「大丈夫?」
男が誰かに状態を聞き、手を伸ばしている。
「あ……はい」
その問いかけに答えた声は女性の声だ。
それも、少し幼い少女のような、それでいてしっかりとした女の声。
しかしその声に聞き覚えがあった。それに彼女の服は、どこかの高校の制服……
そこまで見えて、男は勢いよくそこへと飛び出して、その誰かの突然の登場に驚いた女の声がそこに短く響き渡る。
「っきゃ……!」
しかしその一瞬後、その声はどこか安心したような声と同時に誰かの声が重なって響いた。
「銀さ……ん?」
「銀?!」
「お、お嬢……と……テメェは……」
「血相変えて飛び込んでくるんだもん。こっちがびっくりしたよ」
と、男は困った様子をその声ににじませて言い、次の瞬間には体をスッと前に倒して足の上に手を置いて
「どうよ。調子は」
と、掛けているサングラスの下から男を睨んでいる銀と呼ばれた男に聞いた。
的屋の前に設けられた小さく簡単な畳椅子に二人が座り、その目の前にある金魚すくいの店で男が『お嬢』とさきほど呼んだ女の子が笑顔で金魚をすくっている。
それを見るともなしに眺めながら発する男の声は低く、奥の社で鳴っている音楽や祭に来ていた人間たちの声で、あまり響かない。
しかし、それを隣の男は聞き取り
「調子か。いつもと変わらんさ。高市があって、お嬢がいたら、それだけで俺は……」
途切れた言葉の続きを、男は望まなかった。
「そうか。まぁ、何ていうか……ここも前に比べて物騒になってきたからな。じゃな。銀」
言うだけ言って椅子から立ち上がり、背を向けた男に対して
「行くのか?」
と銀が珍しく引き止める。
「縁があれば、また会うこともあらぁな。じゃぁな、銀」
物騒だと言った奴の言葉は当たっていて、あのあと一抗争あったから。
それにしても、あの時何故あの男を引きとめたのかは、自分でも分からなかった。
際に浮かんだ光景は、実に呆気ないものだ。
そしてあの男には今後二度と会えないということも。
こんな結果になっちまったが、それでも何故か後悔してねぇ自分が居やがる。
お嬢を守ると誓ったあの夜から、自分は『生きる』ことに……
「しくじった……」
ドサ
req -007...
高市とお嬢と夜の空