『スウェーデン!
 今君、どこに居るんだい?』
土曜の朝の忙しい時間に掛ってきた電話に出たら、相手は名乗りもせずにそう言った。
やたら元気そうな男の声。
でも、子供の声ではなく、成人だ。
「・・・あ・・・の・・・どちら様でしょう・・・」
問い返すと彼はコホンと咳払いをして
『あ、失礼。俺はアメリカっていうんだ。よろしく
 ねぇ、スウェーデンがそっちに居ない?』
相手は、こともあろうに『アメリカ』と名乗った。
もしかして・・・
それにしても、なんだって俺の名前知ってる?!
とか思ったけど、なんだかそれを言い出すとキリがなさそうなので、やめた。
電話を代わったは、代わりに出たスウェーデンに後を任し、出勤していった。
RIAT
一日も終わり。
後は帰るだけで、職員駐車場へと足を向けて。
スーさんが来るまでは誰も待ってなかったあの家に今居るスーさんは、どうやら母さんの頼みで様子を見にきただけ・・・だったはずなんだけど。
なんだか最近はスーさん自身が、結構居心地良く居着いてるような気がするような・・・
まぁ、いいか
などと自分で納得しながら、それでも悪くは無いと、思う。
『家で誰かが待っている』などという状況は、今までの人生で初めてのこと・・・だからな。
それにしても、昼間スーさんは何をやっているかというと。
どうやら、日本のスウェーデン大使館の方に行ってるらしい。
との情報が、その筋の人間から流れてきた。
なるほど。
ま、彼自身が『国』な以上、かの国の大使館に入れないってことは・・・ないだろうからな。
そこまで考えて、はアクセルを踏んだ。
 
 
 
「あ!帰ってきた!」
ガチャ・・・と家のドアを開けると、ドアの向こうからそんな声が響いてきた。
誰?!
疑うのも無理はない。
その声の持つ明るさは、絶対にスウェーデンが持つものではなかったから。
そして何より、その声は朝の電話の相手の声にそっくりだったのだから。
それにしても・・・なんで??
ドアを完全に開けきると、玄関にはシャツと綿パンを着た少し怒ったような表情に見えるスウェーデンと、ランニングシャツと短パンというラフな格好の眼鏡をかけた金髪の青年と、少し小柄な黒髪のT-シャツにジーンズ姿の青年?が居て。
そしてその奥から響くもう一人の声。
「アメリカ。余りはしゃぐな。」
その声は、少し貫禄のある声だった。
「あ・・・あの・・・」
全ての言葉は、そこで発することは許されなかった。
途端、眼鏡をかけた明るい方の青年がグイッとを引っ張り、家に無理矢理上がらせた。
奥に居たのは、ソファに座るキッチリとしたスーツ姿で紅茶を飲む金髪の青年がいた。
「あ・・・あの・・・スーさん。これは・・・一体?」
朝の電話で一体何があったのか?
そもそも、一体なんでこんなにも人がいるのか!?
そんな疑問が次から次へと湧いてくるが、そのどれもが言葉にならずに消えていく。
だから、とりあえずスーさんに説明を求めたんだけど・・・
求めておいて、は後悔した。
そう言えば、スーさんって口数少ないんだった!
と。
 
 
 
 
 
 
仕切ったのは、アメリカと名乗った男だった。
彼は一つ咳払いをすると
「初めまして
 俺はアメリカ。こいつはイギリス。いっつもムスッてしてるけど、結構イイヤツだよ。
 それで、黒い髪は日本さ。
 あ、スウェーデンのことは、もう知ってるよね?」
と言って
「で、早速なんだけど。、『戻って』くれないか?」
一瞬、何が本題か分からなかった。
『戻る』?
何が?
何に?
何処へ?
今俺は、見事に『ポカン』とした表情を四人の前でしているだろう。
そりゃぁそうだ。
いきなり目の前の人がそれぞれ『アメリカ・イギリス・日本』って言われた時点でちょっと考えが飛んでしまっている。
それに追い討ちをかけるように急に『戻れ』などと言われて混乱しない訳がない。
それを察したのか、黒髪の青年・・・日本さんがフォローしてくれた。
さん。
 その・・・アメリカさんが言いたいのは、この国を出て、あなたの元職に戻ってくれませんか?
 という意味だと思います。」
と。
元職?
元・・・職って。
ま・・・さ・・・か・・・
「あの・・・その・・・まさか俺に・・・その・・・」
どもる俺のフォローをしてくれたのが、イギリスと紹介された男だった。
「アメリカ、相変わらずお前には説明能力がないな。
 実はな舟水。お前にRIATに参加して欲しいと思ってここまで来たんだ。」
と、彼は言った。
「リア・・・タ?」
「知らないか?わが国で行われる航空ショーのことだ。
 アメリカから、『とびっきり操縦の上手いパイロットがいる』という話を散々聞かされたからな。
 それで興味が湧いたんだ」
「でも、その彼が住んでいるところは日本の管轄だから、日本にも話を回して・・・
 そしたら、その家にスウェーデンが居るって大使館から聞いたから。それで、朝電話したって訳」
なるほど。
というより・・・
もしかして・・・彼等もスーさんと同じなのか?
まぁ、この状況に慣れないけど、どうやら有無を言わず慣れるしかなさそうだ。
それにしても、いきなり『RIATに参加しろ』なんていわれても、この国の『国籍』じゃ、はっきり言って難しいと思う。
いくら俺が変えられるとしても・・・だ。
「少し、考えさせて下さい。
 急にそんなことを言われても、こちらにも準備がありますし。それに、俺が今住んでいるのはこの日本です。
 いくら・・・その多重国籍を持っているとはいえ、そうコロコロ変えることは・・・」
「あー。そんなに堅苦しく考えなくていいよ。行って乗るだけだから。
 大丈夫。君には俺達がついてる。それに、君の国籍は、イギリスのMI6がなんとかするからさ」
気軽にアメリカさんがそう言うと、イギリスさんが
「アメリカ!元はといえば貴様が自慢するからだろう?大体お前は最近俺達を振り回しすぎだ!」
と、いきなり怒り出したイギリスさん。
その様子を黙って見ていたスーさんが、やっと口を開いた。
「おい、お前等。いきなり押しかけで、暴れるなら外でやれ」
と言うと、三人をムンズとつかんで、ポイッと外へ放り投げた。
「全ぐ。の迷惑も考えろっての」
と言って、手をパンパンっとはたいていた。
その様子をポカンとした表情で見ていたに、
「すまねぇな
 アメリカとイギリスはいつもあぁなんだ。
 ま、詳しく話を聞かずに家に入れた俺も悪いがな・・・」
とすまなさそうにスーさんが言うから、話を少し逸らしてみた。
「状況は・・・わかりませんが。どうやら俺にRIAT・・・イギリスに来て欲しそうでしたね」
「みたいだな」
「でも、俺の今の国籍じゃ・・・ちょっと難しい・・・かも・・・」
少し悩んで下を向くと、スーさんがいつの間にか近くにきてて上から覗き込むようにして
「行ぐんか?」
と聞いてきた。
「え?」
「だから。RIAT・・・行ぐんか?」
そうか。
RIATに参加する国は、イギリスだけじゃない。
スウェーデンも、参加するんだっけ・・・
今のスウェーデンの主力は・・・グリペン。
デルタ翼・・・か。
「ちょっと、考えさせてください。行くならそれなりに準備も必要ですし・・・」
 
 
 
 
 
 
「ずるいなースウェーデン。のこと、独り占めじゃないか」
と、ドアのところでブー垂れてるのは眼鏡をかけたランニングシャツと短パン姿の金髪の男。
「元はと言えば、貴様が悪いだろう」
そう反論するのは、スーツをきた金髪の男。
「まぁまぁ。アメリカさんも、イギリスさんも。
 それにしても、なんだか色々ややこしいこと、すっ飛ばしてる気がするんですけど・・・」
「いいじゃないか。
 それより今は、をどうやって参加させようかワクワクしてるんだから」
と、話していたとか。
アトガキ
スウェーデン・・・オチ?
続きそう・・・RIATネタ
2023/07/21 CSS書式修正
2007/07/28 初稿
管理人 芥屋 芥