カシャ、カシャ、カシャと写真を撮られているのは、契約者によって殺された被害者だ。
 この東京では、いや、この世界では、契約者による殺人はさほど珍しいことではない。

 あの門、『地獄門、ヘルズ・ゲート』が現れてから『契約者』による殺人が後を絶たない。
 そして、今夜も。
六の星瞬く時……
「天文台の話では、CL Triple6の活動が確認されたようです」
 との報告を受けたら、どんな鈍感な刑事だとしても背筋が伸びるというものだ。
 冷酷非道。残虐性。あのBK201と同じか、それ以上の契約者。
 だが、この『CL Triple6』という星は、BK201同様、一切が謎に包まれている。
 何せ活動を示す星の観測回数が、年に数回、あるかないか。
 だが、それ以上に、このCL Triple6という星は観測しづらい星でもあるということでも有名だ。
 例え活動をしていたとしても、星見の観測に引っ掛からないということも、このCL Triple6ではあり得る話だと天文台からは聞かされている。

 そして私は今、その『CL Triple6』という星もBK201と同様に追っている。

 先程から鳴っていた携帯を取り出し出る。
「はい。霧原です」
――CL Triple6の活動が確認された。至急向かってくれ。場所は……




「いやだなぁ。私だって、好きで研究してるわけじゃないんだから」
 そう言って、一人静かに酒を飲むスーツ姿の女がカウンターの席で言う。
 ちょっと洒落た居酒屋に入って、ターゲットの確認をする。
――この女か……
 正に一瞬だった。
 その男の目が一瞬赤く光ったかと思えば、女がまるで眠るようにカウンターに突っ伏して死んでいた。

「遅かったか」
 現場に着いた時には、既に居酒屋はパニックになっていた。
 店主は犯人は自分ではないと言い、客はただ座り込んで救急車の到着を待っている。
 しかし、契約者に接触した人間は、記憶の消去が義務付けられる。
 よって今回も、MEによる消去が成されるだろう。

 全く。
 今回は多方面からの視線が沢山集まっていたようで。
 ま、それでもやり易かったと言えば、遣り易かったんだけどね。
 でも、この国にヘイが居るとはねぇ。
 帰ってきて正解だなぁ。
 面白くなりそうだよ、ヘイ……いや、リ・シェンシュン?


 闇に紛れ、その一部始終を見ていた人影が数人、動き出す。
「いいのか? ヘイ」
 猫の姿をしているマオが聞く。
 だが、それに答えたのはホァンだった。
「何。構わんだろう。何せ奴もまた、組織絡みで動いているんだからな」
 と吐き捨てるように言った。
「インは?」
 と、銀の髪の少女に聞きなおしたマオだったが、直ぐに彼女に意見を求めても良い返事が返ってくることはないことに思い至り
「聞くだけ無駄か」
 と言い直した。

 は、笑っていた。
 あいつは気付いている。
 俺がここに居ることを。
 だが、まだ姿を表さない。
 姿を表したときは、果たして敵か味方か。
 それさえ、分からない。
 だが、今はいい。
 今はただ、道が交差しないだけだ。
アトガキ
Darker than BLACK 始動
2012/03/22 加筆書式修正
2007/06/05
管理人 芥屋 芥