじゃ一杯います……」
「しゃらーっぷ!」
の反論を、まるで子供が駄々をこねて言うような、少し冗談混じりの怒った声で黙らせる。
「君は、分かってると思うけど今は俺の国の人間なんだから、他の国の機体……に」
「連れて来ようと提案したのは俺だぞ」
建物の影から現れたのは、不機嫌な様子を隠さないイギリスさんだった。
「全く。あんな目立つ退場の仕方しやがって。あの後スウェーデンを宥めるのにだなぁ」
「あーあー、分かったから。で、後ろを付いてきて一体何の用?」
グチこぼすイギリスの話が長くなると思ったのか、続けられようとしていた彼の言葉をアメリカが「はいはい」といった具合で遮って用件を聞いた。
自分が騒ぎを大きくしてしまったことを彼らに詫びるタイミングをすっかり失ったが、どうしようかと迷っている間にもイギリスは話を続けている。
「あ、そうか。って、これはここに来ている全員が賛成したことなんだがな」
もったいぶった前置きをすると、やはりアメリカが横槍を入れた。
「全員って、君、俺のこと忘れてない?」
「うるせぇなぁ。話を聞けばお前だって賛成するさ」
何のことだか分からないと、仲間外れとは違う、自分が居ないところで事態が動いたことが、しかもそれがイギリス主導で動いていたことが気にいらないのか、アメリカは不機嫌な顔を隠さない。
「君が主導で動くと、いっつも中途半端になるから聞いてるの」
そんな彼の言葉に眉がピクリと動いたが何とか無視して、イギリスはの前に立って言う。
、後日のファンボローには、出なくて良い」
その言葉に、さっきまで不平不満を隠さなかったアメリカが取り繕うように賛同した。
「ま、まぁそうだね。そうだよ。君は日本での仕事もあるだろうし。うん。確かにそうだね。そうしなよ」
明後日の方を見ながら、賛同の言葉を述べるアメリカに微妙な空気が流れたのは分かったのだが、それが何なのかまではには分からなかった。
そんな彼らの様子にただただ
「はぁ。分かりました」
と答えるしか出来なくてその場は何とか凌いだのだが……


二人は用があるからと、先ほどアメリカによって無理矢理連れだされたハンガーに一人戻ったが真っ先にある人物の元へと走る。
「さっきは、驚いてすみませんでした」
自分の代わりに機体の点検をやっていた彼に向かって言い訳せずに謝ると感情が読みづらい彼、スウェーデンがそのポケットから何かを差し出した。
「ん」
「しかも作業を途中で放り出してしまって、あのこれ……は?」
差し出された缶珈琲に、が恐る恐る意図を尋ねる。
「この中、暑いがら」
手短に理由を述べて、再び差し出してくる。
確かにこの中は暑い。
外は案外涼しいんだけど、でも、この中は少し暑い。まさかそれを気遣って?
「あ、ありがとうございます。頂きます!」
嬉しいのか、笑顔で答えてコーヒーを飲む秋の隣をスッと陣取ったスウェーデン。
そんな彼らを遠巻きに見ていたスペインが、呟いた。

「やっぱ、絵になるわぁ」
と。






その後、スペインがどうなったのかは分からない。
その言葉を聞いたイギリスとアメリカに何かをされたらしいのだが、それも深くは語らなかった。
「いや、えぇねん。俺なんて……」
ただあの陽気なスペインがしばらく沈んいたことからして、相当なことをされたみたいだっていうのは見当ついたけれど。
真相は、闇の中である。
アトガキ
結局,スーさん落ちのスペインさんオチっぽく。
嘘が下手そうなスペインさん。
でもそう言うところが好きです。
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2009/01/21 初稿
管理人 芥屋 芥