『Dolphin Street』
そこは、日々JAZZを愛する人たちが集うひっそりとした場所にたたずむ喫茶店。
日ごろの疲れを好い音楽を聴きながら過ごす、そんな空間。

 カウンターの席に座り、いつものようにコーヒーを頼む。
 久しぶりに来たこの店は、相変わらずの落ち着きぶりで、恐らくそれはいつきても変わらない落ち着きさ加減。
 だから、つい振り返る。
 初めてここに来た時のことを。
Dolphin Steet
   fifth annivers log-part3
 初めて足を向けたのはいつだったかは、少し覚えていない。
 けれど、店の雰囲気がとてもよくて、『また来たい』と思ってしまった。
 その時既にこの店にはさんがいて、ギターを演奏してたんだけど、それがとても上手くてね。
 あの時は、自然と足でリズムを取ってしまっていたんです。
 自然と演奏したいなぁと思わせてくれるギターの音だったものだから、最初は声をかけるのが少し恥ずかしくて。
 だってあんなに上手に弾ける人と一緒になんて。
 学生時代に、少しだけやったことありますけど、やっぱり自分には向いてないなぁとか。
 それにスネアも自前のものは持ってきてないし、ステッィクもない。
 しかも航海から帰ってきた直後で練習不足だったし。
 でも、少しだけ勇気をもって声、掛けてみました。
 そしたら快諾してくれて、とても嬉かったのを覚えていますよ。


 え?
 俺がこの打ち込み屋に来たきっかけ?
 きっかけ……
 聞いた話だと、打ち込み屋の人がアニメになったジパングを見て、はまったのがキッカケらしい、ということは聞きました。
 本当かどうかは知りませんが、でもその後はそれまでやっていたオンラインゲームを止めて、この打ち込み場に戻ってきたわけだから……それがキッカケって言えばそうなんじゃないかって、俺は思ってるけど。
 どうなんだろう。
 その辺りの真相は、直接打ち込み屋に聞かないと……

 航海?
 楽しいですよ。
 たまに魚釣りとかの任務が艦長から許可が下りて、ね。やらせてくれるんです。
 でも、一歩離れたところから見てると結構シュールですよ?
 だって日本を守るはずの護衛艦から、釣竿が何本も伸びてるんですから。
 上手い奴は時間内に何匹も釣るし、たまに大物が掛ってその日の食材になることも……あったり、なかったりしますけれど。

 さんとはいい飲み友達……とは言え俺は飲めないんですが、それでも、あの人の飲める量にはいつも圧倒されてしまいます。
 この前、上官である角松二佐が「あの人には三人がかりでも太刀打ちできない」って、ぼやいていましたし。
 あの三人もそこそこ飲める人なんですけれど、それ以上の人を俺は初めて見ました。
 あの三人が潰れた後も平然と飲んでるんですからね。
 驚きです。


 君は穏やかな子ですね。
 でも、そんな彼でも時折見せる物腰とか雰囲気とかで、とても永い時間の差というものを感じたりする時もあるんです。
 なんていうか少し、彼は『違う』なって。そう思えるというか。
 言葉にはできないんですが。
 俺が、彼らの世界に行くAbout Death Wayでの印象、そのまま。
 見た目は少年だけど、中身は恐らく、誰よりも大人なんじゃないかなぁって、そう思ってます。


 君とは、俺はあまり縁がなくて。俺よりもさんの方が接点あるんじゃないかなぁって。
 だって、後ろの人の視線が……痛くて、俺はちょっと……


 君……
 彼は、マニアだよね。
 だって、俺と彼の会話の記録とか小型のボイスレコーダーに全部録音してるし……
 いやー抜け目がないよ、彼は。
 徹底してるよ。
 そのお陰で、最近の演奏の録音は彼の機材による録音じゃないかな?
 ほら、そこは『持ちつ持たれつ』で。
 彼の持ってる知識とか、その手の話の発展運用とか聞いてると、本当すごいなぁっていつも思うし。


 俺は……どうだろうな。
 なんてね。
 って、そろそろ時間だから。
 じゃ。
アトガキ
上手く逃げた!
2012/03/10 加筆書式修正
2007/12/16
管理人 芥屋 芥