正直言って、びっくりした。
世界って、こんなに狭かったっけ?
・・・いや・・・いいや。
深く考えるのは止そう。
なんて思いながらボー然と目の前に広がった基地を見上げて、は思わずため息を吐いた。
まったく。
これでも学校の休み取るの大変だったんですからね・・・
なんて泣きついたところで、責任を取るのは自分自身だ。
RIAT-2
「やぁ!来てくれたんだね?!」
笑顔全開で航空機を整備しながらそう言って手を振ってきたのは、ラフに軍の服を着崩した眼鏡をかけた金髪の男だった。
確か彼の名は『アメリカ』といったっけ・・・
などと思っていると、見慣れた人がやってきては顔を上げた。
ん?
と。
「よぉ。。元気だったか?」
キッチリと軍服を着た(多分これはイギリス軍の物)金髪の男が言ってきた。
「あ。はい。えっと・・・イギリス・・・さん?」
と、答えつつは、彼が今回の騒動の発端の人・・・イギリス・・・さんって言ったっけと思いを巡らせる。
そう言えばこの三人が家に来た時、あまり彼とは話せなかったな・・・
は思った。
って、アレ?もう一人の・・・
「あの・・・先日一緒に来られた黒髪の人は?」
と問うと
「あぁ日本か?日本は参加していない。
 というより、参加しようものなら、ヤツの上司やら何やらがうるさく言ってくるからな。
 その辺りはお前だって知ってるだろう?」
と言いつつ、前を見て航空機の整備を手伝っているアメリカを見やる。
それを見ては思い至った。
――あぁ。そうか。
と。
 
 
 
 
 
 
 
乗っていた戦闘機がスポットに入り、観客達が見えているところから自分が見えなくなる位置まで来たところで、無線にアメリカさんから声が掛った。
『ねぇ。やはり君の操縦テクはすごいよ。
 ねぇ。今からでも遅くないから、本格的に戻る気はないかい?』
と。
タワーへスポットのリクエストを出した後のレスポンス待ちの中、彼と会話した。
公開されている周波数ではないから、恐らく観客達の中でこの会話を聞いている人は少ないはずだ、とは思った。
「いいえ。自分は、本格的に戻る気は今のところありません。」
と、ハッキリと『NO』を彼に伝える。
それを聞くと彼の声のトーンが落ちて
『そうか・・・
 でも、いつか、もしかしたら召集が掛るかもしれないから、その時は・・・』
「その時が来れば・・・ですが、あなたの国はとても優秀な人が多いので、自分に呼び出しが掛る前に、事が終わっていそうですけどね」
は彼を持ち上げた。
実際、今までがそうだった。
なんとか、召集が掛るまえに、かの国は自分で対処している。
だからこそ自分が日本で中学の教師という、毎日が驚きの連続な日々を送れている。
そのことに感謝はするが、だからと言って、自ら進んで戻るということは、できるならしたくないから。
 
 
 
「うれしそうだったな」
その夜、与えられた部屋から出たところでスーさんとバッタリ出くわした。
そう言えば今日は一日、グリペンは地上展示だったな・・・
と、ずっとその機体の前に置かれたイスに座っていた彼を思い出して思った。
明日のフライト計画には編入されているから、本格的な整備は明日の朝一から・・・という訳だ。
「えぇ。久しぶりのホーネットでしたから。
 それにタワーが『好きにしていいよ』って言ってきたので、それでちょっとハメを外してしまいました」
そう言うと、少し残念そうな表情を彼は見せた。
「なぁ・・・・・・
 ・・・いや・・・何でも無い」
「スーさん?」
「いや・・・何でも無い」
でも、こう言うときは相手が何かを言いたいのだということは、これまでの経験(こと)から分かっている
「話してください。話、聞きますよ」
と、ゆっくりと相手に言った。
 
 
 
「う〜ん・・・今日のスウェーデンの飛行機、凄くない?」
と、空を見ながら呟くのはアメリカだ。
「貴様もそう思うか?」
「うん。
 なんだか戦闘機が生き生きしてる気がするんだ。
 イギリス、君、何かしたかい?」
本当は『した』と言いたいが、アメリカに真実を話すのは何だかシャクのような気がしたからな。
「いいや。俺は何も」
と空を見上げて答えた。
いいじゃないか。
元々は俺がアメリカの話すの話に興味を持ったことから始まったのなら。
その願いを聞き入れて、それでが生き生きするのなら、それで・・・な。
アトガキ
スウェーデン・・・オチ?(半分イギリスオチとも言う?)
RIATネタ・・・小話
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2007/08/22 初稿
管理人 芥屋 芥