「で?」
「『で?』とはなんだ。『で?』とは。?」
不満そうに旦那が問い返す。
「だから。人質、どうするの? って聞いてるんですけど?」
つまり、生きたまま取り返すのか、それともソレが死体でも構わないのか。
をさっきから男に問うているのだが、もしかしてこの男、聞いていなかったのか? この状況下で?
「お前は陽動だ。だからお前がそんなことを知る必要はない。違うか?」
そう一刀に両断されれば反論できない。
確かに、自分には囚われの人間を見る機会は恐らくこない。
だから知る必要はない。
ま、当たり前といえば当たり前か。
それにしてもこの旦那直々に動くって、本当に珍しいのではないか?
そう思ったが、自分はただ、いつもの通りに暴れればいい。
「へいへい」
と返事をすると、旦那が嫌そうな顔をした。
「何。その顔」
その顔に対して、更に不満を口にすると
「いや。何でも無い」
「こっちこっち!」
そう叫びながら簡単な爆弾を爆破させる。
そう。
自分はこの街にとっては、必要でも不必要でもない存在。
だけど、選択を一歩間違えれば直ぐに消される存在でもある。
この街で生き抜くには、そう言った特殊な嗅覚も必要で、でも多分俺はそれが偶然なんだろうと思ってる。
この街で生き抜いてこられたのは、本当に些細な偶然の積み重ね。
今回の件だって、たまたま声を掛けられて今こうして安い金で使われている。
無償じゃないだけマシだけど、それでも、この街の上に立つ姉御や旦那からすれば、本当に軽い存在でしかない。
でも、軽いなら軽いなりに、一応ここまで生きてきたから……
と思いながら、は次の爆弾に火をつけ、相手に投げつけたその時、どこかで誰かが焦ったような声で叫ぶのが聞こえた。
『!!』
「生きてるか?」
気がつけば、見慣れない天井が見える。
そして、余り聞きたくない声まで聞こえる。
「あ……あ"ぁ……ここは、地獄か?」
「ふん。心配するな。きっちりこの世だ」
と、とても残念そうに旦那が言う。
ところで……
「ここは、どこですか? というか、全身、なんだか痛いんですけど。俺、もしかして暴れすぎた?」
事前に用意していた爆弾は、ちゃんと計算して作ったはず。
だけど……アレ?
最後に使ったのって……あ!
「あ……俺、あそこにあった爆弾使ったんだっけ……」
「全く。考えも無しに手当たり次第使うからこうなるんだ」
そう言うと、動けないの髪の毛を静かに掴み、
「だが、お前の情報は確かなことが多いからな。これからも頼むよ。情報屋」
と言った。