結局、スーさんは俺の家に泊まりました。
いくらなんでも、今すぐスウェーデンに帰ってくださいとは言うわけにはいかず。
大体、なんだって『国』がここに居るのか・・・
そのことについて母に聞くと
「いいからいいから。ストックホルムの平和は、私たちに任せて。
 、スーさんと仲良くねー」
と話をはぐらかされてしまった。
そして母は電話の終わりに、とんでもないことを言って切ってしまった。
Hell's Can
今日は、学校で思いっきり不審がられてしまった。
どうしてこうまでして敏感に変化が分かるのか。
全く。
隠す側としても、本当に勘弁してくれと思うくらい、今日は思いっきり不審がられてしまった。
まず実験の時、各実験台を見て周ってた時に、大石が
「先生、なんか変ですよ?」
って言ってきたのを皮切りに、一組の授業の時に手塚が、臨時で入った六組の授業では不二が、菊丸が、同じようなことを聞いてきた。
あのね・・・
まぁ昨日はほとんど眠れなかったのは事実だよ?
なんせ・・・まぁ・・・スーさんが原因なんだけど、あの人絶対天然だろうなぁ・・・
って、は頭を抱えて、少しため息を吐いた。
「なーにため息なんか吐いてるんだい」
と正面、書類の上から珈琲を渡してきたのは竜崎先生だった。
まさか『一国』と暮らしてるとは言うわけにはいかないので、
「いえ、なんでもないです」
と答えても、
「なんでも無いようには見えないけどね」
とニヤニヤしながら言ってるに違いないだろうなーって思う声音で聞いてきた。
「まぁ・・・色々あるんですよ。色々と」
と言って逃げたけど、果たしてどこまで通じるか。
 
 
 
スーさんが現れてから、青学理科教師の舟水と、スウェーデンという一国・・・どうみても彼が『国』だとは信じられないが・・・との奇妙な共同生活が始まった。
そして、いくら彼が『国』とは言え、時間が経てば腹は減るらしく、
「今日は、俺が作(づく)る」
と言って、台所に立ってくれた。
久しぶりのスウェーデン料理だった。
のは・・・いいんだけど・・・
 
 
 
 
・・・スーさん・・・
・・・・・・その手に
・・・・・・・・・持ってる物って・・・

 

 さ
  か
『ソレ』がなんなのか見当をつける。
そうであってくれるな。
あの缶詰であってくれるな。
そうは願うが、現実は非情だった。
 
「ん?コレが?
 これは、シュールストレミングっでいう、缶詰だ。
 懐がじいだろう?」
そう聞いたとき、は心の中で絶叫した。
 

 
 
いーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 
 
 
 
固まるにスウェーデンが追い討ちを掛ける。
「そうが。
 固まるほど、嬉しいが」
そう言って、恐らく彼的にはウキウキとした表情(にとっては正に凶悪犯にニッコリと笑いかけられたような、そんな心境)で、缶切りにスウェーデンが手を伸ばした。
その時、がやっと我に返った。
 
 
その缶詰が例え一ミリでも口を開けば、向こう一ヶ月はこの家に入れない!!!
 
 
ヘタしたら、一生入れないかもしれない・・・
そんな悪い予感をできるだけ避けるため、はスウェーデンが持つ缶きりに手を伸ばして取り上げようとした。
ガゴン
缶詰が流しの中に落ちる音がする。
いきなり手を伸ばしてきたに、驚いたスウェーデンがギョッとする。
「なっ・・・!?」
といったきり、動きを止めてが取り上げた缶切りを少し寂しそうに見ていた。
そのは、さっきまでスウェーデンが持っていた缶切りを奪い、肩で息をしていた。
そして、
「その缶一つで、向こう一ヶ月、この部屋に入れなくなるのはいやです」
と言った。
「あ・・・」
もの凄く悲しそうな表情のスウェーデンに対し、の表情は、ある意味必死の表情をしていた。
「そ・・・そうが・・・それは・・・すまんがったな」
と、余りにも悲壮感漂わせて言う物だから、妥協点をは提案した。
「臭いが、部屋に入らなければそれで構いませんので、せめて二階屋上のベランダで、風通しのいいところで、開けましょう」
と。
 
 
 
服は、着替えた。
もう、捨ててもいいような長袖T-シャツに、下はジャージに、お互い着替えた。
丁度今度、今着ている服を捨てようかと思ってたけど、置いといて良かったと、心底は思った。
手には、ゴム手袋。
顔には、マスクとゴーグル。
そんな、完全防備姿の二人が夏本番を迎える蒸し暑い屋上で何をしているかというと・・・
 
 
 
 
「あげるぞ」
と、くぐもった声をマスク越しなため、更にくぐもらせた声で言うのは金髪をもっと薄くしたような髪の、薄緑の瞳の、眼鏡をかけた男。
「はい」
と、こちらは黒い髪に、黒い瞳の男が答えた。
金髪の男が、その缶詰に、缶切りを押し当て、グッと力を込めた。
途端、やはり臭う・・・その発酵の臭い。
「「う"ッ・・・」」
 
思わず二人共鼻をつまむ。
でも、スウェーデンは一気に缶を開けていった。
その缶の口が開く毎に強烈な臭いが辺りに漂う。
「さで・・・コレ。
 料理するが・・・」
とは言いつつ、できるだけ顔に近づけないようにして持っていく辺り、やはり臭いのだろう。
 
 
その後しばらく、二人の体からその『地獄の缶詰』といわれるシュールストレミングの臭いが取れなかったらしい。
「舟水・・・先生・・・なんか・・・臭い・・・です」
と、しばらく言われ続けたとか、なんとか。
 
二度と、あの缶は開けない!
と心に誓ったが、母が送ってきた大量の缶詰が入ったダンボールが家の中にある以上、泣く泣く消費していくしかない、二人であった。
 
 
だって、この缶詰の恐怖を知らない人に、オイソレとお裾分けなんて絶対無理だから・・・泣きたいよ。
トホホ
アトガキ
スウェーデン・・・缶ネタ。ギャグ。
個人的にすごく書きたかったネタです。
2023/07/21 CSS書式修正
2007/07/19 初稿
管理人 芥屋 芥