StreetBar...I

「やぁケリー」
「いらっしゃいませ芥屋さん。こんばんハ。いつもの?」
「えぇ。いつもの」
 店に入って、いつものカウンターに座るのは常連客の遊木さん。
 とは言っても、ワタシはこの人の本当の名前を知らないのですが、まぁ、そんなことを聞き出すのは野暮というものでして。
「最近、めっきりここの演奏とも会えなくなりましたけど、楽器が置いてあるということは、まだ?」
「えぇ。チョクチョクお客さんが来られては何曲か演奏して帰りますよ。管理人さんが中々来られないから……」
「ハハハ。ところでケリー」
「なんです?」
「月日が経つのって、早いものですねー」
 と、なんだかシミジミといった感じで言う。
「ですか?」
「いやね、この季節になると、ついそんな気がしてしまうんです」
「確かに。12月になると、あぁ……一年が終わるなぁと思いますネ」
「でしょう? ところで、今年はクリスマス。やるんですか?」
 演奏。
 とは言わずに、ぼかして言う。
「う〜ん。ドラムの人が日本に帰ってくれば、という状態らしいです。なんでもトテモ忙しい人らしくて、一度海外に出てしまえば三ヶ月は帰ってこないらしいんです」
「あらら。じゃドラム抜き?」
「ドウナンデショウ」
「未定……ですか」
「えぇ。まぁ、突発でギターのサン辺りなら、来てくれそうな予感はしますけど。あの人も忙しいみたいですから」




「それじゃ、また」
 そう言って、かの人は店を出ました。
 ま、たまにしか来店されない方……ですからね。
 それもまた、ヨシ……ということで。




 さて、店をクローズにして、そろそろクリスマスの準備でもしましょう。
アトガキ
Street Bar...I
2012/03/03 書式修正
2006/xx/xx
管理人 芥屋 芥