「なぁ・・・アレ、すっごいなぁ」
七月の空を見上げて、関西弁の男が呟く。
太陽が高い。
絶好の日よりや。
「なんだスペイン。来ていたのか」
と、振り返りながら言ってきた男はイギリス言うてな。
一応、あの戦闘機を共同で開発した、言わば仲間の内の一人や。
後の二人は、今はこの会場のどっかには居るみたいやけど、少なくともここには居らん。
まぁ、居ったら居ったで、騒がしいけどな。
Typhoon
イギリスの言葉に手を上げるだけで答えて、隣に立って質問した。
「なぁイギリス。
 あのスウェーデンの戦闘機、一体誰が操縦してんの?」
あんなん、普通出来るもんやないやろう・・・
せやけど、なんなん?
あのパイロットは・・・
「彼か?
 彼は、と言ってな。
 少々複雑な経歴の持ち主だが、腕はご覧の通り確かな男さ。
 それより、あと二時間後には我々の作った戦闘機のフライトがあるハズだが、準備は大丈夫か?」
と聞いてきたから、
「まぁ・・・大丈夫やろう。
 って、今日飛ぶのはドイツ軍のタイフーンやんか。何言うてんのんな」
「そうか。
 そうだったな。ま。あのドイツのことだから、抜かりはないとは思うが・・・」
「ま、俺はただ単にオブザーバーとして来てるだけやし。結構気が楽って言えば、楽やわな」
というと
「貴様は気楽でも、俺は違うからな」
といった、結構辛らつな言葉が返ってきた。
「相変わらずやなぁ・・・」
と、イギリスの言葉に答え、スペインは空を見上げて、スウェーデンが開発した今展示飛行をしている『グリペン』という戦闘機を見上げる。
今会場をデデュケーションパスして通り過ぎていった後垂直に空に向かっていった、その自分達が開発したタイフーンよりも一回り小さな戦闘機を見て、
「せやけど、ホンマすごい動きするなぁ・・・」
と呟いた。
「昨日は、アメリカのホーネットに乗っていたんだが、今日はスウェーデンとの頼みで、グリペンに乗っているというわけだ」
「え?!
 あのアメリカのホーネットに?!
 嘘やぁ」
冗談かと思った。
せやけど
「嘘でもジョークでもないぞスペイン。
 アイツは、そういう男なんだと、アメリカが言っていた」
「アイツって・・・
 その、ってヤツのことか?」
と問い返すと、コクリとイギリスが頷く。
でも・・・ちょっと待って。
なんか、聞いたことあるで?
その『』っていう名前・・・
 
 
「スウェーデン、ちょっと。えぇか?」
機体整備をやっているスウェーデンに話し掛ける。
「ん・・・」
掛った声にその手を止めて立ち上がり、振り返った彼はやっぱり不機嫌な顔してるけど・・・
まぁ・・・大丈夫やろ。
そう判断して、スペインは構わず続けた。
「ちょっと、さっき飛んでたパイロットに会いたいねんけど、会わせてくれるか?」
いきなり用件を言ってみた。
「あ"?」
なんか顔がちょっと怖なった気がするけど、そんなん構へん。
「せやから、さっきのパイロットに会いたいねんて」
というと、一瞬の沈黙が降りた。
「え・・・な・・・なんや?」
顔、自分引きつっとるがな・・・
なんて、そんな自分自身への突っ込みは心の中でしている間に、スウェーデンの指がゆっくりと後ろをさす。
それに釣られるようにして、スペインはゆっくりと顔を後ろへと向けていった。
そこに居たのは、さっきまでフライトしてたと思われる黒髪の男が立っていた。
「あ・・・んたが、・・・か?」
確認するように言うと
「あ・・・ハイ」
と肯定する返事が返ってきた。
それも、スペイン語で!
それ以上に、やっぱ俺、この子知ってるわ!
「やっぱり!やないか!
 なんや、元気にしてたか?それにしてもエライ大きなったやん。背、今ナンボや?」
畳み掛けるようにして繰り出されるスペイン語といきなり抱きついてきてたスペインに、ただただ呆気に取られているが思わず一歩後ろに下がる。
「あ・・・あの・・・どこかで会いましたっけ?」
困った様子で問い掛ける
「会ったも何も、自分、俺のとこに何ヶ月か居ったやろう?
 もしかして、忘れたんか?」
と、質問をまた畳み掛けてくる。
それに困っていると、スウェーデンが動いた。
「スペイン・・・が困ってるんだが・・・」
と、間に入ってきて密着していた二人の体をバリッと引き剥がした。
 
 
 
 
 
「そ・・・その節は、お世話になりました」
改めて、は礼を述べる。
「何言うてんの。
 そういうときはお互い様やて、俺んとこの上司も言ってたで?
 まぁ、ちょっと書類は改ざんしとったみたいやけど。
 せやけど、そんなん気にせんと、今日は飲もうや」
な?
と笑顔で言われて、目の前に盛り付けられたスペイン料理にスーさんと二人、唖然とする。
それにしても、どこかで会ったっけ?
そりゃ、確かに少しの間スペインにいたことは事実だけど・・・
でもどうして彼がそれを知っているのかは、なんとなく分かった。
彼は『スペイン』なのだ。
現に
「スペイン・・・ちょっどこれは多ぐないか?」
とスーさんが彼に聞いている。
「大丈夫やって大丈夫やって。イケルイケル
 あ!イギリスにアメリカ!お前等も来ぃ」
と、レストランのバルコニーからそう言ってスペインが手を振った。
 
「スペインだね」
「見れば分かる」
そう言って、上を見上げた二人は
「どうしたんだい?スペイン、何か良いことでもあったのかい?」
とアメリカが問うと、
「今からメシ!その後は・・・シエスタ!」
「シエスタって。
 お前なぁ。俺たちはそんなことはしないんだぞ?」
「せやけど、もしよるで?」
と、天然なことを言ってのけた。
「あ!あの!俺はそんなことしませんから!」
慌ててが身を乗り出して否定する。
下では、お互い顔を見合わせたイギリスとアメリカの二人が何やら相談していた。
「今から向かうよ」
そうアメリカが言うと、二人は店に入ってきた。
 
 
「メシは、やっぱ大勢で食べた方が楽しいやろ?」
と、何食わぬ顔で言うのはいいけど・・・
アメリカ・イギリス・スペイン、そしてスウェーデンの四ヶ国に囲まれて流石に緊張しないわけにはいかない・・・だろう。
とは言え、始終和やかな雰囲気だったのは、スペインのお陰か。
彼は、場の空気を和やかに変えてしまう何かがあるような気がする。
メシを食べた後、結局シエスタはやらず、ただ二人を来させるための口実だったようで。
午後の基地の行程をスペインは難なくこなしていった。
昼からの一発目の飛行は、ドイツ版の『タイフーン』
なるほど。
だからスペインが来ていたのか・・・
そう、思った。
 
 
 
 
ということは・・・もしかして・・・
アトガキ
スペイン・イギリス・・・あと二ヶ国が参加してます。
ドイツと後は,どこでしょう〜
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2007/09/19 初稿
管理人 芥屋 芥